資金繰り表を、エクセルで15分で作る
結論から、いきます。 資金繰り表は、4行あれば成立します。月初残高+入金予定−出金予定=月末残高。それだけ。会計ソフトも簿記の知識もいりません。エクセル1枚、15分です。
「黒字なのに、なぜか通帳が減っていく」——この気持ち悪さの正体を、今日はっきりさせましょう。
なぜ黒字なのに、お金が減るのか?
まずここを腹落ちさせないと、資金繰り表を作る気になれません。
決算書の利益は、売上が立った時点で計算されます。商品を納品して請求書を出したら、その月の売上です。まだ1円も入っていなくても、帳簿上は売上。
でも現実はどうでしょう。
- 3月に納品 → 3月末締め → 入金は4月末や5月末
- なのに、材料の仕入れ代金は3月中に払う
- 給料も家賃も、毎月きっちり出ていく
つまり、出ていくのが先で、入ってくるのが後。売上が伸びれば伸びるほど、この先出し分が膨らみます。だから「忙しくなったのに資金が苦しい」という、一見おかしなことが起きるんです。
これは経営が下手だからではありません。商売の構造がそうなっているだけです。だから構造に合わせた道具——つまり資金繰り表——が要る。それだけの話です。
決算書側でこのズレに気づく方法は決算書のどこを見れば、うちの弱点が分かるのかの「現預金の月商比」で書きました。あちらが健康診断なら、資金繰り表は天気予報です。
最小構成は、たったこの4行
では作ります。エクセルを開いてください。列は月、行は次の4つです。
| 8月 | 9月 | 10月 | |
|---|---|---|---|
| ① 月初残高 | 1,500 | ||
| ② 入金予定 | 900 | 1,100 | 800 |
| ③ 出金予定 | 1,050 | 1,000 | 1,000 |
| ④ 月末残高(①+②−③) | 1,350 |
(単位は万円。数字はあくまで説明用の仮の例です)
ポイントは1つだけ。④の月末残高が、翌月の①月初残高になる。エクセルなら、9月の①のセルに「=8月の④」と入れるだけです。
これで完成。本当にこれだけです。
「もっと項目を細かく分けなくていいの?」と思うかもしれません。いりません。 細かくすると、作るのに時間がかかり、更新が面倒になり、2か月で使わなくなります。続かない完璧な表より、雑でも毎月更新される表。会社を守るのは後者です。
入金予定は、どうやって埋める?
②の入金予定です。ここは「いつ入るか」で書きます。「いつ売れたか」ではありません。ここを間違えると、ただの売上計画になってしまいます。
埋め方の手順はこうです。
- すでに出した請求書を並べる(請求済み=ほぼ確実に入る)
- 取引先ごとの入金サイトを確認する(月末締め翌月末払い、など)
- その条件どおりに、入る月の欄に書き込む
たとえば6月末締め・翌月末払いの取引先なら、6月の売上は7月の入金欄に入ります。ここを機械的にやるだけで、精度はぐっと上がります。
まだ受注していない先の分は、少なめに見積もる。ここは強気にしない。入金は少なめ、出金は多めが鉄則です。
現金商売の場合は、日々の売上がそのまま入金なので、直近の実績月平均を置けば十分です。売上のバラつきが大きい業種なら、エクセルで始める売上分析。社長がまず見るべき”3つの数字”の考え方で、月ごとの傾向をつかんでから置くとブレが減ります。
出金予定に、絶対入れ忘れてはいけないものは?
③の出金予定です。ここが事故の起きやすい行です。
毎月出ていくものは、たいてい忘れません。仕入れ、給料、家賃、水道光熱費、通信費。問題はたまにしか出ないのに金額が大きいものです。
チェックリストとして置いておきます。
- 賞与(夏・冬)
- 納税(法人税・消費税の中間納付など。時期は必ず顧問税理士に確認を)
- 社会保険料の年度更新・労働保険料
- 設備の支払い・リースの一括分
- 年払いの保険料・車検・更新料
- 借入の返済(元金部分。これを忘れる人が本当に多い)
このへんが重なる月が、たいてい一番危ない月になります。そして重なる月は、毎年だいたい同じです。だから一度書き出せば、翌年からは分かっている前提で動けます。
「うわ、この月ヤバい」と紙の上で気づけるのが、資金繰り表の全価値です。通帳で気づくと手遅れ、表で気づけば2か月ある。 この差はとんでもなく大きい。
3か月先まででいい理由は?
「どうせ作るなら1年分」と思う気持ち、分かります。でもおすすめしません。
理由は2つ。
1つ目、精度が落ちる。 4か月先の受注なんて、たいていの会社では確定していません。当てられない数字を埋める作業は、単なる作文です。
2つ目、続かない。 12列を毎月更新するのは、正直しんどい。しんどい仕組みは、必ずやらなくなります。
3か月あれば、資金が細る月を1〜2か月前に発見できる。これが目的なので、それで足りるんです。慣れて、更新が苦にならなくなってから6か月に伸ばせばいい。順番はそっちです。
作ったあと、危ない月が見つかったら?
月末残高がマイナスに近づく月を見つけたとします。慌てないでください。見つかった時点で、あなたは勝っています。 打ち手は複数あります。
① 入りを早める 締め日・支払日の条件を相談する、前受金や着手金をもらう形にする、請求書を出すタイミングを早める。意外と「請求が遅れているだけ」というケースがあります。
② 出を遅らせる・ならす 大きな支払いを分けられないか相談する。年払いを月払いに変える。すぐ効くのはここです。
③ 出を減らす 使っていないリース・サブスク・保守契約を止める。固定費の見直しは一度やれば毎月効きます。何から削るかの判断は損益分岐点の出し方と、下げ方に整理してあります。
④ 事前に借りる これがいちばん大事な話かもしれません。資金は、苦しくなる前に相談するほうが通りやすい。 資金繰り表を持っていけば、「なぜ・いつ・いくら必要か」が一目で伝わります。ちなみに、この表は銀行向けの事業計画書とセットにすると説得力が跳ね上がります(事業計画書は誰のために書くのか)。
順番としては①②③を先に検討して、それでも足りないなら④。ただ、④を「最後の手段」だと思いすぎないことも大事です。余裕があるうちに動くほうが、条件はよくなります。
今日やること
エクセルを開いて、4行だけ作ってください。 月初残高・入金予定・出金予定・月末残高。列は今月から3か月分。
まず埋めるのは今日の通帳残高、それだけでいい。残りは分かるところから、ざっくりで構いません。
15分後、あなたの手元には「3か月後、いくら残っているか」の数字があります。その数字が思ったより少なくても、落ち込まないでください。知らずに3か月過ごすことに比べたら、桁違いにマシです。
お金の不安の正体は、たいてい「金額」ではなく「見えないこと」です。見えた瞬間、それはただの解くべき課題になります。大丈夫、間に合います。応援しています!
よくある質問
資金繰り表と損益計算書は何が違うのですか?
損益計算書は「売上が立った時点」で利益を計算しますが、資金繰り表は「お金が実際に動いた日」で見ます。売上が立ってから入金まで1〜2か月かかる会社では、この2つは別の動きをします。だから黒字なのに現金が足りない、という状況が普通に起こります。利益は成績、現金は酸素だと思ってください。
資金繰り表は何か月先まで作ればいいですか?
まずは3か月先までで十分です。それ以上先は予測の精度が落ちますし、作るのがしんどくなって続きません。3か月あれば、資金が細くなる月を1〜2か月前に見つけられます。手を打つ時間としては、これで足ります。慣れたら6か月に伸ばせばいい話です。
入金や支払いの予定が正確に分からないときはどうすればいいですか?
ざっくりで構いません。入金は少なめ、出金は多めに置くのがコツです。資金繰り表の目的は正確な予測ではなく「危ない月を早く見つけること」なので、悲観側に寄せておけば役割は果たせます。1円単位で合わせようとして作るのをやめてしまうのが、いちばんもったいないパターンです。
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