一人あたり生産性の出し方と、上げ方。売上ではなく“粗利”で見る理由
結論から、いきます。 一人あたり生産性は、粗利益 ÷ 人数(または総労働時間) で出ます。売上で見てはいけません。そして上げ方は「粗利を増やす」か「投入時間を減らす」の2つしかありません。
でも、この記事でいちばん大事なのは、計算式でも打ち手でもないんです。まず1回、自社の数字を出すこと。ここが全部のスタートになります。
「生産性が低い気がする」を、数字にしたことはありますか?
「うちは効率が悪いと思うんだよね」——よく聞く言葉です。でも、「じゃあ、一人あたりいくらですか?」と聞かれて答えられる社長は、驚くほど少ない。
これ、責めているんじゃないんですよ。誰も教えてくれないからです。決算書には「一人あたり生産性」という行がありません。税理士さんも、聞かれなければ出しません。だから知らないまま何十年も経営している会社が、本当に多いんです。
でも、数字にしないと何が困るか。「良くなったのか悪くなったのか」が永遠に分からないんです。人を1人増やしたときも、新しい機械を入れたときも、値上げをしたときも、「なんとなく忙しくなった/楽になった」で終わってしまう。感覚は嘘をつきます。忙しさと儲かりやすさは、まったく別の話ですからね。
一人あたり生産性とは、「うちの会社は、人ひとり分の時間から、いくらの価値を生んでいるか」という問いへの答え。
これが分かると、経営判断の景色が変わります。
なぜ売上ではなく“粗利”で割るのか?
ここが一番の落とし穴なので、丁寧にいきます。
よくあるのが「一人あたり売上高」です。新聞や業界データでもよく使われます。でも、これは中小企業の実力を測るには向いていません。
理由は単純で、売上は仕入れの大きさで簡単に膨らむからです。
例えば、A社とB社。
- A社:100万円で仕入れたものを110万円で売った。売上110万円、粗利10万円。
- B社:材料5万円で作ったものを50万円で売った。売上50万円、粗利45万円。
売上だけ見ればA社が2倍以上です。でも、会社に残ったお金はB社が4倍以上。社員のお給料も、設備投資のお金も、社長の報酬も、全部この「粗利」から出ています。 売上からは出ません。
つまり、生産性とは「自社が付け加えた価値の量」のこと。外から買ってきたものの金額は、自社の実力ではないんです。だから引く。それが粗利です。
粗利をどう伸ばすかについては、安売りが利益を“溶かす”仕組みも読んでみてください。1割引きが粗利をどれだけ削るかを見ると、粗利で考える意味がはっきりします。
実際の出し方:決算書1枚と、勤怠記録だけ
やってみましょう。用意するのは決算書(損益計算書)と、ざっくりの労働時間です。
ステップ1:年間の粗利益を出す
損益計算書の「売上総利益」がそれです。書いていなければ「売上高 − 売上原価」で計算してください。
ステップ2:分母を決める
2種類あります。
| 分母 | 計算式 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 人数 | 粗利 ÷ 人数 | 全員がフルタイム。ざっくり掴みたいとき |
| 総労働時間 | 粗利 ÷ 年間総労働時間 | パート・アルバイトがいる会社(おすすめ) |
パートさんが多い会社で「人数」で割ると、実態からズレます。週2日の人も1人と数えてしまうからです。だから時間で割る。勤怠記録を合計するだけなので、1時間もかかりません。
ステップ3:割る
例えば年間の粗利が6,000万円、社員とパートを合わせた年間総労働時間が20,000時間なら、1時間あたり3,000円。これがあなたの会社の生産性です。
出た数字がいくらでも、落ち込む必要はまったくありません。大事なのは、今日この数字を持ったことです。来年また出せば、上がったか下がったかが分かる。それだけで、経営は勘から抜け出します。
数字を見る習慣そのものを作りたい方は、エクセルで始める売上分析。社長がまず見るべき“3つの数字”もあわせてどうぞ。
上げ方は2つだけ。分子を増やすか、分母を減らすか
さて、上げ方です。世の中には生産性向上の手法が山ほどありますが、全部この2つに分解できます。分数なので、当たり前なんですよね。
① 分子(粗利)を増やす
- 値上げする/価格転嫁する
- 客単価を上げる(同じ客数でも粗利が増える)
- 粗利率の高い商品の比率を上げる
- 値引きをやめる
ここでポイントなのは、値上げは生産性向上の最短ルートだということ。人も時間も1ミリも増やさずに、分子だけが増えるからです。3%の値上げが通れば、それはそのまま3%の生産性向上。これに勝てる効率化施策は、なかなかありません。(交渉の準備は価格転嫁の交渉、何を持っていけば通るのかにまとめています)
② 分母(時間)を減らす
- やめる(そもそも要らない仕事を止める)
- 減らす(頻度と精度を落とす)
- 任せる・自動化する
こちらの順番と理由は、人手不足は“採用”では解決しない。仕事量を減らす3つの順番に詳しく書きました。実際の手順は“やめる仕事”を決める棚卸しのやり方です。
いちばん多い誤解は、「忙しさ」を生産性だと思うこと
ここ、逆張りっぽく聞こえるかもしれませんが、大事な話です。
分母を減らすと、生産性は上がります。 つまり、「同じ粗利のまま、労働時間が減った」場合、生産性は確実に向上しています。売上は1円も増えていないのに、です。
ところが多くの会社で、これは「成果」として扱われません。むしろ「暇になった」「たるんでいる」と見られることさえある。忙しさを働きの証拠にしてしまうと、生産性向上は永遠に評価されないんですよ。
もう一つ言うと、生産性を上げる目的は、人を減らすことではありません。空いた時間をお客さんに向けることです。空いた時間で新規のお客さんに会う、既存のお客さんに連絡する、商品を磨く。そこで粗利が増えれば、分子も増えて、生産性はさらに上がります。ここが回り始めた会社は、強いです。
仕事の進め方そのものを見直したい方は、賢く仕事をするやり方を学ぼうもどうぞ。
今日やること:30分で、自社の「1時間あたり粗利」を出す
大きな改革はいりません。今日はこれだけです。
- 直近の決算書を開いて、**売上総利益(粗利)**の金額をメモする
- 去年1年間の全員分の労働時間の合計をざっくり出す(正確でなくていい。パートさんは勤怠記録、社員は「月◯時間×12か月×人数」で十分)
- 粗利 ÷ 総労働時間を電卓で叩く
- 出た数字を、手帳の最初のページに書く
これで終わりです。30分もかかりません。
そして来年、また同じ計算をしてください。その差が、あなたの1年間の経営の成績表です。売上でも、忙しさでもなく、この数字が上がっていれば、会社は確実に良くなっています。
数字は、持った人にしか味方しません。まず1回、出してみましょう。応援しています!
よくある質問
一人あたり生産性は、どうやって計算しますか?
年間の粗利益(売上−売上原価)を、社員数で割ります。パートやアルバイトがいる会社は、人数ではなく総労働時間で割ると実態に合います。粗利÷総労働時間なら「1時間あたりいくら稼いでいるか」が出ます。決算書1枚と勤怠記録があれば、30分で計算できます。
なぜ売上ではなく粗利で見るのですか?
売上は仕入れの大きさで簡単に膨らむからです。仕入れ100万円のものを110万円で売れば売上は110万円ですが、会社に残るのは10万円です。生産性とは「自社が生み出した価値」の量なので、外から買ってきた分を引いた粗利で見ないと、実力を見誤ります。
一人あたり生産性を上げる方法は何がありますか?
分子である粗利を増やすか、分母である投入時間を減らすかの2つだけです。粗利を増やすには値上げ・単価アップ・粗利率の高い商品を伸ばす。時間を減らすには、やめる・減らす・任せる。この2つ以外の打ち手は、この2つのどちらかに必ず分解できます。
小さな会社の売上アップ・利益改善のご相談を承っています。
お問い合せはこちら