産廃の収集運搬、1台1日でいくら残っていますか
結論から、いきます。**産廃の収集運搬で利益が残らない会社は、たいてい「1台1日あたり」で見ていません。**会社全体の損益だけを見ていると、稼いでいる車と食いつぶしている車が、平均に隠れて見えなくなります。
車は動いている。売上も去年と同じくらいある。なのに、決算のときに手元に何も残っていない。
これ、社長のせいじゃありません。見ている単位が大きすぎるだけです。
今日は、それを割って見る手順を丸ごと置いていきます。エクセルでできます。
なぜ、会社全体の損益では分からないのか
たとえば、車が4台あるとします。
年間の売上が1億2千万円、経常利益が240万円。利益率2%。「まあ、そんなもんかな」と思いますよね。
ところが1台ずつに割ると、こうなっていることがあります。
| 売上 | 残った額 | |
|---|---|---|
| 1号車 | 4,200万 | +310万 |
| 2号車 | 3,600万 | +180万 |
| 3号車 | 2,700万 | +40万 |
| 4号車 | 1,500万 | ▲290万 |
4号車が、1号車の稼ぎをまるごと食べています。
会社全体で見ているかぎり、この構造は絶対に見えません。「全体では黒字だから」で終わってしまう。平均は、いちばん大事な差を消してしまうんです。
(※ この数字は、構造を見せるための例です。実際の配分はお手元の数字で組み直してください)
何を、どう割ればいいのか
用意するのは、たった3つです。
① 車両ごとの「動いた日数」
これが分母になります。稼働日ではなく、実際に積んで走った日です。車検・点検・待機で動いていない日は分けておきます。
② 車両ごとの「売上」
伝票が車ごとに紐づいていれば、それを足すだけです。紐づいていない場合は、**この機会に紐づけてください。**ここが分からないと、この先ぜんぶ分かりません。
③ お金を、動いたら出るものと、動かなくても出るものに分ける
ここがいちばん大事です。
| 動いたら出る(変動費) | 動かなくても出る(固定費) |
|---|---|
| 燃料 | 車両のリース・減価償却 |
| 処分費 | 自動車保険 |
| 高速代 | 車検・法定費用 |
| その日の作業員の日当・残業 | 常勤者の基本給 |
| 消耗品(ワイヤー、シート等) | 事務所の家賃 |
**処分費を、この左側に置けているかどうか。**ここで結果が変わります。
処分費を右側に置くと、何が起きるか
処分費は「毎月だいたい◯百万」という感覚で捉えている会社が多いです。請求も月まとめで来ますしね。
でも、**処分費は運んだ量に比例して増えるお金です。**左側(変動費)です。
これを右側(固定費)に置くと、こういう勘違いが起きます。
「仕事が減って困る。単価が安くても、とりあえず積んでおこう」
量を増やせば固定費が薄まる——という発想です。製造業ならその通りです。でも産廃の収集運搬では、運んだ分だけ処分費も増えます。
単価の安い案件ほど、売上に対する処分費の比率が高くなります。運べば運ぶほど、手元が痩せていく。
だから、こう置き直してください。
売上 -(燃料 + 処分費 + 高速 + その日の人件費)= 限界利益
**この限界利益が、1台1日あたりでいくらあるか。**それが、その車が今日1日で会社に持ち帰ったお金です。
1台1日あたりで見ると、何が見えるのか
限界利益を、動いた日数で割ります。
1台1日あたりの限界利益 = 年間の限界利益 ÷ 実際に積んで走った日数
これを4台ぶん並べると、同じ会社の中で2倍以上の差がついていることがよくあります。
差がついている理由は、たいてい次の3つのどれかです。
① 単価が違う
同じ量を運んでも、取引先によって単価が違います。何年も前に決めた単価のまま、燃料も処分費も上がっているのに据え置き——というケース。
② 積載率が違う
半分しか積まずに往復している車があります。距離も時間も燃料も、満載のときと同じだけかかります。
③ 距離あたりの処分先が違う
近い処分先と遠い処分先で、往復時間がまったく変わります。1日2便回れる車と、1便で終わる車。
**この3つのどれなのかは、割ってみるまで分かりません。**だから、まず割るんです。
赤字の車が見つかったら、どうするか
ここ、間違えやすいところです。
すぐに止めないでください。
見るのは限界利益です。もし限界利益がプラスなら、その車は**車両費や保険料の一部を負担しています。**止めた瞬間、その負担がまるごと他の車に乗り移ります。
止めるべきなのは、限界利益そのものがマイナスの車です。走れば走るほど現金が減っている状態。これは1日でも早く手を打つ必要があります。
限界利益がプラスで、でも固定費を賄いきれていない車なら、順番はこうです。
- 単価を見直す(いつ決めた単価か。処分費と燃料は当時のままか)
- 積載率を上げる(同方向の案件を組み合わせられないか)
- ルートを組み替える(近い処分先に振り替えられないか)
- それでも駄目なら、はじめて台数を考える
**順番を飛ばさないでください。**いきなり台数を減らすと、売上だけが先に消えて、固定費が残ります。
今日、やること
エクセルを開いて、この5列だけ作ってください。
| 車両 | 積んで走った日数 | 売上 | 燃料+処分費+高速+その日の人件費 | 限界利益 |
|---|
**1年ぶん埋めなくて構いません。直近3か月で十分です。**それでも、差はもう見えます。
伝票が車ごとに紐づいていなくて埋まらない——という場合は、**そこが最初の課題です。**今月から紐づける運用にすれば、3か月後にはこの表が埋まります。
ひとつだけ、先に言っておきたいこと
この数字が悪かったとしても、それは経営が下手だったという話ではありません。
処分費も燃料も人件費も上がりました。単価だけが据え置かれたら、誰がやっても同じことが起きます。構造の問題であって、努力の問題ではないんです。
そして構造の問題は、**構造を見えるようにすれば直せます。**割って、どこで消えているかを特定して、その1点から手をつける。それだけです。
なお、この財務の状態は、産業廃棄物処理業の許可更新のときに「経理的基礎」として問われる部分でもあります。赤字や債務超過で更新に不安がある場合は、赤字・債務超過でも産廃の許可更新はできるに、そのときに必要になる書類と条件をまとめてあります。
限界利益という考え方そのものがはじめてだった方は、限界利益を理解すると、値引きの怖さが分かるを先に読んでいただくと、上の表がすっと入ります。同じことを製造現場でやった例は、町工場の利益が残らない理由にあります。
原価の考え方をもっと広く整理したい場合は、原価計算がどんぶり勘定になっているときもあわせてどうぞ。
まずは、3か月ぶんの表からです。応援しています。
よくある質問
産廃の収集運搬で、原価はどう分ければいいですか?
1台1日あたりに割るのがいちばん分かりやすいです。車両ごとに、動いた日数・積んだ量・運んだ先を並べ、そこに燃料・処分費・人件費・車両費を割り当てます。会社全体の損益では、どの車が稼いでどの車が赤字かが見えません。台と日に割った瞬間に、はじめて差が出ます。
処分費は原価に入れるべきですか?
入れます。しかも変動費として扱ってください。処分費は運んだ量に比例して増えるお金です。これを固定費のように「毎月これくらい」で見ていると、量を増やすほど利益が減る仕事を、増やすほど儲かると勘違いします。実際、単価の安い案件ほど処分費の比率が高く、運べば運ぶほど手元が痩せることがあります。
赤字の車が見つかったら、やめるべきですか?
すぐにやめる判断はしないでください。見るのは限界利益、つまり売上から燃料・処分費・その日の人件費といった「動いたから出たお金」を引いた額です。ここがプラスなら、車両費や保険料の一部を負担しています。止めるとその負担が他の車に乗ります。まず単価と積載率を見直し、それでも限界利益がマイナスなら、はじめて撤退を考える順番です。
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