飲食店の売上が上がらない本当の理由。客数を追う前に見る3つの数字
結論から、いきます。 飲食店の売上が上がらないとき、犯人は「客数」ではないことが本当に多いです。まず**「席数 × 回転率 × 客単価」の3つに分解する**。ここを見ずに集客だけ頑張るのは、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものなんです。
なぜ「売上を上げよう」と思うと、集客の話になってしまうのか?
「売上が伸びない」と相談されたとき、返ってくる打ち手はだいたい決まっています。
- チラシをまこう
- インスタを始めよう
- クーポンを出そう
- ランチを安くしよう
ぜんぶ「もっとお客さんを呼ぶ」の話ですよね。なぜこうなるかというと、「売上」という1本の数字のまま考えているからです。1本の棒をどう太くするか、と考えると、人間の頭は「数を増やす」しか思いつきません。
でも、売上って本当は1本の棒じゃないんです。
飲食店の売上は、この3つのかけ算でできている
飲食店の1日の売上は、こう分解できます。
売上 = 席数 × 回転率 × 客単価
たとえば席数20席の店で考えてみましょう(あくまで考え方を見るための仮の数字です)。
| 項目 | 今の状態 | 「1割」改善したら |
|---|---|---|
| 席数 | 20席 | 20席(変えられない) |
| 回転率 | 1.5回転 | 1.65回転 |
| 客単価 | 2,000円 | 2,200円 |
| 1日の売上 | 60,000円 | 72,600円 |
回転率と客単価をそれぞれ「たった1割」動かしただけで、売上は2割以上動きます。かけ算だからです。
そしてここが大事なところ。席数は、明日には変えられません。 つまり、あなたが今日から手を出せるのは回転率と客単価の2つだけ。売上を上げる話は、実はこの2択の話に絞れるんです。
「もっとお客さんを呼ぼう」と考えていたとき、あなたは20席という上限を無視して、無限にお客さんが入る前提で考えていた——ということでもあります。満席の時間帯にチラシをまいても、売上は1円も増えません。
じゃあ、うちは「回転」と「単価」のどっちが弱い?
これ、勘で決めないでください。1週間だけ、紙とペンで足りるので測ってみてください。
- 時間帯ごとの客数(11〜12時、12〜13時…と1時間ごとに「正」の字でいい)
- 時間帯ごとの売上(レジの締め時間を分けるか、伝票を分けて数える)
- 満席だった時間(何時から何時まで、席が埋まっていたか)
これだけで、あなたの店の「1日の形」が見えます。読み方はシンプルです。
- 満席の時間がほとんどない → 問題は回転じゃない。そもそも人が来ていない時間帯がある
- 満席の時間が長いのに売上が伸びない → 問題は客単価。席は埋まっているのに、1人あたりが小さい
- 満席ではないが、待たせている・提供が遅い → 問題は回転率。オペレーションで取り返せる
面白いのは、3つ目のパターンが一番よくあるということ。席は空いているのに、料理が出るのが遅くてお客さんの滞在が長い。結果、ピークの1時間に取れるはずの客数を取りこぼしている。これは集客ではなく、厨房と動線の問題です。チラシをまいても永遠に解決しません。
(お客さんの数そのものが減ってきた、という場合は客数が減った飲食店が、広告より先にやるべき3つのことも合わせてどうぞ。)
ランチとディナー、同じ店だと思っていませんか?
ここが、飲食店で一番よく起きる勘違いです。
同じ看板、同じ厨房、同じスタッフ。だから同じ「うちの店」だと思ってしまう。でも数字の上では、ランチとディナーはまったく別の商売です。
| ランチ | ディナー | |
|---|---|---|
| 客単価 | 低い | 高い |
| 回転率 | 高い(急いで食べて帰る) | 低い(長く座る) |
| 原価率 | 高くなりがち(安く出すため) | 低めにできる(ドリンクが乗る) |
| 人件費 | 短時間に集中 | 長時間に薄く広がる |
構造がぜんぶ逆なんです。それを合算して「今月の原価率は◯%」と1つの数字で見ると、どちらが足を引っ張っているのか永久に分かりません。
よくあるのが、「ランチは忙しいけど、正直ほとんど残っていない」というパターン。それでも続けている理由が「夜のお客さんを増やすため」なら、立派な戦略です。でもランチのお客さんが夜に来ていないなら、それはただの持ち出し。ここは、確かめないといけません。
やることは簡単で、ランチとディナーの売上・原価・その時間帯の人件費を、別々に紙に書く。それだけです。合算をやめた瞬間に、見えなかったものが見えます。
原価率だけ見ていると、なぜ判断を間違えるのか?
飲食店の社長さんは、原価率をよく見ています。素晴らしいことです。でも、原価率だけを見ると逆方向に走ってしまうことがあります。
たとえば「原価率が高いから下げよう」と考えて、こうします。
- 既製品をやめて、手作りに切り替える
- 仕込みを増やして、歩留まりを良くする
- 安い食材を仕入れて、下処理を丁寧にする
原価率は、たしかに下がります。でも同時に、仕込みの時間が増えて人件費が上がる。トータルでは何も改善していない、どころか悪化していることすらあります。
飲食店では、原価(Food)と人件費(Labor)を足して見るのが基本です。頭文字をとってFLコストと呼ばれます。
原価率だけで判断しない。原価率+人件費率の合計で判断する。
「この一手は、原価率を下げるが人件費を上げないか?」——この問いを1つ挟むだけで、方向を間違えなくなります。逆に、既製品を使って原価率が上がっても、人が2時間浮くなら正解ということもある。数字は必ずセットで見てください。
(メニューごとの貢献度を見分ける方法はABC分析に、客単価を上げる具体的な型は値上げせずに客単価を上げる4つの型にまとめてあります。)
3つの数字が分かると、打ち手はここまで絞れる
分解すると、悩みが「集客」ではなくなります。
| 弱いところ | 打ち手の方向 | 具体例 |
|---|---|---|
| 席が空いている時間帯がある | その時間帯だけの理由づくり | 早い時間の限定メニュー、ひとり客が入りやすい席 |
| 回転率が低い | 提供と会計のスピード | 仕込みの前倒し、注文〜提供の動線見直し |
| 客単価が低い | もう1品・もう1杯の設計 | セットの組み方、おすすめの声かけのタイミング |
見てください。どれも広告費ゼロで着手できます。 そして、どれも「あなたの店の中」にある話です。
「もっとお客さんを呼ばなきゃ」と思っていたとき、あなたは店の外ばかり見ていました。でも売上の伸びしろは、たいていすでに来てくれているお客さんとの間に落ちています。
今日やること
今日から1週間だけ、1時間ごとの客数を紙に「正」の字で書いてください。
レジのデータを分析しなくていい。エクセルを覚えなくていい。カウンターの端にA4を1枚置いて、正の字を書くだけ。1週間後、その紙を眺めれば、あなたの店の「1日の形」が見えます。
そこに、空いている時間帯が必ずあります。そこが、あなたの店の伸びしろです。
数字を見るのは、自分を責めるためじゃありません。どこを直せばいいかを、ハッキリさせるためです。分かってしまえば、あとはやるだけ。応援しています!
よくある質問
飲食店の売上が上がらないとき、最初に見る数字はどれですか?
「席数×回転率×客単価」の3つに分けて見てください。売上という1本の数字のままだと、打ち手が「もっと集客」しか出てきません。3つに分ければ、席が空いているのか、回転が悪いのか、単価が低いのかが分かり、直すべき場所が1つに絞れます。
ランチとディナーは分けて考えるべきですか?
分けてください。同じ店でも、ランチとディナーでは客単価も原価率も人件費のかかり方もまったく違います。合算した平均で見ていると、儲かっている時間帯が儲かっていない時間帯の赤字を隠してしまい、「なぜか忙しいのに残らない」状態になります。
原価率さえ下げれば利益は増えますか?
増えるとは限りません。飲食店で原価と並んで重いのが人件費です。原価率を下げるために手間のかかる仕込みを増やせば、人件費が上がって利益はむしろ減ります。原価率と人件費率は必ずセットで見て、合計(FLコスト)で判断してください。
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