付加価値額の計算方法。式は3つで答えが違う
結論から、いきます。付加価値額の計算方法は、主に3つあります。
① 控除法 :売上高 − 外部購入価値(材料費・仕入・外注費・運送費など)
② 加算法 :経常利益 + 人件費 + 支払利息 + 賃借料 + 租税公課 + 減価償却費
③ 補助金の式:営業利益 + 人件費 + 減価償却費
そして、同じ会社でも答えが変わります。①と②は理屈の上では同じになりますが、③は小さく出ます。
どの式を使うかは目的で決めます。今日は、3つの違いと使い分け、そして「人件費を削っても付加価値額は増えない」という、判断を誤りやすいところまで置いていきます。
付加価値額とは、何を表す数字なのか
自社が新しく生み出した価値の大きさです。
売上のうち、材料や仕入や外注など外から買ってきた分は、自社の働きではありません。それを差し引いて残った額が、自社の人と設備と工夫が生んだ分です。
その残った額から、給料、家賃、利息、税金、そして利益が支払われます。だから付加価値額は「会社が払えるお金の、元の大きさ」とも言えます。
⚠ 中小企業では、決算書の粗利(売上総利益)で代用して考えても構いません。ただし製造業で売上原価に工場の人件費(労務費)が入っている場合は、粗利が付加価値額より小さく出ます。
3つの式で、本当に答えが変わるのか
例で出します。売上1億円の会社です(説明用の数字です)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 10,000万円 |
| 外部購入価値(材料・仕入・外注・運送など) | 6,000万円 |
| 人件費 | 2,500万円 |
| 減価償却費 | 300万円 |
| 賃借料 | 200万円 |
| 租税公課 | 50万円 |
| 営業利益 | 950万円 |
| 支払利息 | 50万円 |
| 経常利益 | 900万円 |
これを3つの式に入れます。
| 式 | 計算 | 付加価値額 |
|---|---|---|
| ① 控除法 | 10,000 − 6,000 | 4,000万円 |
| ② 加算法 | 900 + 2,500 + 50 + 200 + 50 + 300 | 4,000万円 |
| ③ 補助金の式 | 950 + 2,500 + 300 | 3,750万円 |
①と②は同じ4,000万円になりました。外から買った分を引くのも、社内に残った分を足し上げるのも、同じものを別の側から数えているからです。
③だけ250万円小さい。賃借料200万円と租税公課50万円を足していないからです。
⚠ ①と②が合わないときは、どこかの費用の分け方がずれています。「外注費を人件費に入れていた」「運送費を販管費のその他に入れていた」などです。一度そろえておくと、毎年同じ物差しで比べられます。
どの式を、何に使えばいいのか
目的で決めてください。
| 使う場面 | 使う式 | 理由 |
|---|---|---|
| 補助金の事業計画 | ③ 補助金の式 | 公募要領でこの式が指定されている。要件は必ず公募要領で確認 |
| 社内で毎年の変化を見る | ① 控除法 | 決算書から出しやすく、外部購入が増えていないかも同時に見える |
| 労働分配率を出す | ① か 粗利で代用 | 分母をそろえることが大事。労働分配率の計算方法も同じ考え方 |
⚠ 補助金の式で社内の判断をしないでください。③は賃借料を足し戻さないので、家賃が月10万円上がると、付加価値額が年120万円減ったように見えます。①や②なら変わりません。家賃の値上げは、自社が生み出した価値を減らしたわけではないからです。
付加価値率は、どう出すのか
付加価値率(%) = 付加価値額 ÷ 売上高 × 100
さっきの例なら、4,000 ÷ 10,000 × 100 = 40% です。
仕入れて売る商売は低く、人の手が中心の商売は高く出ます。だから業種の目安と比べても、あまり意味がありません。
⚠ 見るなら、自社の過去3年分です。売上は伸びているのに率が下がっているなら、外部購入(仕入や外注)が売上以上に増えているという合図です。
人件費を削れば、付加価値額は増えるのか
増えません。ここがいちばん誤解されやすいところです。
さっきの会社が、人件費を200万円増やしたとします。
| 前 | 人件費を200万円増やした後 | |
|---|---|---|
| 人件費 | 2,500万円 | 2,700万円 |
| 営業利益 | 950万円 | 750万円 |
| ③ 補助金の式 | 3,750万円 | 750 + 2,700 + 300 = 3,750万円 |
人件費が増えたぶん、営業利益が同じ額だけ減るので、合計は変わりません。逆に人件費を削っても、同じ理屈で付加価値額は1円も増えません。
人件費を削るのは、付加価値額を増やすことではなく、配分を変えているだけです。
では何で増えるのか。売上を増やすか、外部に払っている分を減らすかの2つです。
外注費を300万円減らして内製した場合(売上は同じ)
控除法:10,000 − 5,700 = 4,300万円(300万円増える)
⚠ ただし、内製にすれば人件費や設備が増えることがあります。付加価値額が増えても、利益が残るかは別に計算してください。額で見るという考え方は粗利率の目安を調べる前ににも書きました。
1人あたりの付加価値額は、どう使うのか
1人あたり付加価値額 = 付加価値額 ÷ 人数
さっきの例で従業員10人なら、4,000万円 ÷ 10人 = 400万円。これが労働生産性と呼ばれるものです。
使い道は、採用と賃上げの判断です。1人あたり400万円の付加価値を生んでいる会社が、1人あたり人件費250万円を払っているなら、残りの150万円で家賃や利益をまかなっていることになります。この差が縮んでいないかを毎年見てください。
人を増やす判断を額で逆算する方法は労働分配率の計算方法と目安に、人数の少ない会社での見方は一人あたり生産性の出し方と、上げ方に書いています。
今日、やること
決算書を1期ぶん出して、控除法で出してみてください。
① 売上高 :__________ 万円
② 外部に払った分(材料・仕入・外注・運送):__________ 万円
③ 付加価値額(① − ②) :__________ 万円
④ 付加価値率(③ ÷ ① × 100) :__________ %
②の拾い方に迷ったら、「その費用は、社外の誰かの売上になっているか」で判断してください。なっていれば外部購入です。
出た数字が思ったより小さくても、気にしないでください。外に払っている分がどこに大きいかが見えた時点で、増やす打ち手は決まります。応援しています。
よくある質問
付加価値額の計算方法を教えてください。
よく使われる式は3つです。①控除法:売上高から、材料費・仕入・外注費・運送費など外部に払った分を引く。②加算法:経常利益に人件費・支払利息・賃借料・租税公課・減価償却費を足す。③補助金で使われる式:営業利益+人件費+減価償却費。①と②は理屈の上では同じ額になりますが、③は賃借料や租税公課を含まないぶん小さく出ます。どれを使ったかを毎年そろえてください。
付加価値額とは何ですか?
自社が新しく生み出した価値の大きさです。売上のうち、材料や仕入や外注など外から買ってきた分は自社の働きではないので差し引きます。残った額が、人件費や家賃、利息、利益の原資になります。中小企業では、決算書の粗利(売上総利益)で代用して考えることもできます。
付加価値率はどう計算しますか?
付加価値額 ÷ 売上高 × 100 です。売上1億円で付加価値額が4,000万円なら40%です。仕入れて売る商売は低く、人の手が中心の商売は高く出ます。業種の目安と比べるより、自社の過去3年分を並べて、外部購入が増えて率が下がっていないかを見るほうが役に立ちます。
付加価値額を増やすには、人件費を削ればいいですか?
削っても増えません。加算法でも補助金の式でも、人件費を削ると営業利益や経常利益が同じ額だけ増えるので、足し算の合計は変わらないからです。付加価値額を増やすのは、売上を増やすか、外部に払っている材料・仕入・外注などを減らすことです。人件費を削る打ち手は、付加価値額ではなく利益の配分を変えているだけです。
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