人手不足は“採用”では解決しない。仕事量を減らす3つの順番
結論から、いきます。 人手不足は、採用では解決しません。求人にお金をかけても、人口が減っている以上、中小企業に順番が回ってくる可能性は年々下がっていきます。中小企業白書でも人手不足は継続的な課題として挙げられ続けていますが、そこで語られる打ち手の多くは「採り方」の話です。
でも、人が採れないなら、仕事の側を減らすしかないんですよね。当たり前の話なんですが、この当たり前に本気で取り組んでいる会社は驚くほど少ない。
そして、ここが一番大事なところなんですが——仕事を減らすには、順番があります。 順番を間違えると、頑張っただけ疲れて、何も残りません。今日はその順番の話をします。
「人手不足の対策=採用」という思い込みが、いちばん高くつく
求人広告を出す。人材紹介に頼む。時給を上げる。ここまでやって、それでも来ない。——多くの中小企業がこの道を通ります。
ちょっと計算してみてください。求人広告に月に数万円、人材紹介なら成功報酬で年収の何割か。しかも、これは「採れなかった場合はゼロ」ではなく、「採れなくてもかかるコスト」が含まれているんです。そのうえ採用できても、教育に何か月かかかり、辞められたらまた振り出しに戻ります。
一方で、「やめる仕事を1つ決める」のにかかる費用は、ゼロ円です。
人手不足とは「人が足りない」状態ではなく、「仕事量が人の量を超えている」状態である。
だとすれば、解決策は2つあります。人を増やすか、仕事を減らすか。片方は市場に左右されて自分ではコントロールできず、もう片方は今日から自分で決められる。どちらから手をつけるべきかは、明らかですよね。
順番①:やめる——そもそも要らない仕事を止める
最初にやるのは「やめる」です。減らすでも、任せるでもありません。丸ごと止める。
なぜこれが最初かというと、効果が最大でコストがゼロだからです。やめた仕事は、二度と時間を食いません。改善もメンテナンスもいらない。ツール代もかからない。**世の中でいちばんコスパのいい経営改善が「やめること」**なんです。
小さな会社にも、驚くほど「誰のためでもない仕事」が溜まっています。使われていない日報。誰も読まない会議資料の清書。すでに理由を誰も説明できない二重チェック。基幹システムに入れたあとに別のエクセルにも打ち直す、あの二重入力。
これらは悪意で生まれたものではありません。かつては必要だったものが、必要でなくなったあとも生き残っているだけです。仕事は自然には死なないんですよ。誰かが「止めます」と言わないと、永遠に続く。
そして、その「止めます」を言えるのは、社長だけです。現場の人は言えません。自分が担当している仕事を「これ、要らないですよね」と言うのは、自分の存在意義を削る発言に聞こえるからです。だから社長が「止めていい」と宣言しないと、絶対に止まりません。
具体的な棚卸しのやり方は、“やめる仕事”を決める棚卸しのやり方にまとめました。手順どおりにやれば、1週間で候補が出ます。
順番②:減らす——頻度と精度を落としていい仕事を見つける
全部やめるわけにはいかない仕事もあります。そこで2番目が「減らす」。
減らし方は2つあります。頻度と精度です。
頻度を落とす。 毎日やっている在庫チェックは、本当に毎日必要でしょうか。週2回でいい仕事が、惰性で毎日になっていませんか。毎週の定例会議は隔週でどうでしょう。月次で見ている数字を四半期にしても、判断は変わらないかもしれません。
精度を落とす。 ここは抵抗を感じる方が多いところですが、大事な話です。すべての仕事に100点は要りません。社内資料は60点でいい。お客さんに出すものだけ100点でいい。 見積書のレイアウトを整える30分と、お客さんに電話する30分、どちらが売上をつくるかを考えれば答えは出ます。
私は前職で20年ほど、大手企業の設備診断の技術コンサルをしていました。そこで徹底的に叩き込まれたのが、**「全部を測ろうとするな、壊れると困るものを測れ」**という考え方です。すべての設備を同じ手間で点検していたら、人手はいくらあっても足りません。止まると本当に困る設備に手間を集中させ、それ以外は間隔を空ける。この考え方は、経営の中の「仕事」にもそのまま使えます。(同じ発想を設備の側で書いたのがこれが、機械を健康にする方法だです)
順番③:任せる・自動化する——ここは最後でいい
そして最後が「任せる・自動化する」。外注、パート、そしてAIやシステムの出番です。
多くの会社が失敗するのは、ここから始めてしまうからです。「人手不足だからDXだ」「AIで効率化だ」と言って、ツールを入れる。気持ちはわかります。前向きだし、投資している感じがしますからね。
でも、順番を飛ばすとこうなります。
いらない仕事を自動化すると、いらない仕事が高速で回り続けるだけ。
しかも、ツール代という固定費と、使い方を覚える教育コストという新しい仕事が増えます。仕事を減らすつもりが、仕事が増える。これが「DXしたのに楽にならない」の正体です。
逆に、①と②を済ませてから③に来ると、景色が変わります。**残った仕事は「本当に必要で、頻度も精度も削りきったあとの仕事」**なので、自動化の対象がはっきりしている。投資額も小さくて済むし、効果も測りやすい。
どこから自動化するかで迷ったら、中小企業が生成AIで最初に自動化すべき“たった1つ”の業務を読んでみてください。選び方の基準を書いています。
「減らす」を続けられる会社と、続かない会社の差
一度片づけても、仕事はまた増えます。だから、続く仕組みが要ります。
続く会社に共通しているのは、「止めて困ったら戻せばいい」という軽さを持っていることです。仕事を止める判断を重くしすぎると、誰も何も止められなくなります。「1か月止めてみましょう。困ったら戻します」——これくらいの温度でいい。
そしてもう1つ。新しい仕事を始めるときに、必ず「代わりに何を止めるか」をセットで決めること。これをやらない会社は、どれだけ棚卸ししても半年で元に戻ります。仕事は放っておけば増えるものだ、という前提で守りを固めておくんです。
仕事の進め方そのものを見直したい方は、賢く仕事をするやり方を学ぼうも合わせてどうぞ。
明日からの一歩:「止める仕事」を1つだけ決める
大げさなプロジェクトはいりません。明日、これだけやってください。
- 社内を見回して、「これ、誰のための仕事だろう?」と一瞬でも思った仕事を1つ選ぶ
- その仕事を1か月止めると宣言する(社長の口から、はっきりと)
- 1か月後、誰か困ったかを確認する
困らなければ、その仕事はもう戻さなくていい。年間で何十時間かが、そのまま手元に返ってきます。困ったら戻せばいいだけで、失うものは何もありません。
人手不足の会社に足りないのは、人ではなく**「止める決断をする人」**です。それができるのは、社長しかいません。1つでいいんです。まず1つ、止めてみましょう。応援しています!
よくある質問
人手不足の中小企業は、まず何から手をつけるべきですか?
採用ではなく「仕事を減らすこと」から手をつけてください。順番は①やめる ②減らす ③任せる・自動化する、です。特に①のやめる判断は、コストがゼロで効果が最も大きい打ち手です。人を増やす前に、その仕事が本当に必要かを確かめるほうが先です。
人が採れないなら、DXやAIで自動化すればいいのでは?
自動化は3番目です。いらない仕事を自動化すると、いらない仕事が高速で回り続けるだけになります。しかもツール代と教育の手間という新しい負担が増えます。やめる・減らすを済ませてから自動化すると、対象が絞られて費用も効果もはっきりします。
仕事を減らすと、品質が落ちませんか?
落ちる仕事と、落ちない仕事があります。お客さんが見ていない社内資料の見た目や、誰も読んでいない日報は、止めても品質は落ちません。判断に迷ったら「1か月止めてみて、困ったら戻す」で十分です。止めて誰も困らなければ、それは元から不要だった仕事です。
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