最初の記事なので、トライボロジーについて簡単に説明します。
トライボロジーとは、ザックリいうと、摩擦・摩耗・潤滑にかかわる技術と考えて下さい。
また、機械設備の状態診断として行われる油分析、あるいは、潤滑油診断として使われる技術でもあります。
潤滑油診断は、機械の油(潤滑油や作動油など)の性能や汚れぐあいにくわえて、油に含まれる目に見えない小さな異物を調査し、機械の状態を知ることに優れています。
そして、油を分析して機械の健康状態を知ることから、人の血液検査にたとえることができます。
血液検査は、本人が自覚していない病気のきざしを、血液中の成分などから評価し、適切に処置することで、病気にかからずに健康で長生きするために行いますよね。
これが、予防医療です。
一方、潤滑診断は、機械の作動状況からでは分からない不具合のきざしを、油中の成分などから評価し、適切に対処することで、機械が故障することなく長期にわたって性能をたもつために行います。
これを、予防保全といいます。
潤滑油診断は、機械をばらす必要がないため機会損失もなく、点検コストも下げることができるので、近年、その適用がひろがっています。
トライボロジーについて、もう少しイメージがわくように、ノーベル賞物理学者の故小柴先生の逸話を紹介します。
あるとき中学校で
「この世に摩擦というものがなくなったらどうなるか。記せ。」
という試験問題をだしたそうです。
正解は「白紙答案」。
摩擦がなければ鉛筆の先が滑って紙に字は書けないからと説明されたそうです。
ひとは朝起きてから寝るまで、摩擦・摩耗・潤滑にお世話になることなくして生活はなりたちません。
あさ目覚めたときの布団の感触、顔をあらう、歯を磨く、食事をとる、服を着る、靴をはき歩く、などなど、全て摩擦・摩耗・潤滑のお世話になっています。
つまり、毎日トライボロジーとともに暮らしているというわけです。
つぎに、トライボロジーの効用についてもう少し説明しましょう。
製造品にクレームがでたとき、再発防止と品質アップのために原因の究明と対策を行うと思います。
そのさい、表面上の現象だけをとらえると、その場しのぎの対策になってしまい、再発の可能性があります。
そこで、トライボロジーの出番です。
たとえば、ベアリングの摩耗によって機械の機能が低下したことが、クレームの根源だとします。
トライボロジーをもちいれば、摩耗が進む前の段階で見つけることが可能です。
つまり、トライボロジーは、クレームを未然に防ぐ武器になるということです。
空気のようにあたりまえの存在であるトライボロジーを、機械設備にもあたりまえに適用してみてはどうでしょうか?