賢く仕事をするやり方を学ぼう

賢く仕事をするやり方を学ぼう

「油を売る」——仕事を怠けることを指す慣用句です。ときどき部下に言っている方もいるかもしれません。

でも、物理の視点で見ると、意味が真逆になります。

まず、語源から

由来を調べると、こうあります。

江戸時代、髪油売りが油を器に移しているあいだ、婦女を相手に長話をしていたことが、怠けているように見えた

ここに、すでに1つ目の誤解があります。

油は、そもそも時間がかかる

トライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑を扱う分野)の観点から言うと、油は水より「かたい」——つまり粘度が高く、水のようにサラサラとは流れません。

器に移し終えるまで時間がかかるのは、当然なのです。

その間、話すことぐらいしかやることがありません。怠けていたのではなく、待つしかなかった。 これが実情でしょう。

そして、もっと面白いことがある

ここからが本題です。

油は「容積」で売り買いされます。 1リットルいくら、という単位です。

一方で、油には温度によって体積が変わる性質があります。

気温が低い朝 → 油の温度も低い → 密度が高い → 同じ1リットルに多く入っている
気温が高い昼 → 油の温度も高い → 密度が低い → 同じ1リットルに少なく入っている

つまり、同じ1リットルを売るなら、昼に売った方が、中身が少なくて済む。

実質的に、朝より高く売れているわけです。

結論:朝は働かず、昼に売るのが正解

「油を売る」とは、効果的に仕事をすることだった。 そう解釈できます。ほめ言葉だったのかもしれません。

で、これが経営に何の関係があるのか

大いにあります。この話の本質はこうです。

扱っているものの性質を正確に知れば、同じ商売でも、利益の出し方が変わる。

油売りは、汗をかいて売る量を増やしたわけではありません。 売るタイミングを変えただけです。

これは、値上げでも経費削減でもない第三の道です。

あなたの商売にも、必ずある

「条件によって変わるもの」を洗い出してください。

変わる条件
仕入れ値季節・数量・支払いサイト
歩留まり気温・湿度・材料のロット
作業効率曜日・時間帯・段取りの順番
客単価時間帯・天候・並べる順番

この変動を把握しているかどうかで、判断の精度が変わります。

いつ買うか。いつ作るか。いくらで売るか。 感覚で決めているなら、一度数字で確かめる価値があります。

今日やること

自社の商品を1つ選んで、こう問いかけてください。

これの原価は、いつも同じか?   → 違うなら、何で変わるか
これの品質は、いつも同じか?   → 違うなら、何で変わるか
これを作る手間は、いつも同じか? → 違うなら、何で変わるか

「いつも同じ」と答えたものほど、疑ってください。 たいてい、測っていないだけです。

油売りは、油の性質を知っていました。 あなたも、自分の商品の性質を知っているはずです。それを数字にすると、利益に変わります。

あわせて読みたい: これが、機械を健康にする方法だ / 機械の保全コストを簡単に下げられる方法をご存じですか?

物ごとの見方を変えると、賢く仕事をする知恵が浮かびます。応援しています!

よくある質問

「油を売る」が、なぜ賢い仕事になるのですか?

油は容積で売買されますが、温度が上がると膨張して密度が下がります。同じ1リットルでも、気温の低い朝より高い昼の方が、含まれる質量は小さくなります。つまり昼に売る方が、少ない中身で同じ量を売れることになります。長話をして昼まで待つのは、物理的には合理的な行動でした。

これは経営にどう応用できますか?

扱っているものの性質を正確に知れば、同じ商売でも利益の出し方が変わる、ということです。原価が動く条件、品質が変わる条件、手間がかかる条件を把握していれば、価格設定も納期設定も精度が上がります。感覚で決めている条件を、いちど数字と物理で確かめてみてください。

小さな会社が、この考え方を実務で使うには?

自社の商品やサービスで「条件によって変わるもの」を洗い出してください。仕入れ値が季節で動く、気温で歩留まりが変わる、曜日で作業効率が違う、などです。その変動を把握するだけで、いつ買うか・いつ作るか・いくらで売るかの判断が変わります。

トライボロジーとは何ですか?

摩擦・摩耗・潤滑を扱う学問分野です。機械の中で部品同士がこすれ合う現象を研究し、故障の予測や寿命の延長に使われます。油の性質を扱うため、今回のような温度と密度の話もこの領域に含まれます。

小さな会社の売上アップ・利益改善のご相談を承っています。

お問い合せはこちら