中小企業のAI導入事例。自分で作って納めたAIシステム
中小企業診断士が、実際に作って納品したものです。 作業が前と後でどう変わるかまで書きました。 「AIで効率化しましょう」で終わる提案はしません。 設計から開発・納品まで、診断士自身が担当します。
いちばん多い失敗は、道具を先に決めることです。 「話題のツールを入れたが、誰も使っていない」という状態は、 だいたい課題ではなく道具から入っています。
先に見るのは「どの作業に、月いくらかかっているか」です。 そこを数字にしてから、金額の大きい順に手をつけます。 既製品で足りる領域は、既製品を勧めます。 作らないほうが安く済むことは珍しくありません。
中小企業のAI活用事例(作ったもの)
01請求書の自動作成
手書き伝票を見ながらExcelに1件ずつ入力し、そこから請求書を作る。月末に丸1日〜数日
スマホで伝票を撮る → AI-OCRが読み取る → 台帳に入る → 請求書PDFが出る
向いている会社:手書きや紙の伝票が残っている会社。取引先ごとに請求書の様式が違う会社
どう作ったか:スマホのカメラで撮った画像を AI-OCR に渡し、品番・数量・単価を拾って台帳に書き込む。取引先ごとの様式は、ひな形を登録して差し込む形にした。⚠ 手書きのクセは会社ごとに違うので、最初の1か月は人が見て直す前提で組む。
考え方を詳しく:町工場の請求書づくり、AIでどこまで自動化できるか
02図面・帳票の検索システム
ファイルサーバーや棚を探し回る。「あの図面どこだっけ」で毎回止まる
管理番号から、その図面をすぐ呼び出せる
向いている会社:図面が多く、探せる人が特定の1人に偏っている製造業
どう作ったか:ファイル名だけでは探せないので、図面に書かれた管理番号をAIで読み取って索引を作る。⚠ ファイルの置き場所を先に1か所にする。ここを飛ばすと、検索できないファイルが残る。
考え方を詳しく:図面管理システムの自作。決めるのは3つだけです
03図面から作業指示書を自動作成
図面を見ながら、指示書を手で書き起こす。書く人によって内容がぶれる
図面を読み取って指示書の下書きを生成する。人は確認と修正だけ
向いている会社:同種の加工を繰り返していて、指示書の作成がベテランに集中している会社
どう作ったか:過去の指示書を見本にして、図面から下書きを作らせる。人が確認して直す前提で組む。⚠ 判断が入る工程は自動化しない。ここを欲張ると、確認の手間のほうが増える。
考え方を詳しく:AIツールは既製品か、自社で作るか
04かんたん売上入力
日報や伝票を回収して、あとから誰かがまとめて入力する。集計は月次
スマホから入力 → スプレッドシートへ自動集計。その日のうちに数字が見える
向いている会社:現場が分散していて、数字が上がってくるのが遅い会社
どう作ったか:入力項目を極限まで削って、スマホの1画面に収める。送ったものはスプレッドシートにそのまま積み上がり、集計は関数で自動。⚠ 項目が多いほど入力されなくなる。「あれば便利」で足した列が、その仕組みを死なせる。
考え方を詳しく:Excelでやっていた集計を自動化する、最初の一歩
05撮るだけ精算
領収書を貼って、金額を書いて、申請書を出す。差し戻しも多い
領収書を撮るだけ。読み取りから精算の申請までつながる
向いている会社:外回りが多く、経費精算が毎月の手間になっている会社
どう作ったか:領収書を撮る→金額と日付を読み取る→申請の形に並べる。⚠ 読み取りは100%にはならない。違っていたときにすぐ直せる形にしておく。
考え方を詳しく:手書き伝票をAIで読み取る
06メルマガの自動配信
書く人がいないまま止まる。顧客リストがあるのに使えていない
配信の仕組みを組んで、続けられる形にする
向いている会社:既存客のリストはあるが、接点が途切れている会社
どう作ったか:配信の仕組みを組むところまで。⚠ 中身をAIに丸投げしない。読まれるメルマガは、その会社にしか書けないことが入っている。AIは下書きと配信の手間を減らすだけ。
考え方を詳しく:生成AIで最初に自動化すべき“たった1つ”の業務
07ネット情報の自動収集
競合や相場を人手で見に行く。見る日と見ない日が出る
決めた情報を自動で集めて、手元に並ぶ状態にする
向いている会社:相場や競合の動きが利益に直結する会社
どう作ったか:見に行く先と項目を先に決めてから組む。⚠ 集めたあとに誰が見るかを決めておかないと、データがたまるだけになる。
考え方を詳しく:「AIで何ができるの?」に答える地図
※ 削減できた時間は会社ごとに大きく違うため、ここには載せていません。 ご自身の会社でいくらになるかは、無料の AI活用診断で、オンラインでも対面でも、その場でご一緒に数字にします。
よくご相談いただく、6つの領域
ここから下は「作れる範囲」です。上の事例と違って、まだ作っていないものも含みます。 ご要望によっては、お請けできないものもあります。 いずれも汎用のSaaSではなく、御社の呼び方と手順に合わせた簡易版を想定しています。 品番の付け方も、単位も、棚の呼び方も会社ごとに違うからです。
もうひとつ、作るときに必ず分けているものがあります。 「記録」と「判断」です。 入れた数字がそのまま見えるだけ(記録)で止まると、現場は入力をやめます。 入れた手間が返ってこないからです。 効くのは「だから、どうするか」が出るところ(判断)まで進めたときだけです。 下のうち、その一歩先まで進められるものには「判断まで」と書きました。
請求書づくりとエクセルの転記・集計は、1つのサービスとしてまとめました。 費用と進め方は請求書・エクセル業務のAI自動化にあります。
工場・製造業の方へ。図面の検索、作業指示書の下書き、伝票の読み取り、現場の数字の集計を、工場の作業に沿って工場のAI活用事例にまとめました。
図面を探すのに時間がかかっている方へ。図面・帳票の検索は、費用と進め方を図面・帳票の検索システムに1ページでまとめました。
図面を見ながら指示書を書き起こしている方へ。図面から作業指示書の下書きを作る仕組みは、費用と進め方を作業指示書の自動作成のページにまとめました。
作る前に試してみたい方のために、10業種・1,000種の無料ミニアプリをLucky Field しごと道具箱に置いています。 登録不要で、入力した内容はブラウザの外へ送りません。簡易版なので、本格的に使う場合は個別に作ります。
- 売上管理 — その日の売上を、商品区分ごとに1分で入れるところまでに絞ります
(かんたん売上入力として納品した実績があります)。
決めること:誰が、いつ入れるか。/ レジや会計ソフトの集計で足りるなら、そちらで十分です。 見方はエクセルでの売上分析に書きました。 - 商品管理 — 品番と現場の呼び名の対応表を1つにするところから。
決めること:新しい商品を登録する人を1人にする。
判断まで:どれが利益を作っているか。売れた数でも売上でもなく、 手間1分あたりいくら残るかで並べると、順番が入れ替わります。
販売管理やECの商品マスタで足りるなら、そちらで十分です。 並べ方はABC分析に書きました。 - 在庫管理 — 動いている品だけを数える形にします。全部を数えようとすると続きません。
決めること:入出庫を、誰がいつ入れるか。ここが決まらないと、何を作っても止まります。
判断まで:「いま何個あるか」ではなく、「あと何個受けられるか」(手元の数から、受注ぶんを引いた数)。 ここまで出せると、いつ・何を・いくつ頼むかが自動で並びます。
作り方は在庫管理をエクセルで自作に書きました。 - 生産管理 — 全部入りは作りません。
「今どの工程まで終わっていて、納期に間に合うか」だけに絞れば、十分に使えるものになります。
決めること:工程が終わった日を、その日のうちに入れる。
判断まで:どこが、どれだけ混んでいるか。 残り件数では分かりません(重い仕事1件と、軽い仕事10件は違うからです)。 時間の量にして初めて、手を回す先が決まります。
考え方は生産管理をエクセルで自作に書きました。 - 工程管理 — 軸が業種で変わります。工事なら「手配の締切」、製造なら「工程 × 実績」。
決めること:遅れたとき、誰が順番を決めるか。
判断まで:「この注文なら、あと何日か」を、勘ではなく過去の実績から出す。 見積の時点で納期の目安が言えると、受けるかどうかをその場で決められます。
現場が数件のうちはエクセルで回ります。 手順は工事の工程表の作り方に書きました。 - 資金繰り — ここは作りません。
精度を決めるのは仕組みではなく、入出金の予定を誰が入れるかだからです。
会計ソフトの機能やエクセルで足ります。
表と運用を決めるところまでをご一緒にやります。 作り方は資金繰り表をエクセルで自動計算に書きました。
作らなかったもの、お断りしたもの
ご相談をいただいても、作らないほうがいいと判断してお伝えすることがあります。 こちらは中小企業診断士なので、まず利益構造を見ます。 作ることが目的になった瞬間に、たいてい失敗します。
① その作業に、年間いくらかかっているか
月2時間の作業を自動化しても、年間で24時間。人件費に直すと数万円です。 そこに50万円は出せません。金額にすると、頼むかどうかが先に決まります。 計算の手順はAI導入にいくらまで出していいかに書いています。
② 既製品で足りるなら、既製品を勧めます
会計、勤怠、名刺管理、チャット。ここは既製品のほうが安く、早く、壊れません。 作る価値があるのは、自社のやり方が業務に深く埋まっていて、既製品に合わせると現場が止まるところだけです。 判断の分かれ目はAIツールは既製品か、自社で作るかにまとめました。
③ 作ったあと、社内で面倒を見られるか
動かなくなったときに社内で直せないなら、その前提で設計する必要があります。 外部のサービスに依存する部分を減らし、仕様が変わっても影響が小さい形にします。 ⚠ マクロ(VBA)を書ける人が1人だけ、という会社は要注意です。 属人化を減らすために自動化したのに、新しい属人化を作ることになります。
④ 判断が要る仕事は、自動化しません
接客、値決め、仕入れの目利き、交渉。その場の判断が要る仕事は向きません。 向くのは「毎日発生して、形が決まっていて、担当が一人に偏っている」作業です。 洗い出しの条件は中小企業のAI導入、どこから手をつけるかに3つ書いています。
この4つに1つでも引っかかったら、その場で申し上げます。 費用対効果が合わないものを作っても、使われずに終わるからです。
社員に使わせていいか、という相談も増えています
ツールを作る以前の話として、「ChatGPTを社員に使わせていいのか」という相談が増えました。 結論から言うと、全面禁止は現実的ではありません。 禁止しても個人のスマホと個人のアカウントで使われ、会社からは見えなくなります。
決めることは3つだけです。入れてはいけない情報/使っていい業務/出てきたものを誰が確認するか。 そのまま配れる形は ChatGPTを社員に使わせていいか。禁止する前に決める3つのことに置いてあります。
AI活用診断は無料です。事前の準備は要りません。 「AIで何ができるのか分からない」という状態で結構です。 オンラインでも対面でも、その場で業務を書き出すところからご一緒に整理します(60分程度)。 業務を細分化して人件費に換算し、効果の大きい順に並べます。
これは、国の調査でも同じ結論です
| 8割超 | AIを活用する目的は「業務時間の節減」。次いで「人手不足の解消」「業務の属人化解消」 |
|---|---|
| 約3割 | AI活用に取り組んでいる事業者の割合。ITツールの活用は約7割なので、AIはまだ3割 |
| 1位 | AIを活用しない理由は「活用する業務がイメージできていない」が最も多い。道具ではなく、対象業務が決まらないことが止めている |
出典:中小企業庁『2026年版 中小企業白書』第2部第2章第2節(第2-2-87/89/92/93図)。 AI活用の状況は(独)中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2025年11〜12月実施・有効回答1,668件)に基づく。
そして、効果を左右するのは道具選びではありませんでした。 同じく中小企業庁が、IT導入の効果が得られた企業を分析したところ、 労働生産性への影響が最も大きかった取組は「業務プロセスの見直しを合わせて行った」ことでした。 次いで「経営層が陣頭指揮をとった」「外部のコンサルタントを活用した」が続きます (出典:中小企業庁『2018年版 中小企業白書』第2-4-24図)。
「どの業務を自動化すべきか」が決まらないことが、いちばんの壁になっています。 そこを数字で決めるのが、無料のAI活用診断です。
順番を間違えなければ、効果は出ます
どれから手をつけるかは、この順で決めます。 道具の話は最後です。
| ① 時間を測る | どの作業に、誰が、月に何時間使っているか。感覚ではなく数字にすると、思っていたのと違う作業が上位に来ます |
|---|---|
| ② 金額に直す | その時間を人件費に換算する。ここで初めて「いくらの問題か」が見える |
| ③ 既製品を探す | 既製品で足りるなら、そちらを勧めます。作らないほうが安いことは珍しくありません |
| ④ 作る | 既製品では届かない部分だけを作る。納品して終わりにせず、社内で運用が回る形にします |
考え方は記事にも書いています。 中小企業のAI導入、どこから手をつけるか、 経営課題からAIを選ぶ、逆引きガイド、 既製品か、自社で作るか。判断が分かれる4つのポイント、 AIで人手不足はどこまで埋まるか。 ここに書いたことは、そのまま持っていって自社でやっていただいて構いません。
導入したあとの話も置いてあります。 入れたシステムが定着しない理由、 議事録づくりをAIに任せる、 機械学習でよくある勘違い、 自分で作ってみたAIの話、 作業効率の計算式と求め方。
費用
| AI活用診断 | 無料。事前の準備は不要。オンラインでも対面でも、その場で業務の書き出しから優先順位づけまでをご一緒に整理します(60分程度) |
|---|---|
| ツールの開発 | 50万円〜(税別)。1つの業務を自動化する規模から。設計・開発・納品まで一人で受け持ちます。対象業務と要件で変わります。作る前に無料のAI活用診断でその作業の年間の人件費を出し、回収できるときだけ作ります |
先に人件費を数字にしてから、費用対効果が合うかを判断します。 合わなければ「やらないほうがいい」とお伝えします。 判断の材料がないまま見積りだけ出すことはしません。
よくあるご質問
- この一覧にないものも作れますか?
- 作れることのほうが多いです。ここに並べているのは、実際に納めて運用が回っているものだけです。同じ仕組みは、業種を問わず使えます。たとえば手書き伝票の読み取りは、建設でも小売でも同じ形で動きます。まずは「うちの場合はどうか」をお聞かせください。
- 作ったあと、壊れたらどうなりますか?
- 直します。ただし、そもそも壊れにくい形で作ることのほうを優先しています。外部のサービスに依存する部分を減らし、仕様が変わっても影響が小さくなるように組みます。社内に詳しい方がいない前提で設計しています。
- 費用はいくらですか?
- 1つの業務を自動化する規模で50万円から(税別)です。対象の業務と要件によって変わります。先に無料の「AI活用診断」で、どの作業に月いくらの人件費がかかっているかを数字にします。費用対効果が合わなければ「やらないほうがいい」とお伝えします。
- ここに載っているものと同じものが欲しいのですが
- 同じ形で作れるとは限りません。会社ごとに業務の流れも帳票の形も違うため、多くの場合は作り直しになります。ただし、これまで作った中で共通して使える部分は増えてきているので、似た業務であれば早く形にできます。まずは現状をお聞かせください。
- 社内にITに詳しい人がいません
- 構いません。むしろ、そういう会社のほうが多数派です。設計から開発、納品後に社内で運用が回るところまで一人で担当します。使う人が変わっても続く形にしてお渡しします。
まず、どこにいくらかかっているかを出します
AI活用診断は無料です。事前の準備は要りません。 「AIで何ができるのか分からない」という状態で結構です。 オンラインでも対面でも、その場で業務を書き出すところからご一緒に整理します(60分程度)。 業務を細分化して人件費に換算し、効果の大きい順に並べます。