数字が苦手な社長のための、月次で見る5つの数字

数字が苦手な社長のための、月次で見る5つの数字

結論から、いきます。 経営数字は、5つだけで足ります。売上・粗利・粗利率・固定費・現預金残高。これを毎月、同じ表に横並びで書く。それだけ。

凝った分析はいりません。続けることが、精度に勝ちます。 今日は、その最小の仕組みを丸ごと渡します。

なぜ「数字が苦手」なままで大丈夫なのか?

まず、これだけは言わせてください。数字が苦手なのは、あなたの欠点ではありません。

社長の仕事は、決めることと、動かすことです。会計士になることではない。にもかかわらず「経営者たるもの財務諸表を読めなければ」と言われて、分厚い本を買って、3ページで閉じて、少し落ち込む。——このループ、本当に多いです。

でも考えてみてください。車のエンジン構造を全部知らなくても、運転はできます。 見ているのは速度計と燃料計くらいでしょう。それで日本中どこへでも行ける。

経営も同じです。全部の計器を読む必要はない。「速度」と「燃料」に当たる数字を、いつも同じ場所で見ていればいい。 その5つが今日の話です。

5つの数字は、それぞれ何を教えてくれる?

順番に意味があります。1つずつ、何が分かるのかを見ていきましょう。

① 売上 いちばん分かりやすい数字。ただしこれ単独では何も判断できません。 売上が伸びていても利益が減っている会社は普通にあります。あくまでスタート地点。

② 粗利(売上総利益) 売上 − 売上原価。会社に実際に入ってくる稼ぎです。ここから固定費を払います。社長が本当に追うべきは売上ではなくこちら。「売上が過去最高」より「粗利が過去最高」のほうが、100倍うれしい知らせです。

③ 粗利率 粗利 ÷ 売上 × 100。会社の体力を示す数字です。ここがじわじわ下がっていると、同じ売上でも残るお金が減っていきます。5つの中でいちばん早く異変を知らせてくれるのがこれ。

④ 固定費 その月に出ていった、売上に関係なくかかる費用。人件費・家賃・リース・光熱費など。上がるときは静かに上がります。 気づいたら年間で数百万増えていた、というのがよくある話。

⑤ 現預金残高 月末時点の通帳の合計。会社の酸素です。利益とは別物で、黒字でも減ることがあります。この理由は決算書のどこを見れば、うちの弱点が分かるのかに書きました。

この5つは、それぞれ役割が違います。売上=アクセル、粗利=実際に進んだ距離、粗利率=燃費、固定費=毎月の重り、現預金=燃料。 これだけ見ていれば、たいていの異常は見つかります。

表はどう作る?(エクセル1枚)

作り方はシンプルです。列が月、行が5つの数字。

4月5月6月7月
売上850920880910
粗利272285260264
粗利率32.0%31.0%29.5%29.0%
固定費240245248255
月末現預金1,4801,5101,4201,350

(単位は万円。数字はあくまで説明用の仮の例です)

これだけです。粗利率のセルだけ「=粗利÷売上」の式を入れておけば、あとは3つ打ち込むだけで済みます。

さて、この表を見てください。売上は850→910で伸びています。悪くなさそうに見える。でも——

  • 粗利率が32.0%→29.0%へ、4か月で3ポイント下落
  • 固定費が240→255へ、じわじわ上昇
  • 現預金が1,480→1,350へ、130万円減

売上だけ見ていたら「まあまあ好調」で終わっていた4か月です。5つ並べた瞬間に、3つの警報が鳴っている。 これが横並びの力です。

粗利率が下がっているなら、原因は値引きか原価。原価が上がった分だけ値上げしても、利益は戻らない理由限界利益を理解すると、値引きの怖さが分かる、どちらかに当たりがあるはずです。

何を見て「異変」と判断すればいい?

3か月ぶん並んだら、この4つのサインを探してください。難しい分析はいりません。

サイン1:粗利率が2か月続けて下がっている いちばん重要です。原因は値引きが増えたか、原価が上がったか、安い商品の比率が上がったか。この3つ以外はほぼありませんので、犯人探しは3択です。

サイン2:売上が伸びているのに粗利が伸びていない 「忙しいのに残らない」の典型。無理な受注が混ざっていないか、確認どころです。

サイン3:固定費が3か月連続で増えている 何かが静かに積み上がっています。契約一覧を見返すタイミング。削り方の順番は損益分岐点の出し方と、下げ方に書きました。

サイン4:黒字なのに現預金が減っている 入金と支払いのタイミングがズレています。これは損益では絶対に見えないので、資金繰り表を、エクセルで15分で作るで先を見てください。

サインが出たら、そのときだけ深掘りすればいいんです。毎月ぜんぶを分析する必要はありません。表は警報器で、分析は消火活動。 火が出ていない月は、ただ記録するだけで正解です。

続ける工夫は?(ここがいちばん大事)

正直に言うと、この記事でいちばん大事なのはここです。5つの数字を選ぶことより、12か月続けることのほうが100倍難しい。

続けるための現実的な工夫を4つ。

1. 更新日を決めて、カレンダーに固定する 「毎月10日の朝イチ、15分」のように、時間ごと予定に入れてしまう。気が向いたらやる、は必ず消滅します。

2. 埋まらない月があっても、やめない 試算表が遅れて粗利が埋まらない月もあります。空欄のまま次に進んでください。 完璧を目指した瞬間、その表は死にます。売上と現預金だけでも書いてあれば、価値の半分は残ります。

3. 増やさない 慣れてくると「人件費率も入れよう」「客数も」と言いたくなります。気持ちは分かりますが、増やすと更新が重くなり、やめる確率が上がります。 半年続いてから、1つだけ足す。それくらいで十分。

4. 誰かに見せる 奥さんでも、幹部でも、支援機関の担当者でもいい。見せる予定があると、人は表を埋めます。 これは意志の問題ではなく仕組みの問題です。

売上の中身をもっと知りたくなったら?

5つを半年ほど続けると、必ずこうなります。「粗利率が落ちているのは分かった。で、どの商品なんだ?

そうなったら、そこが次のステップです。ここまで来た社長は、もう数字が苦手ではありません。

順番が大事です。5つの月次表が土台で、詳しい分析はその上に乗せるもの。 土台がないまま凝った分析をしても、比べる相手がいないので何も分かりません。

今日やること

エクセルを新規で開いて、A列に5つの言葉を縦に打ってください。

売上/粗利/粗利率/固定費/月末現預金

そしてB列に、先月の数字を入れる。分かるところだけで構いません。

これで終わりです。3分。今日はそれ以上やらなくていい。

来月、C列に同じものを入れてください。そのとき、あなたは会社の歴史を作り始めています。1年経つと12列。その12列は、どんな高価な経営分析ツールより、あなたの会社をよく知っている表になります。

数字が苦手でいいんです。苦手なまま、5つだけ並べればいい。あなたは経理担当になるんじゃなくて、社長として舵を握るために見るんですから。

大丈夫、できます。応援しています!

よくある質問

月次で見るべき数字は何ですか?

売上・粗利・粗利率・固定費・現預金残高の5つで十分です。この5つを毎月同じ表に横並びで記録するだけで、粗利率の低下や固定費の膨張、資金の目減りといった異変が早い段階で見えます。指標を増やすより、少ない指標を長く並べるほうが、変化を見つける力は高くなります。

試算表が出るのが翌月の後半になります。それでも意味はありますか?

あります。ただし、売上と現預金残高の2つは自社で先に埋められるので、試算表を待たずに記入してください。この2つだけでも早めに並べておけば、資金の細りには気づけます。粗利や固定費は試算表が出てから追記する形で構いません。完璧な同時更新より、続くやり方を優先してください。

数字を並べても、何を判断すればいいか分かりません。

最初は判断しなくて大丈夫です。3か月ぶん並ぶまでは、ただ記録するだけで構いません。3か月あると「上がっている・下がっている・横ばい」が見え始めます。特に粗利率が2か月続けて下がっていたら、値引きが増えたか原価が上がったかのどちらかなので、そこだけ原因を探せば十分です。

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