仕事を怠けることをさす「油を売る」という慣用句、よく耳にするのではないでしょうか。
あるいは、ときどき部下に言っているのでは?
この意味の由来をググると、「江戸時代、髪油売りが油を器に移しているあいだ、婦女を相手に長話をしていたことが、怠けているように見えた」ということのようです。
トライボロジーの観点からすると、油は水よりかたい、つまり、粘度が高くて水のようにサラサラとは流れないわけで、油を移し終えるには時間がかかるのは当然です。
その間、話すことぐらいしかやることがなかったのでしょう。
しかし、見方をかえると「油を売る」とは、効果的に仕事をする、
つまり、ほめ言葉と解釈できるかもしれません。
というのも、
油は「容積」で売り買いされています。
気温が低い朝は、油の温度も低く密度が高いため、おなじ容積でも質量が大きくなります。
それにたいし、昼には気温が上がり、油の温度も上がるため密度は下がります。
したがって、おなじ容積でくらべると、質量は昼のほうが朝より小さくなります。
つまり、密度が低い昼間に売ったほうが、質量の差分だけ余計にもうかる(実質上、
朝より高く売れる)というわけです。
結論として、朝は仕事をせず、昼間に働くのが「油を高く売る」極意といえます。
油を売る商売に限らず、トライボロジーを知っていれば、もっと賢く仕事をする知恵が浮かぶかもしれませんよ。