専門家がおちいるわなとは?

専門家がおちいるわなとは?

知識があるほど、正しいやり方に見えてしまうものがあります。 それが、専門家のわなです。

学会で感じた、強い違和感

以前、とある学会で信頼性試験の講師をしたときの話です。

摩擦・摩耗・潤滑にかかわる性能試験——トライボロジー試験は、一般に再現性が低く、バラツキが大きいと言われています。

そのため会場には、**「すでに確立されている規格試験を行えば信頼性は担保される」**という空気がありました。ほとんど疑いのない前提として。

これが、バイアスです。

型に従うことは、悪ではない

誤解のないように言います。

やろうとしている試験の目的が、規格試験とまったく同じなら、何も問題はありません。 むしろ型に従うのが最短で、最も確実です。

問題が起きるのは、目的が違うのに型を使い回すときです。

なぜ、専門家ほどハマるのか

理由は、はっきりしています。

規格試験を行えば、結果が仮説と違っても、深く考察する必要から逃れられるからです。

「規格どおりにやりました」——これは強力な言い訳になります。型は、逃げ道としても機能するのです。

そして、知識と経験がある人ほど、その逃げ道を知っています。 だから専門家ほどハマります。

これは、クレームを最初から排除する行為

型に従うということは、想定外の結果が出る余地を、あらかじめ消しておくということです。

しかし、新しい発見のほとんどは、想定外から生まれます。 クレームをチャンスに変えるところから生まれます。

型に閉じこもると、その入口を自分で塞ぐことになります。

じゃあ、どうするか

やることは1つです。

知りたい「現象の本質」を探り出し、その本質に適した試験のやり方を工夫する。

学会では、それによって信頼性は十分に担保できることを、実例を用いて説明しました。納得してくれたかどうかは分かりませんが。

順番が逆なのです。

✕  確立された型がある → それに従う → 結果を得る
◯  何を知りたいのか   → それに適したやり方を作る → 結果を得る

経営でも、まったく同じことが起きている

これはトライボロジーに限った話ではありません。経営の現場の方が、むしろ頻繁です。

  • 前年と同じ販促をする
  • 業界の相場どおりに価格を決める
  • 他社がやっているから、うちもやる

いずれも、「うちの場合、何を知りたいのか」を飛ばして、既存の型を当てはめています。

売上が伸びない原因が特定できないまま、施策だけが増えていく。 多くの場合、理由はこれです。

自分がハマっているか、確かめる方法

簡単な確認方法があります。

「なぜ、このやり方なのか」を三回続けて聞いてください。

なぜ、このチラシを配るのか?  → 毎年やっているから
なぜ、毎年やっているのか?    → 前任者からそうしていたから
なぜ、そうしていたのか?      → …分からない

三回目で「昔からそうだから」「業界では普通だから」に行き着いたら、型に頼っている状態です。

そこから**「本当は何を知りたいのか」**に戻ってください。別のやり方が見えてきます。

今日やること

いま続けている施策を1つ選んで、紙にこう書いてください。

この施策で、知りたいことは何か:
それは、この方法でしか分からないか:
もっと早く・安く分かる方法はないか:

「知りたいこと」が書けないなら、その施策は型に従っているだけかもしれません。

対象とするものの本質を見つけることが、いちばん重要です。専門家だからこそ、知識からくるバイアスのわなにハマってしまう——これは、あらゆるクレームにも共通して言えることではないでしょうか。

あわせて読みたい: 正しいコミュニケーションでクレームを無くそう! / 売上が伸びない社長が、まず捨てるべき“やり方脳”

疑うことは、否定することではありません。本質に近づくための手順です。応援しています!

よくある質問

専門家がおちいるバイアスとは、どういうものですか?

「確立されたやり方に従っておけば間違いない」という思い込みです。知識と経験があるほど、既存の型が正しく見えます。しかし新しい課題に取り組むとき、この型が邪魔をして誤った方向へ進みます。型どおりにやれば、結果が仮説と違っても深く考えずに済むため、逃げ道にもなってしまいます。

型に従うのが悪いということですか?

違います。目的が型と完全に一致しているなら、型に従うのが最短で最も確実です。問題になるのは、目的が違うのに型を使い回すときです。「今回知りたいことは何か」を先に言葉にすれば、型を使うべきか作るべきかは自然に判断できます。

経営の現場では、どんな場面で起きますか?

前年と同じ販促、業界の相場どおりの価格設定、他社がやっているからという理由の施策などです。いずれも「うちの場合、何を知りたいのか」を飛ばして、既存の型を当てはめています。売上が伸びない原因が特定できないまま施策だけが増えるのは、たいていこれが理由です。

自分がバイアスにかかっているか、どう気づけばいいですか?

「なぜこのやり方なのか」を三回続けて聞いてみてください。三回目で「昔からそうしているから」「業界ではそれが普通だから」に行き着いたら、それは型に頼っている状態です。そこから「本当は何を知りたいのか」に戻ると、別のやり方が見えてきます。

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