補助金に頼らず設備投資する判断基準

補助金に頼らず設備投資する判断基準

結論から、いきます。 補助金を待っているあいだにも、あなたの会社は毎月お金を失っています。

「次の公募が秋だから、それまで待とう」——この判断、正しいときもありますが、危ないときもあります。今日は、待つべきか進むべきかを自分で決めるための、たった2つの物差しをお渡しします。

「待つ」は、ほんとうにタダですか?

まずここから。多くの社長が見落としているのは、待つことにも値段があるという事実です。

仮に、月20万円分の効果がある設備があるとします。作業が減る、不良が減る、断っていた注文が受けられる——形は何でもいい。

これを半年待つと、120万円。1年待つと240万円。もし補助金で仮に100万円が戻ってきたとしても、半年待った時点でトントン、1年待ったら明確に損です。

しかも、待つ期間は公募までの数か月だけでは終わりません。申請 → 審査 → 採択発表 → 交付決定 → やっと発注。制度によっては、思い立ってから使い始めるまでに一年近くかかることもあります。交付決定の前に発注すると対象外になるのが原則ですから、その間はじっと待つしかない。

さらに、金額に出ない損失もあります。

  • 忙しさが続いて、ベテランが辞める
  • 納期が遅れて、取引先の信頼が減る
  • 断り続けた注文が、二度と来なくなる

これらは決算書に「損失」として出てきません。 だから軽く見られる。でも会社を弱らせるのは、たいていこっち側です。

物差しその1:回収年数を、5分で出す

では、進むかどうかをどう決めるか。1つめの物差しは回収年数です。計算はシンプル。

回収年数 = 投資額 ÷ 年間の効果額

年間の効果額は、こう積みます。

  • 減る作業時間 × 時間単価(月◯時間減る × 時給換算 × 12か月)
  • 減る外注費・修理費・不良の手直し費
  • 増える受注(能力が増えて受けられるようになる分。ただし売り先の裏付けがある分だけ

3つめは要注意です。能力が増えても、売る先がなければ売上は増えません。「作れるようになる=売れる」ではない。ここを甘く見積もると、計算が全部ウソになります。

出てきた年数を、こう読みます。

回収年数読み方
2年以内かなり有利。補助金を待つ理由が薄い
3〜5年資金繰りと設備の寿命しだい。要検討
設備の寿命より長い補助金が付いても、たぶん厳しい

大事なのはここです。回収年数が短い投資ほど、補助金を待つ意味がない。 逆に回収が長い投資は、補助金があっても慎重に考えるべき。——多くの会社は、これを逆にやっています。

効果額を出すための社内数字の拾い方はエクセルで始める売上分析。社長がまず見るべき“3つの数字”にまとめてあります。

物差しその2:「やらなかったら、どうなる?」

回収年数だけで決めると、会社は必ず保守的になります。だから2つめの物差しが要ります。

その投資をしないと、1年後に何が起きるか。

紙にこう書いてみてください。

  • この設備を入れなかったら、あの工程は誰がやり続けるのか
  • その人が辞めたら、代わりはいるのか
  • 断っている注文は、来年も来てくれるのか
  • 競合が先に入れたら、うちの見積は勝てるのか

これに答えると、投資の意味が変わって見えることがあります。**「儲けるための投資」ではなく「守るための投資」**だった、と気づくケースです。

守るための投資は、回収年数の計算では過小評価されます。だって、失わなかった売上は帳簿に載らないから。だから2つの物差しを必ず並べて見てください。片方だけだと、判断を誤ります。

人手の問題が絡むなら人手不足は“採用”では解決しない。仕事量を減らす3つの順番も先に読んでおくと、投資以外の選択肢も含めて比べられます。

補助金は、判断のどこに置くのが正解?——待つべき場合もある

ここが今日いちばんの逆張りです。

補助金は、判断材料に入れないでください。

順番はこう。

  1. 2つの物差しで、やる/やらないを先に決める
  2. 「やる」と決まった案件について、たまたま合う制度があるか調べる
  3. あれば使う。なければ、そのまま進める

補助金を判断材料に入れた瞬間、「制度が出るならやる」という会社になります。そういう会社は、制度に生活のリズムを握られます。公募スケジュールに合わせて事業を動かす——それ、主導権を外に渡しているのと同じです。

しかも皮肉なことに、「なくてもやる」と決めている会社のほうが採択されやすい。 計画に必然性があるからです。この話は補助金は“もらえるお金”ではない補助金の事業計画書、審査員は“どこ”を見ているかで詳しく書きました。

ただし公平のために、待つべきケースも書いておきます。すべてを急げという話ではありません。

  • 金額が大きく、自己資金でも借入でも払いきれないとき。補助金が出ないと資金繰りが破綻するなら、待つ以外にない
  • 効果額が小さく、補助の有無で回収年数が大きく動くとき。制度が乗るかどうかで結論が変わるなら、待つ価値がある
  • 急いでやる理由が実際にないとき。壊れていない、困っていない、断っている注文もない——なら急がなくていい

つまり判断は、「待つコスト」と「補助で減る負担」の比較です。感覚ではなく、両方を数字にして並べる。5分あればできます。

なお、補助金は原則後払いですから、採択されても一度は全額自社で払う必要がある点も忘れずに。ここを見落とすと、「補助金があるから買える」という前提そのものが崩れます。

買う前に、もう一段だけ疑ってみる

投資判断の記事なので最後に一つだけ、あまのじゃくなことを言わせてください。

その設備、いま抱えている仕事が「必要な仕事」である前提で考えていませんか?

やめられる作業を高速化する投資は、無駄を高速で回すだけです。投資を決める前に一度、“やめる仕事”を決める棚卸しのやり方を通してみてください。買わずに済むことは、意外とあります。

そして買うと決めたなら、制度を使うにせよ使わないにせよ、書類の準備は早めに。採択後の実務は採択後がしんどい。実績報告でつまずかないための準備にまとめました。

今日やること:紙を2つに割る

紙を1枚用意して、真ん中に線を引いてください。

  • :この投資をやったら、1年後に何がどうなる(数字で)
  • :この投資をやらなかったら、1年後に何がどうなる(数字で)

両方書いて、見比べる。それだけです。

不思議なもので、この2列を書き出すと、たいていの社長は答えがもう出ていたことに気づきます。迷っていたのではなく、背中を押す材料を自分で並べていなかっただけなんです。

制度は毎年変わりますが、あなたの会社の時間は、公募のスケジュールを待ってくれません。 決めるのはあなたです。応援しています!

よくある質問

設備投資は補助金が取れてからにすべきですか?

投資の必要性と補助金は、切り離して判断するのが基本です。補助金を待つあいだにも、機会損失や現場の負担は毎月発生しています。まず「補助金がなくても回収できるか」を計算し、成立するなら進める。補助金は“あれば嬉しい上乗せ”として扱うほうが、判断がぶれません。

投資するかどうかは、何で判断すればいいですか?

2つです。ひとつは回収年数、つまり投資額をその投資が生む年間の効果額で割った年数。もうひとつは「その投資をしなかったら何が起きるか」というコストです。回収年数だけ見ると保守的になりがちなので、やらない場合に失うものも必ず並べて比べてください。

補助金を待つと、どんな損がありますか?

公募の時期を待つ期間、審査を待つ期間、交付決定を待つ期間、それぞれで効果が先送りになります。月20万円の効果がある投資なら、半年待つだけで120万円分の効果を捨てていることになります。さらに人が辞める、受注を断るといった目に見えにくい損失も積み上がります。

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