決算書のどこを見れば、うちの弱点が分かるのか

決算書のどこを見れば、うちの弱点が分かるのか

結論から、いきます。 決算書は、全部読まなくていいです。社長が見るべきは3か所だけ。①粗利率の推移、②固定費の中身、③現預金が月商の何か月分か。この3つで、あなたの会社の弱点はだいたい見えます。

今日は、その3か所の見方を丸ごと渡します。電卓ひとつ、30分あれば終わります。

なぜ決算書は「分かった気がしない」のか?

税理士さんから決算書を受け取って、説明を聞いて、「はい、分かりました」と言いながら——正直、あんまり分かっていない。

これ、めちゃくちゃ多いです。そしてあなたの理解力の問題ではありません。

理由は2つあります。

1つ目。決算書は、社長のために作られていない。 決算書はもともと、税務署や銀行など「外の人」に会社の状態を報告するための書類です。だから「どこを改善すべきか」という順番では並んでいません。読んで行動に移りにくいのは、当たり前なんです。

2つ目。一度に見る項目が多すぎる。 勘定科目が何十個も並んでいて、どこが大事なのか印がついていない。全部を平等に見ようとすると、脳が疲れて何も残らない。

だから逆をやります。見る場所を3つに絞る。 絞ったぶん、毎年同じ場所を見られる。同じ場所を見続けると、変化に気づけるようになる。これが社長の決算書の読み方です。

①粗利率の推移——3期並べると、何が見える?

まず1か所目。**粗利率(売上総利益率)**です。

計算は簡単で、こうです。

粗利率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100

損益計算書の上のほうに「売上高」と「売上総利益」が並んでいるので、割るだけ。10秒です。

大事なのはここから。3期分、横に並べてください。

たとえば、こんなふうに(数字はあくまで例です)。

3期前2期前前期
売上高1億円1億800万円1億1,500万円
粗利率32.0%30.5%28.8%

このケース、売上は毎年伸びています。外から見れば「好調な会社」です。でも粗利率は3年で3.2ポイント落ちている。

これが何を意味するか。同じ1円を売るのに、手元に残る割合が減り続けているということです。売上が伸びているぶん忙しさは増しているのに、利益はついてきていない。「忙しいのに残らない」の正体は、たいていここにあります。

粗利率が下がる原因は、大きく分けて2つしかありません。

  • 売る側:値引きが増えた/単価の低い商品の比率が上がった
  • 仕入れ側:原価が上がったのに、売価が追いついていない

後者に心当たりがあるなら、原価が上がった分だけ値上げしても、利益は戻らない理由を読んでみてください。同額だけ値上げしても率は戻らない、という算数の話です。前者なら安売りが利益を”溶かす”仕組みが効きます。

業種平均と比べる必要はありません。 比べるのは去年の自分です。自分より下がっているかどうか。それだけで打ち手は決まります。

②固定費の中身——「多い」ではなく「何が多い」を見る

2か所目は固定費です。販売費及び一般管理費、いわゆる販管費のところ。

ここでやりがちなのが、合計額だけ見て「うーん、経費が多いな」で終わること。それだと動けません。中身を3つに割ってください。

  1. 人件費(役員報酬・給料・賞与・法定福利費など)
  2. 場所の費用(地代家賃・リース料・水道光熱費など)
  3. その他(広告宣伝費・旅費・消耗品・支払手数料など)

そして、それぞれが販管費全体の何%かを出します。ここも3期並べると効きます。

多くの中小企業では、1の人件費が最大の塊になります。ここが大きいこと自体は悪ではありません。問題は、増え方が売上や粗利の伸びと釣り合っているかです。粗利が横ばいなのに人件費だけ増えているなら、一人あたりの生み出す粗利が下がっている。この見方は一人あたり生産性の出し方と、上げ方に詳しく書きました。

もう1つ、必ずチェックしてほしいのが**「なんとなく続いている固定費」**です。

  • 使っていないリース・サブスクの契約
  • 効果を測っていない広告や掲載料
  • 惰性で更新している保守契約や会費

固定費のいやらしさは、一度決めたら毎月自動で出ていくところにあります。売上を増やす努力は毎回ゼロからですが、固定費の削減は一度やれば12か月効きます。同じ労力なら、こっちのほうが効率がいいんです。

とはいえ、削れば削るほどいいわけでもありません。売上を作っている費用まで切ると、翌年に跳ね返ってきます。判断の順番は損益分岐点の出し方と、下げ方のほうで整理しています。

③現預金は月商の何か月分ある?

3か所目。ここがいちばん見落とされます。

貸借対照表の左上、「現金及び預金」を見てください。そして、こう計算します。

現預金 ÷(年間売上高 ÷ 12)= 月商の何か月分

たとえば年商1億2,000万円(月商1,000万円)の会社で、現預金が1,500万円なら、1.5か月分です。

なぜこれを見るのか。利益が出ていることと、お金があることは別問題だからです。

損益計算書は「売上が立った時点」で利益を計算します。でも実際の入金は1〜2か月後。その間にも仕入れ代金や給料は出ていく。だから黒字なのに資金が苦しいという状態が普通に起こります。

この「利益と現金のズレ」に気づかないまま設備投資や増員をすると、いちばん危ない橋を渡ることになります。月ごとの現金の動きを先読みする方法は、資金繰り表を、エクセルで15分で作るにそのまま使える手順を置きました。

安全水準は業種や回収サイトによって大きく変わるので、「何か月分あれば安心」と一概には言えません。見るべきは水準より推移です。 3期並べて減り続けているなら、たとえ黒字でも手を打つタイミングです。

この3つで、弱点はどう組み合わさる?

3か所を出したら、組み合わせて読みます。パターンはだいたいこう分かれます。

粗利率固定費現預金起きていること
下がっている横ばい減っている値決め・原価の問題。まず粗利率を戻す
横ばい増えている減っている使いすぎ。固定費の棚卸しから
上がっている横ばい減っている回収と支払いのズレ。資金繰り表が必要
横ばい横ばい増えている健全。次は成長投資を考えられる状態

同じ「お金がない」でも、原因がまったく違う。 ここが分かるだけで、来期にやることは変わります。「とにかく売上を増やそう」で全部を解決しようとするのが、いちばん遠回りなんです。

税理士の説明を待たずに見るべき理由

誤解のないように書いておくと、税理士さんは味方です。税務の正確さは、専門家に任せるべき領域です(細かい規定の判断は必ず顧問税理士に確認してください)。

ただ、「うちの弱点はどこか」を決めるのは社長の仕事です。理由はシンプルで、決算書に出てこない情報を持っているのが社長だけだからです。

「なぜ去年、粗利率が落ちたのか」——決算書には書いてありません。でも社長なら「あの大口を取るときに無理をした」と思い当たる。その紐づけができるのは、現場を知っている人だけです。

数字は質問の入り口です。答えは社長の頭の中にあります。だから、説明を受ける前に自分で3か所を見ておく。そうすると、面談の質が一気に変わります。「どうでしたか?」ではなく「粗利率が2ポイント落ちてるんですが、要因ってどう見ますか?」と聞ける。同じ時間で、得られるものがまったく違ってきます。

そして、この見方は年1回だけではもったいない。同じ数字を毎月見るなら数字が苦手な社長のための、月次で見る5つの数字の形にしておくと、決算を待たずに異変に気づけます。

今日やること

今日は1つだけ。過去3期分の決算書を並べて、粗利率だけ計算してください。

売上総利益 ÷ 売上高。3回やるだけ。5分で終わります。

3つの数字が並んだら、上がっているか、下がっているか、それを見てください。

下がっていたなら、それは悪い知らせではありません。気づけたという良い知らせです。気づかないまま5年経つのが、いちばん怖い。あなたは今日、それを回避しました。

決算書は成績表じゃなくて、地図です。責められるために見るんじゃなくて、次にどっちへ行くか決めるために見る。大丈夫、読めます。応援しています!

よくある質問

決算書のどこから見ればいいですか?

3か所で十分です。①粗利率の推移(3期分並べる)②固定費の中身(人件費・地代家賃・その他に分ける)③現預金が月商の何か月分あるか。この3つは電卓だけで出せて、会社の弱点がどこにあるかをほぼ言い当てます。細かい比率分析は、そのあとで構いません。

粗利率は何期分見ればいいですか?

3期分です。1期だけ見ても「高いのか低いのか」が判断できませんが、3期並べると自社の中での変化が見えます。業種平均と比べるより、去年・一昨年の自分と比べるほうが実用的です。0.5ポイントでも下がり続けているなら、値決めか原価のどちらかで何かが起きています。

現預金は何か月分あれば安心ですか?

一般論として、月商の1〜2か月分を下回ると資金繰りに気を配る必要が出てきます。ただし適正水準は業種・回収サイトで大きく変わるため、絶対的な安全ラインはありません。大事なのは水準そのものより推移で、3期並べて減り続けているなら、利益が出ていても手を打つサインです。

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