補助金の事業計画書、審査員は“どこ”を見ているか
結論から、いきます。 補助金の事業計画書で審査員が見ているのは、たった1つのことです。
この会社は、本当にやり切れるのか。
新しいかどうかでも、夢が大きいかどうかでもありません。書いてあることを、この会社が本当に実行して、本当に数字を出せるのか。 それを判断するために、審査員は決まった4カ所を見ています。
逆に言えば、その4カ所が埋まっていれば、文章の上手さは大した問題ではありません。今日はその4カ所と、落ちる計画書の共通パターンを丸ごとお渡しします。
見られている場所その1:現状の課題が、数字で語られているか
いちばん配点が重く、いちばん多くの会社が手を抜くのがここです。
審査員は最初に「この会社はいま、何に困っているのか」を読みます。そこが曖昧だと、あとに続く投資の話が全部宙に浮きます。
比べてみてください。
- ❌「生産性が低く、効率化が課題である」
- ⭕「主力製品Aの◯◯工程が手作業で、1個あたり◯分かかっている。月産◯個で月◯時間。不良率は◯%で、年間の手直し費用は約◯万円。この工程がボトルネックで、繁忙期は納期を◯日待たせている」
同じ「効率が悪い」でも、後者は社長が現場を見ている証拠になります。審査員が知りたいのは、まさにそれです。数字を出せる会社は、現状を把握している会社。現状を把握している会社は、投資を活かせる会社。そう読まれます。
数字が手元にないなら、まずそこから。売上や工程の数字の拾い方はエクセルで始める売上分析。社長がまず見るべき“3つの数字”にまとめてあります。特別なシステムは要りません。
見られている場所その2:課題と投資内容が、論理でつながっているか
次に見られるのが、**「その課題を解けるのは、本当にその設備なのか」**です。
よくあるのが、課題は工程Aの話なのに、買うものは工程Bの機械、というズレ。あるいは「最新型で高性能だから」という理由だけで、なぜそれが自社の課題を解くのか書かれていないパターン。
審査員の頭の中はシンプルです。
- 課題はこれ(工程Aに月◯時間)
- だから、この機能が必要(工程Aの自動化)
- だから、この設備を選んだ(この機能を持つのは◯◯だから)
- だから、課題が◯時間減る
この1→2→3→4が矢印でつながっていれば、それだけで説得力が出ます。つながっていない計画書は、「補助金が出るから買いたいものリスト」に見えます。
もう一つ効くのが、**「他の選択肢を検討した形跡」**です。人を増やす案、外注する案、安い機械にする案。それらと比べたうえでこれを選んだ、と書いてある計画書は、圧倒的に真剣に見えます。
見られている場所その3:誰がやるのか、体制が書いてあるか
ここが抜けている計画書、本当に多いです。
設備を入れる。新サービスを始める。——で、誰が動かすんですか?
審査員は、中小企業の実情をよく知っています。社長が忙しいことも、人手が足りないことも。だからこそ「体制」の欄が空欄同然だと、「この計画、絵に描いた餅だな」と判断されます。
書くべきはこれくらいシンプルなことです。
- 導入設備を操作するのは誰か(氏名・役職・経験年数)
- その人の教育・研修はどうするのか
- 販路開拓は誰が担当するのか
- 社長は何を担当し、何を任せるのか
- 足りない部分は誰の力を借りるのか(外部の専門家、機械メーカーの支援など)
人の名前が出てくる計画書は強い。 具体名が出るということは、社内で実際に話が進んでいるということですから。
社内の役割分担そのものに不安があるなら、賢く仕事をするやり方を学ぼうのように、社長が何を手放すかを先に決めておくと、この欄はすらすら書けるようになります。
見られている場所その4:効果が数字で書かれ、根拠があるか
最後は効果です。ここで多くの会社が「大きく書けば有利」と勘違いします。逆です。
審査員が見ているのは、効果の大きさではなく、効果の“計算が合っているか”です。
「売上30%アップ」と書いてあっても、根拠がなければただの願望です。むしろ「なぜ30%なのか」と問われて答えられない計画書は、全体の信頼性まで疑われます。
効果は、こう積み上げてください。
- 積算式を見せる:加工時間が1個◯分→◯分、月産◯個なので月◯時間削減、時間単価◯円なので年◯万円
- 前提を明示する:稼働率は現状の◯%を維持、単価は据え置きで計算
- 売上増なら、増える理由を書く:能力が増えても、売る先がなければ売上は増えません。既存顧客からの引き合い、断っていた注文の量など、受注の裏付けを書く
小さくても根拠のある数字のほうが、大きくて根拠のない数字より、はるかに評価されます。売上がどう積み上がるのかの分解のしかたは売上をアップする方法が分かった!の考え方(客数×単価×頻度)がそのまま使えます。
落ちる計画書に共通する、たった1つの型
これまでの話をひっくり返すと、落ちる計画書の姿がはっきり見えてきます。
バラ色の未来だけが書いてあって、現状分析が薄い。
「業界初」「革新的」「地域No.1を目指す」——形容詞が並び、グラフは右肩上がり。でも、いま何がどれだけ問題なのかが1つも数字で書かれていない。
こういう計画書は、審査員から見るとどこから読んでも検証できないんです。現状が分からなければ、投資の必然性も判断できない。効果の妥当性も判断できない。結果、「言っていることは立派だが、根拠がない」で終わります。
そしてもう一つ。公募要領の審査項目を読まずに書いている計画書も、まず通りません。審査項目は、言ってしまえば採点基準の公開です。そこに書いてある観点に、一つずつ答える形で書く。これだけで大きく変わります。審査項目も様式も年度・公募回ごとに変わりますので、必ずその年度の公募要領を確認してください。
書く前に、この4つの問いに口で答えてみる
パソコンを開く前に、紙とペンでやってほしいことがあります。この4つに、口に出して答えてみてください。
- いま、何にどれだけ困っている?(数字で言う)
- なぜ、その投資でそれが解ける?(矢印でつなぐ)
- 誰が、実際に動かす?(名前で言う)
- その結果、どの数字がいくつになる?(計算式で言う)
4つとも詰まらずに答えられたら、あとはそれを文章にするだけです。逆に詰まるところがあれば、それは文章力の問題ではなく、計画そのものの穴。書き始める前に埋めておくべき穴です。
そして、この4つに答えられる状態になった会社は、面白いことに、補助金が通っても通らなくても事業がうまくいきます。計画書を書くという作業は、本当は自社を見つめ直す作業だからです。
うまく書こうとしなくていい。正確に書いてください。あなたの会社が現場で積み上げてきた事実には、それだけの力があります。応援しています!
よくある質問
補助金の事業計画書で、審査員はどこを見ていますか?
大きく4カ所です。現状の課題が具体的な数字で語られているか、その課題と投資内容が論理的につながっているか、誰が実行するのかという体制が示されているか、効果が数字と根拠で書かれているか。総じて「この会社は本当にやり切れるか」を判断しています。
事業計画書でよくある失敗は何ですか?
バラ色の未来だけを書いて、現状分析が薄い計画書です。「売上◯%増」「業界初」といった言葉は並んでいるのに、いま何がどれだけ問題なのかが数字で書かれていない。現状が曖昧だと、投資の必然性も効果の根拠も成立せず、審査員には願望として読まれてしまいます。
文章がうまくないと採択されませんか?
文章の巧拙より、事実と論理のつながりが重要です。飾った表現より、工程名・時間・不良率・件数といった具体的な数字のほうがはるかに効きます。むしろ形容詞が多い計画書ほど中身が薄い傾向があります。うまく書こうとせず、正確に書いてください。
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