定着率の計算方法。ただし30人以下では、この数字は使いにくい
結論から、いきます。定着率の計算式はこれだけです。
定着率(%) = 期末の在籍者数 ÷ 期首の在籍者数 × 100
期首30人で、期末28人なら、28 ÷ 30 × 100 = 93.3%。以上です。
ただし——従業員30人以下の会社では、この数字はあまり役に立ちません。
理由を書きます。そのうえで、代わりに何を見ればいいかまで置いていきます。
なぜ小さい会社では、率が使いにくいのか
分母が小さいからです。
| 会社の人数 | 1人辞めると |
|---|---|
| 300人 | 0.3% 下がる |
| 30人 | 3.3% 下がる |
| 10人 | 10% 下がる |
10人の会社で1人辞めたら、定着率は90%です。業界平均と比べて「低い」と言われる水準に、いきなり落ちます。
でも、その1人が辞めた理由が「配偶者の転勤」だったら? 会社に問題はありません。
逆に、30人の会社で1人も辞めなかった年は100%です。でもその年、辞めたくても辞められない人がいたかもしれません。
率は、この違いを全部消してしまいます。
⚠ 大きい会社では率が意味を持ちます。母数が大きいので、個別の事情がならされるからです。だから世の中の記事や統計は率で書かれています。それが小さい会社に当てはまらないだけです。
率の代わりに、何を見るのか
辞めた人を、実数で並べてください。
3年分でいいです。エクセルに4列だけ。
| 名前(イニシャルで可) | 入社 | 退職 | 在籍した月数 |
|---|---|---|---|
| A | 2023/4 | 2023/7 | 3か月 |
| B | 2022/10 | 2023/11 | 13か月 |
| C | 2021/4 | 2024/5 | 37か月 |
見るのは、いちばん右の列だけです。
辞める時期が、ある月数に固まっていませんか。
辞める月数で、原因はほぼ分かります
実務でよく見るのは、この3つの型です。
① 3か月前後で辞める
入口の説明と、現実がずれています。
「残業は少ない」と聞いていたのに繁忙期は毎日2時間。「未経験でも大丈夫」と言われたのに、教える人がいない。
⚠ これは採用の問題であって、本人の問題ではありません。面接で伝えている内容と、実際の仕事を突き合わせてください。悪い面を先に言ったほうが、結果的に定着します。
② 1年前後で辞める
成長している実感がありません。
1年経つと、だいたいの仕事が回せるようになります。そこで「来年もこれの繰り返しか」と思われると、他を探し始めます。
⚠ 給料の問題に見えますが、多くの場合は「次に何ができるようになるか」が見えていないことが先です。
③ 3年前後で辞める
次の役割がありません。
一通りできる人が、そのまま同じ立場に置かれている状態です。小さい会社ではポストが限られるので、ここは避けにくい。
⚠ ただし役職を作る必要はありません。「この分野は任せる」という形でも成立します。任せ方は幹部が育たない理由。丸投げでも細かすぎてもダメな、任せ方の技術に書きました。
「システムを入れれば定着する」は、順番が逆です
定着率を調べると、人事システムやサーベイの案内がたくさん出てきます。大きい会社では有効です。
ただ、30人以下の会社で辞める理由は、たいてい社長が既に知っています。
- あの人は、Bさんと合っていなかった
- あの仕事だけ、誰も代われなかった
- 去年から言われていたのに、手を打てなかった
知っているのに、動けていない。これが実態であることが多いです。
⚠ だから測る道具を増やしても、変わりません。必要なのは、辞めた3人ぶんの理由を紙に書いて、共通点を1つ見つけることです。それは今日できます。
数を減らす前に、仕事の量を見る
もう1つ、大事な話をします。
辞めた人の穴を、採用で埋めようとすると、たいてい間に合いません。募集をかけても来ない、来ても育つまで半年かかる。その間に、残った人の負担が増えて、次の人が辞めます。
この連鎖を止めるには、先に仕事の量を減らすしかありません。順番は人手不足は“採用”では解決しない。仕事量を減らす3つの順番に書きました。
そして、その人しかできない仕事があると、その人は休めません。属人化は本人をいちばん苦しめます。ほどき方は属人化した業務を仕組みに変えるにテンプレートごと置いてあります。
今日、やること
紙に3人だけ書いてください。
直近で辞めた3人
入社 退職 在籍した月数
① ____________________________
② ____________________________
③ ____________________________
在籍月数が近ければ、そこに原因があります。バラバラなら、個別の事情だった可能性が高い。それが分かるだけで、打つ手が変わります。
率を計算して業界平均と比べるより、この3行のほうが早いです。
⚠ そして、これを書いてみて「思い当たることがある」と感じたなら、もう答えは出ています。あとは手をつけるだけです。応援しています。
よくある質問
定着率はどうやって計算しますか?
期末の在籍者数を期首の在籍者数で割って100を掛けます。たとえば期首30人・期末28人なら93.3%です。新卒定着率のように「入社した人のうち何人残ったか」で見る場合は、分母を入社者数にします。どちらで出したかを毎回そろえてください。年によって計算方法が変わると、比べる意味がなくなります。
従業員30人以下の会社でも、定着率で管理していいですか?
おすすめしません。分母が小さいので数字が跳ねるからです。30人の会社なら1人辞めるだけで3.3%動きます。10人なら10%です。前年より下がったのか、たまたま1人が家庭の事情で辞めただけなのかが、率からは区別できません。小さい会社では、率ではなく「誰が、いつ、なぜ辞めたか」を実数で見るほうが確実です。
率で見ないなら、何を見ればいいですか?
辞めた人の一覧を3年分つくり、入社からの月数を書き足してください。辞める時期が特定の月数に固まっていれば、そこに原因があります。3か月前後なら入口の説明と現実のずれ、1年前後なら成長が見えないこと、3年前後なら次の役割がないことが多いです。数字を1つ追うより、この並びのほうが打ち手に直結します。
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