損益分岐点の出し方と、下げ方

損益分岐点の出し方と、下げ方

結論から、いきます。 損益分岐点は 固定費 ÷ 限界利益率 で出ます。3分あれば計算できます。

でも今日の本題は、出したあとです。その数字を「下げる」打ち手が2つしかないこと、そしてどちらが効くかは会社の構造で決まること。ここを丸ごと渡します。

損益分岐点って、何が分かる数字?

損益分岐点とは、利益がちょうどゼロになる売上高のことです。それを超えれば黒字、下回れば赤字。

なぜこれを知る必要があるのか。理由は1つで、目標の立て方がまるごと変わるからです。

損益分岐点を知らない社長の目標は、こうなりがちです。

「今年は売上1億2,000万円を目指すぞ!」

なぜ1億2,000万円なのか。だいたい「去年より少し上」だからです。根拠がない。だから途中で息切れするし、達成しても利益が残るとは限らない。

一方、損益分岐点を知っている社長の目標はこうです。

「うちは7,500万円で±ゼロ。1,000万円の利益を残すなら、あと2,500万円上乗せして1億円。月あたり約830万円だ」

同じ「頑張ろう」でも、地面が違う。 数字に根拠があると、途中で「今月は足りている/足りていない」の判断ができます。これが効くんです。

計算式は、たった1本

出し方です。式はこれだけ。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率

必要な材料は2つ。

① 固定費 売れても売れなくても毎月出ていく費用の年額です。役員報酬、正社員の給料、法定福利費、地代家賃、リース料、保険料、減価償却費、通信費など。ざっくりでいいので、販管費の合計から始めて構いません。

② 限界利益率 (売上 − 変動費)÷ 売上。変動費は、売れた数に比例して増える費用(材料費・仕入原価・外注費・販売手数料など)です。ここが分からない人は先に限界利益を理解すると、値引きの怖さが分かるを読んでください。5分で分かります。

では例で(説明用の仮の数字です)。

  • 年間売上:1億円
  • 変動費:6,000万円 → 限界利益率40%
  • 固定費:3,000万円

損益分岐点 = 3,000万円 ÷ 0.4 = 7,500万円

つまりこの会社は、年間7,500万円売れば±ゼロ。実際は1億円売っているので、超過分2,500万円 × 40% = 1,000万円の利益が出ている計算になります。

月で見たいなら12で割るだけ。月625万円が分岐点です。この数字を頭に入れておくと、月次の売上を見た瞬間に「今月は黒字だ」が分かる。地味に強い武器です。

数字を出したあと、下げ方は2つしかない

さて本題です。損益分岐点が7,500万円と分かった。じゃあどうするか。

式を見てください。固定費 ÷ 限界利益率。分子を小さくするか、分母を大きくするか。打ち手は物理的にこの2つしかありません。

やってみましょう。

打ち手A:固定費を10%削る(3,000万円 → 2,700万円) 2,700 ÷ 0.4 = 6,750万円(750万円ダウン)

打ち手B:限界利益率を40% → 44%に上げる 3,000 ÷ 0.44 = 約6,818万円(約682万円ダウン)

この会社では、固定費10%削減のほうがやや効いています。でもこれは会社によって逆転します。 そこが今日いちばん大事なところです。

うちはどっちを狙うべき?

判断の目安を置いておきます。

自社の状態効きやすい打ち手理由
固定費が重い(設備・店舗・正社員が多い)固定費を削る分子が大きいので、同じ%削減の効果額が大きい
限界利益率が低い(薄利多売・外注比率が高い)率を上げる分母が小さいので、少し上げるだけで割り算の答えが大きく動く
どちらも中くらい率を上げる削る余地は有限だが、率の改善は上限がない

ただ、机上で悩むより手を動かすほうが早いです。エクセルに式を1本入れて、両方1%ずつ動かしてみてください。 どちらが大きく下がるかが一目で分かります。それがあなたの会社の主戦場です。

もう1つ、忘れがちな観点。固定費削減は上限がありますが、限界利益率の改善には上限がありません。 家賃をゼロにはできませんが、値決めや商品構成の改善はずっと続けられます。だから短期は固定費、中長期は率、という組み合わせが現実的です。

固定費を削るとき、どこから手をつける?

「固定費を削れ」と言われて、いきなり給料に手をつけてはいけません。順番があります。

第1段階:売上に紐づいていない費用

  • 使っていないリース・サブスク・レンタル
  • 効果を測っていない広告や掲載料
  • 惰性で更新している保守契約・会費・保険

ここは削っても売上が落ちません。リスクゼロで分岐点が下がる、いちばんおいしいゾーンです。しかも一度やれば12か月効き続けます。

第2段階:変えられる条件

  • リース・保険の見直し、契約の乗り換え
  • 家賃や更新条件の相談
  • 支払い方法の変更(年払い→月払いなど、資金繰りに効く)

第3段階:やり方そのものの見直し

  • 業務の進め方を変えて残業を減らす
  • 外注と内製の組み替え

そして手を出す前に慎重に考えるべきゾーンがあります。主力商品の販促費、品質に直結する費用、人の育成。ここを切ると、その期は数字が良く見えても、翌期に必ず跳ね返ります。削減と縮小は別物です。

自社の固定費の中身が把握できていないなら、決算書のどこを見れば、うちの弱点が分かるのかの「固定費を3つに割る」からどうぞ。

限界利益率を上げる、現実的な手は?

もう片方です。率を上げるには、売価を上げるか、変動費を下げるか。

売価側

  • 値上げ(率へのインパクトは最大。ただし全品一律にしない)
  • 高い商品が選ばれる見せ方に変える
  • 値引きをやめる/条件付きにする

値引きをやめるだけでも率は動きます。10%の値引きが限界利益をどれだけ削るかは限界利益を理解すると、値引きの怖さが分かるの表を見てください。あそこを一度見ると、安易な値引きができなくなります。

変動費側

  • 仕入先の見直し・まとめ発注
  • 歩留まり改善、ロス・廃棄の削減
  • 過剰な梱包・検査・付帯サービスの廃止
  • 外注していた工程の一部内製化(逆もあり)

商品構成側 これが見落とされがちですが、効きます。率の高い商品の比率を上げるだけで、会社全体の率は上がります。 1つずつの価格を触らなくてもいい。どの商品がどれだけ稼いでいるかはABC分析のやり方を、社長向けに世界一やさしくで30分もあれば見えます。

出した数字は、どう使い続ける?

損益分岐点は、一度出して終わりでは意味が半減します。使いどころは3つ。

① 月次のチェックに使う 月の分岐点(年額÷12)を頭に入れておき、毎月の売上と比べる。数字を追う習慣は数字が苦手な社長のための、月次で見る5つの数字の形にしておくと続きます。

② 投資判断に使う 新しい設備や人を入れると固定費が増えます。「月20万円の固定費が増える=分岐点が月50万円上がる(率40%なら)」と即座に換算できる。投資の是非が、感覚ではなく数字で言えるようになります。

③ 計画書に使う 銀行や補助金に出す事業計画書で、根拠のある目標として書けます(事業計画書は誰のために書くのか)。「なぜこの売上目標なのか」に答えられる社長は、それだけで信用されます。

今日やること

電卓を出して、1回だけ割り算してください。

年間の固定費 ÷ 限界利益率 = 損益分岐点売上高

そして12で割って、月いくらかを出す。この2つの数字を、手帳かスマホのメモに書いてください。

その数字が、今の売上より高かったとしても——落ち込まないでください。赤字だから出す数字ではなく、どこを直すか決めるために出す数字です。分かった時点で、打ち手は2つに絞られています。固定費か、率か。それだけです。

見えない不安と戦うのは、しんどい。でも見える課題は、順番に片づけられます。大丈夫、あなたはもう地図を手に入れました。応援しています!

よくある質問

損益分岐点はどうやって計算しますか?

固定費 ÷ 限界利益率 で出ます。限界利益率は(売上−変動費)÷売上。たとえば固定費が年3,000万円、限界利益率が40%の会社なら、3,000万円÷0.4=7,500万円が損益分岐点売上高です。この金額を超えたところから利益が出始めます。月単位で見たいなら、年間の数字を12で割れば同じ考え方で使えます。

損益分岐点を下げるには、固定費を削るのと粗利率を上げるの、どちらが効きますか?

自社の構造によります。固定費が重い会社(設備・店舗・人員が多い)は固定費削減が効きやすく、限界利益率が低い会社(薄利多売・外注比率が高い)は率の改善が効きやすい傾向があります。両方を1%ずつ動かしてみて、損益分岐点がより大きく下がるほうを主戦場にするのが現実的です。

固定費を削ると、売上まで落ちませんか?

その危険はあります。だから削る前に「売上を作っている費用か、そうでないか」で仕分けてください。効果を測っていない広告や使っていないサブスク、惰性の保守契約は売上に紐づいていないので、削っても売上は落ちません。逆に主力商品の販促費や品質に直結する費用を切ると、翌期に跳ね返ります。

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