労働分配率の計算方法と目安。率より額で見る
結論から、いきます。労働分配率の計算式は、これだけです。
労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100
中小企業なら、付加価値の代わりに粗利(売上総利益)で出して構いません。粗利3,000万円、人件費1,800万円なら 1,800 ÷ 3,000 × 100 = 60%。以上です。
ただし——この率を業種の目安と比べても、「あと1人雇えるか」「いくら賃上げできるか」は分かりません。
今日は、その2つを額で逆算する方法まで置いていきます。
労働分配率の計算式は「人件費 ÷ 付加価値」
稼いだ粗利のうち、何割を人に払っているか、です。
60%なら、粗利100円のうち60円が人件費に消えて、残り40円で家賃・光熱費・借入の返済・利益をまかなっている、ということです。
⚠ 人件費に入れるものを、毎年そろえてください。
| 入れるもの | よく抜けるもの |
|---|---|
| 給与・賞与 | 役員報酬 |
| パート・アルバイト代 | 法定福利費(社会保険料の会社負担分) |
| 福利厚生費・退職金の積立 |
特に役員報酬と法定福利費が抜けやすいです。抜けていると、率が実際より低く出ます。
付加価値と粗利、どちらで出せばいいのか
厳密には、付加価値の出し方は複数あります。
| 出し方 | 中身 |
|---|---|
| 粗利で代用する | 売上高 − 売上原価。決算書からすぐ出る |
| 加算法 | 経常利益 + 人件費 + 減価償却費 + 賃借料 + 支払利息 + 租税公課 など |
加算法のほうが正確ですが、毎月出すには手間がかかります。
⚠ 大事なのは、どちらかに決めて毎年同じ式を使うことです。式が変わると、去年と比べる意味がなくなります。社内の判断に使うなら、粗利で十分です。
⚠ ただし製造業は、売上原価の中に工場の人件費(労務費)が入っていることがあります。顧問税理士に「労務費は原価に入っていますか」と一度確認してください。入っているなら、その分も人件費に足して計算します。
適正な目安と比べても、打つ手が決まらないのはなぜか
調べると、業種別の目安の表がたくさん出てきます。でも、その表を見たあと何をするでしょうか。
「うちは目安より高い」と分かったとして、人件費を削りますか。
人手が足りない今、削れば人が辞めて、仕事が回らなくなります。だから多くの会社は「高いのは分かったけど、どうしようもない」で止まります。
率を下げる方法は、2つしかありません。
労働分配率 = 人件費 ÷ 粗利
① 人件費(分子)を減らす
② 粗利(分母)を増やす
中小企業で現実的なのは②です。①を選ぶと人が減り、次の粗利も減ります。
⚠ だから率は「高いか低いか」を眺める数字ではなく、「あといくら粗利を増やせば、この人件費を払い続けられるか」を逆算するための道具として使います。
公的な業種別の数字が見たい場合は、中小企業庁の中小企業実態基本調査に集計があります。ネットのまとめ記事ではなく、元の統計を見てください。
① あと1人雇えるかを、額で逆算する
今の率を保ったまま1人増やすには、粗利がいくら要るか。これだけ出せば判断できます。
必要な粗利 = 雇ったあとの人件費 ÷ 今の労働分配率
例で出します。
| 今 | 1人雇ったあと | |
|---|---|---|
| 人件費 | 1,800万円 | 2,100万円(年300万円の人) |
| 粗利 | 3,000万円 | ? |
| 労働分配率 | 60% | 60%を保つなら |
2,100万円 ÷ 0.6 = 3,500万円
粗利を今より500万円増やす必要があります。
つまり判断はこうなります。
その1人が、年500万円の粗利を生む仕事に就けるか
⚠ 年300万円の人を雇うのに、必要なのは300万円ではなく500万円です。人件費以外の固定費も、同じ比率で粗利から払っているからです。ここを「給料分を稼げばいい」と考えると、雇ったあとで苦しくなります。
② いくら賃上げできるかを、額で逆算する
全員の給料を上げたいときも、同じ考え方で出せます。
たとえば従業員10人、全員の月給を1万円上げるとします。
年間の増加 = 1万円 × 12か月 × 10人 = 120万円
(社会保険料の会社負担も増えるので、実際はもう少し多い)
| 今 | 賃上げ後 | |
|---|---|---|
| 人件費 | 1,800万円 | 1,920万円 |
| 粗利 | 3,000万円 | 3,000万円のまま |
| 労働分配率 | 60% | 64% |
率で見ると「4ポイント上がった」で、重く感じます。
額で見ると「粗利を200万円増やせば、元の60%に戻る」です(1,920万円 ÷ 0.6 = 3,200万円)。
⚠ 200万円なら、値上げ1回、取引先1社で届く可能性があります。率で考えると諦める話が、額にすると手が届く話に変わります。値上げの考え方は原価と同じ額だけ値上げすると、利益が減る理由に書きました。
人数が少ない会社ほど、率で見ると判断を誤る
分母も分子も小さいので、1人の動きで率が大きく跳ねます。
- 1人採用しただけで、率が5ポイント以上上がる
- 1人辞めただけで、率が下がって「改善した」ように見える
人が辞めて率が下がるのは、改善ではありません。残った人の負担が増えているだけです。
だから人数の少ない会社は、率と一緒にこの2つの額を並べてください。
| 見るもの | 式 |
|---|---|
| 1人あたりの粗利 | 粗利 ÷ 人数 |
| 1人あたりの人件費 | 人件費 ÷ 人数 |
この差が、1人あたり会社に残るお金です。差が縮んでいれば、率がどうであれ手を打つ時期です。
1人あたりの粗利の上げ方は一人あたり生産性の出し方と、上げ方に、人の数の見方は定着率の計算方法。ただし30人以下では、この数字は使いにくいに書いています。
今日、やること
決算書を1枚開いて、3つの数字を書き写してください。
① 粗利(売上総利益) :__________ 万円
② 人件費(役員報酬・法定福利費も含む):__________ 万円
③ 人数 :__________ 人
②÷①で労働分配率。①÷③と②÷③で、1人あたりの粗利と人件費。
3つ出したら、もう「あと1人雇えるか」を逆算できる状態です。
率が思ったより高くても、落ち込まないでください。人に払えている会社ほど、率は高く出ます。それは悪いことではありません。あとは粗利をいくら増やせばいいかが分かれば、打つ手は決まります。応援しています。
よくある質問
労働分配率の計算方法を教えてください。
基本の式は「人件費 ÷ 付加価値 × 100」です。付加価値の出し方は複数ありますが、中小企業では決算書の売上総利益(粗利)で代用するのが実用的です。粗利3,000万円・人件費1,800万円なら60%です。人件費には給与だけでなく、役員報酬・賞与・法定福利費(社会保険料の会社負担)・福利厚生費まで入れてください。毎年同じ範囲で出すことが大事です。
労働分配率の計算式を、もう一度教えてください。
「人件費 ÷ 付加価値 × 100」です。中小企業では付加価値を粗利(売上総利益)で代用して構いません。粗利3,000万円・人件費1,800万円なら60%になります。分子の人件費には、給与のほかに役員報酬・賞与・法定福利費・福利厚生費まで入れます。製造業では売上原価に工場の人件費(労務費)が入っていることがあるので、その分も足してください。
労働分配率の目安はどれくらいですか?
業種でまったく違います。人の手が中心の業種ほど高く、設備や仕入れが中心の業種ほど低く出ます。公的な数字は、中小企業庁の「中小企業実態基本調査」に業種別の集計があります。ただし目安より高いか低いかでは、次に何をするかは決まりません。高い場合も、人件費を削るのではなく粗利を増やす方向で考えるのが、中小企業では現実的です。
大企業やトヨタの労働分配率と比べる意味はありますか?
ほとんどありません。大企業は設備と規模で付加価値を大きくできるので、率は低く出やすくなります。人数の少ない会社は、1人の採用や昇給で率が大きく動きます。比べるなら自社の過去3年分です。そのうえで、率ではなく「1人あたりの粗利」と「1人あたりの人件費」を額で並べると、打つ手が見えます。
あと1人雇えるかは、どう判断すればいいですか?
今の労働分配率を保つために、粗利がいくら増えればいいかを逆算します。式は「雇ったあとの人件費 ÷ 今の労働分配率」です。人件費1,800万円・率60%の会社が年300万円の人を1人雇うなら、2,100万円÷0.6で粗利3,500万円が必要になり、今より500万円増やす必要があります。その人が年500万円の粗利を生む仕事に就けるかが、判断の分かれ目です。
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