投資をクレームにしない秘訣
「投資」という言葉は、便利すぎて危険です。 支出も、賭けも、ただの浪費も、この一言でそれらしく見えてしまいます。
まず、この問題を考えてみてください
あなたなら、100万円をどちらに投じますか。
① 90%の確率で10万円のリターン、10%の確率で全額ロス
② 50%の確率で100万円のリターン、50%の確率で全額ロス
多くの人は①を選びます。 儲けは小さくても、確実そうに見えるからです。
私は、どちらも選びません。 お金がないから、というのもありますが、本当の理由は別にあります。
期待値を計算すると、答えが変わる
期待値とは、「起こりうる結果の金額 × その確率」をすべて足したものです。
① 110万円 × 0.9 + 0円 × 0.1 = 99万円
② 200万円 × 0.5 + 0円 × 0.5 = 100万円
投じるのは100万円です。
- ① 期待値99万円 → 平均すると1万円の損
- ② 期待値100万円 → 平均すると差し引きゼロ
どちらも、増えません。 つまりこれは投資ではないのです。
「確実そうだから①」と感じた直感は、確率が高いことと、得することを混同していました。人はここを、驚くほど間違えます。
投資・支出・遊びを、混ぜない
3つに分けてください。
| 区分 | 定義 | 判断基準 |
|---|---|---|
| 投資 | 期待値が投じた額を上回る | 数字で説明できる |
| 支出 | 事業に必要だが増えはしない | 必要か不要かで判断 |
| 遊び | 楽しむために使う | 楽しめたなら成功 |
問題は、遊びを投資だと思い込むことです。
正直に言うと、私は期待値から考えれば絶対に買うべきでないジャンボ宝くじを買います。 10枚ですけど。でもそれは「遊び」だと自分で分かっているからいいのです。
線が引けているかどうか。 そこが分かれ目です。
なぜ、これが「クレーム」の話なのか
投資という言葉は、失敗の説明を先送りにします。
「これは投資だから」と言って始めた広告や設備。回収できなかったとき、社内から不満が噴き出します。 「あれは何だったのか」と。
お客様に対しても同じです。投資だと説明して売ったものが期待を下回れば、それはクレームになります。
予防策は1つ。最初に「何をもって投資と呼ぶのか」を数字で決めておくこと。
広告費で、実際にやってみる
一番よく迷うのが広告費です。
広告費 30万円
見込み反応 100件 × 成約率 5% = 5件
1件あたりの粗利 8万円 → 8万円 × 5件 = 40万円
期待値 40万円 > 投じる 30万円 → 投資と呼べる
この計算が書けないなら、それは投資ではなく支出です。 支出なら支出で構いません。ただし「投資」と呼ばないこと。 呼んだ瞬間に、後で説明責任が発生します。
広告費のように「投資か支出か」で迷うお金については、広告を出す前に見るべき“社内の数字”3つにそろばんのはじき方を書いています。
今日やること
いま検討中の支出を1つ選んで、紙にこう書いてください。
投じる金額: 円
期待できるリターン: 円 × 確率 % = 期待値 円
期待値 > 投じる金額 か? → YES:投資 / NO:支出 or 遊び
空欄が埋まらないなら、まだ判断する材料が足りていません。 埋まらないまま「投資だから」と進めるのが、一番危険です。
あわせて読みたい: 社長に相談相手がいない。それでも“ひとりで”ちゃんと決めるための整理術 / 広告を出す前に見るべき“社内の数字”3つ
大切なのは、“欺瞞”と“遊び”の間に、自分なりの境界を持つことかもしれませんね。
よくある質問
投資かどうかは、何で判断すればいいですか?
期待値が投資額を上回るかどうかです。「リターン×確率」を足し合わせた金額が、投じる金額より小さいなら、それは投資ではありません。たとえば100万円に対して期待値が99万円なら、平均的には1万円損する取引です。感覚ではなく、必ず紙に書いて計算してください。
期待値の計算方法を教えてください。
「起こりうる結果の金額 × その確率」をすべて足すだけです。90%の確率で110万円になり10%の確率で0円になるなら、110万円×0.9+0円×0.1=99万円です。ここから投資額100万円を引くとマイナス1万円。つまり平均的には損をする、と判断できます。
期待値がマイナスなら、絶対にやってはいけないのですか?
いいえ。楽しむために使うお金は「遊び」であって投資ではありません。問題なのは、遊びを投資だと思い込むことです。宝くじを楽しみとして買うのは自由ですが、老後資金の運用手段だと考えるなら判断を誤っています。自分の中で線を引けているかどうかが分かれ目です。
なぜ「投資」がクレームにつながるのですか?
投資という言葉が、支出や遊びをごまかす道具になるからです。「これは投資だから」と言って始めた広告や設備が回収できなかったとき、社内では不満が噴き出します。お客様に対しても同じで、投資と説明して売ったものが期待を下回れば、それはクレームになります。最初に何を根拠に投資と呼ぶのかを決めておくことが予防になります。
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