補助金の申請書は、誰が書いていいのか。2026年に変わったこと
結論から、いきます。 補助金の申請書をあなたの代わりに書ける人は、2026年1月から行政書士だけになりました。ただし、一緒に考えてもらうことは今までどおりできます。今日はその線引きを、丸ごとお渡しします。
何が変わったのか?
2025年6月に改正された行政書士法が、2026年1月1日から施行されました。中身を一言でいうと、こうです。
報酬を得て、業として、官公署に提出する書類を作成することは、行政書士でなければできない。
補助金の申請書類は、ここに含まれます。
押さえておきたいのは2点だけ。
- 名目は関係ありません。 「コンサルティング料」でも「会費」でも、実態が書類の作成なら報酬に当たります
- 罰則があります。 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。今回の改正で、本人だけでなく所属する法人・団体も罰せられる両罰規定が加わりました
ここで、ひとつ大事なことを言わせてください。これは「今まで違法じゃなかったものが違法になった」という話ではありません。 書類作成が行政書士の独占業務であること自体は、ずっと前から法律に書いてありました。今回の改正は、あいまいにされてきた抜け道を塞いだというのが実際のところです。
「事務局は民間だから対象外」は、まだ通りますか?
長らく、こういう説明がありました。
補助金の事務局は民間企業だから、官公署に提出する書類ではない。
これは通りません。
総務省が2022年2月16日に、事業再構築補助金等で提出する書類は「官公署に提出する書類」に当たると回答しています。民間企業が事務を受託していても、扱いは変わりません。
つまりこの説明は、改正より4年も前から成り立っていなかったわけです。それが広く使われていたということは、多くの人がそう信じていたということでもあります。信じていた側が悪いという話ではありません。 ただ、今はもう使えない、というだけです。
では、誰に何を頼めるのか?
ここがいちばん知りたいところだと思います。表にします。
| 頼みたいこと | 行政書士 | それ以外の専門家 |
|---|---|---|
| 申請書類そのものを作成する | ○ | ✕ |
| 事業計画の中身を一緒に考える | ○ | ○ |
| 数値計画・収支計画を組む | ○ | ○ |
| 書き方を指導する・見て意見を言う | ○ | ○ |
| 調査結果や試算を資料として渡す | ○ | ○ |
見ていただくと分かるとおり、✕は1行だけです。
禁じられているのは「書くこと」であって、「考えること」ではありません。ここを混同すると、「もう誰にも相談できない」という話になってしまいますが、そんなことはないんです。
境目は1つ。最終的に、誰が書類を書いたか。
事業者が自分で書き、専門家がそれに助言する。この形なら今までどおりです。逆に、丸ごと預けて完成品が返ってくる形は、相手が行政書士でなければ成り立ちません。
「うちは大丈夫でしょうか」と聞かれて、答えに詰まるのはなぜか?
ここで、自分にとって正直な話を書きます。
私は公的機関からの委託で、中小企業の経営診断や経営改善計画づくりの場に継続して立ち会ってきました。そこで最近、**「うちが頼んでいるところ、大丈夫でしょうか」**と聞かれることが増えました。
正直に言うと、その場では答えられないことが多いんです。契約書の書き方ひとつで、結論が変わるからです。同じ「支援」という言葉でも、中身が助言なのか代行なのかで、まったく別のものになる。外から見ただけでは分かりません。
そして聞いていて思うのは、社長が知らなかったのは当たり前だということです。制度が変わったことを、誰も教えてくれない。支援している側だって、把握していないことがあります。これは情報を取りに行かなかった側の落ち度じゃなくて、届いていないだけの話なんですよ。
だから、責めるより先に確認しましょう。確認の仕方は、これから書きます。
依頼する前に、何を聞けばいいですか?
3つだけです。相手が誰であれ、これを聞いてください。
① 申請書類は、誰が書きますか
② あなたは行政書士ですか
③ 報酬は、何に対して支払うものですか
いちばん大事なのは③です。
「一式でいくら」という見積もりは、中身が分かれていないという意味です。何にいくら払っているのかが分からない契約は、後で説明できません。逆に「計画づくりの助言に◯万円、書類作成は行政書士の◯◯先生に別途◯万円」と分かれているなら、それは整理されている証拠です。
答えづらそうにされたら、それが答えです。気まずくなることを恐れないでください。 ここを曖昧にしたまま進むほうが、あとで気まずくなります。
なお、その支援料そのものは補助金でまかなえません。小規模事業者持続化補助金の第20回公募では、補助対象経費は8項目(機械装置等費・広報費・ウェブサイト関連費・展示会等出展費・旅費・新商品開発費・借料・委託外注費)とされ、コンサルティング費用は原則として対象外です。ここは自己負担になる前提で見ておいてください。
自分で書くのは、そんなに大変ですか?
「じゃあ自分で書くしかないのか」と思われたかもしれません。ここが、今日いちばん伝えたいところです。
申請書を自分で書くことには、面倒くささを上回る効き目があります。
書類を作る過程で、こういうことを言葉にすることになります。
- うちの強みは、結局どこにあるのか
- この投資で、どの数字が、いくら動くのか
- そのあと、誰がどう回すのか
これ、補助金が取れても取れなくても必要な整理なんですよ。人に丸投げすると、この整理が自分の中に残りません。だから採択されたあとに動けなくなる。採択後がしんどい。実績報告でつまずかないための準備に書いたとおり、本番は通ってからです。
そして、その整理さえできていれば、補助金が取れなかったとしてもその投資判断は残ります。 判断の物差しは補助金に頼らず設備投資する判断基準にまとめました。支援機関との付き合い方は認定支援機関とは何者かもあわせてどうぞ。
今日やること:契約書を1枚、出してみる
今日は1つだけ。いま補助金の支援を頼んでいる契約書か見積書を、引き出しから出してください。
そして、この1行があるかを見てください。
「申請書類の作成」
この言葉が、あなたが払う報酬の対価として書かれているなら、相手が行政書士かどうかを確認してください。書かれていないなら、たいていは大丈夫です。
まだ誰にも頼んでいない段階なら、なおいい。先ほどの3つの質問を、紙にメモしておいてください。 次に相談する場で、そのまま聞けます。
制度が変わったことを知らなかったのは、あなたのせいじゃありません。知った今から、契約の形を整えれば済む話です。 難しいことは何もありません。応援しています!
※ 本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづく整理です。個別の契約が法に触れるかどうかの判断は、所属する都道府県の行政書士会または弁護士にご確認ください。
よくある質問
2026年1月から、補助金の申請支援は何が変わったのですか?
報酬を得て、業として、官公署に提出する書類を作成することが行政書士の独占業務であると明確化されました。補助金の申請書類はこれに含まれます。名目が「コンサルティング料」や「会費」であっても、実態が書類の作成であれば報酬に当たります。罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、今回の改正で法人や団体も罰せられる両罰規定が加わりました。
補助金の事務局は民間企業ですが、それでも対象になるのですか?
なります。総務省が2022年2月16日に、事業再構築補助金等で提出する書類は「官公署に提出する書類」に当たると回答しています。民間企業が事務を受託していても扱いは変わりません。この点は今回の改正より前から示されていた解釈で、改正はそれを条文の側で明確にしたものです。
行政書士でない専門家には、もう何も頼めないのですか?
そんなことはありません。禁じられているのは書類を作成することであって、助言ではありません。事業計画の中身を一緒に考える、数値計画を組む、書き方を指導する、書いたものに意見をもらう、調査結果や試算を資料として受け取る。これらは今までどおりです。境目は「最終的に誰が書類を書いたか」の1点にあります。
支援を頼んだ費用は、補助金でまかなえますか?
原則としてまかなえません。小規模事業者持続化補助金の第20回公募では、補助対象経費は機械装置等費・広報費・ウェブサイト関連費・展示会等出展費・旅費・新商品開発費・借料・委託外注費の8項目とされ、コンサルティング費用は原則として対象外です。支援料は自己負担になる前提で見積もってください。
小さな会社の売上アップ・利益改善のご相談を承っています。
お問い合せはこちら