固定費と変動費の分け方。人件費や売上原価は業種で決まる

固定費と変動費の分け方。人件費や売上原価は業種で決まる

結論から、いきます。固定費と変動費の分け方で迷いやすい人件費と売上原価は、業種で入る場所が決まっています。

変動費:売上や生産量に比例して増える費用(材料費・仕入・外注費など)
固定費:売上がゼロでもかかる費用(家賃・減価償却費・多くの人件費など)

分け方は2つあります。勘定科目ごとに決める方法と、月々の実績から計算で分ける方法です。

そして、製造業で「売上原価は全部変動費」とすると、損益分岐点を低く見誤ります。今日は、中小企業庁の資料にある業種別の基準と、実績から分ける手順、分け方を間違えたときに何がずれるかまで置いていきます。

固定費と変動費は、どう分ければいいのか

やり方は2つです。

方法やり方向いているとき
勘定科目で分ける決算書の科目ごとに、固定費か変動費かを決める年に1回、決算書で損益分岐点を出すとき
実績から計算で分ける月々の売上と費用の動きから、比例する部分としない部分を出す1つの科目に固定と変動が混ざっているとき

まずは勘定科目で分けてください。中小企業の多くは、これで十分に判断できます。科目の中身が混ざっていて分けにくいときだけ、実績から計算します。

業種別の分け方の基準は、あるのか

あります。中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」の財務診断モデルに、同庁編「中小企業の原価指標」(平成15年度調査)の費用分解基準が転記されています。主なものを抜き出すと、こうです。

製造業

区分主な科目
変動費直接材料費、買入部品費、外注費、間接材料費、その他直接経費、重油等燃料費、当期製品仕入原価 など
固定費直接労務費、間接労務費、福利厚生費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、水道光熱費、支払運賃、荷造費、消耗品費、広告費、宣伝費、役員給料手当、支払利息 など

卸・小売業

区分主な科目
変動費売上原価、支払運賃、支払荷造費、支払保管料 など
固定費販売員給料手当、広告宣伝費、役員(店主)給料手当、減価償却費、土地建物賃借料、光熱水道料、支払利息 など

建設業

区分主な科目
変動費材料費、労務費、外注費、仮設経費、運搬費、機械等経費、設計費 など
固定費現場従業員給料手当、地代家賃、保険料、役員給料手当、減価償却費、広告宣伝費、支払利息 など

⚠ 表は主な科目の抜粋です。全科目と、卸売業で車両燃料費・保険料を半分ずつ分ける扱いなどは、中小企業庁「5.4 直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順」で確かめてください。

同じ「運賃」でも、製造業では固定費、卸・小売業では変動費です。同じ科目名で入る場所が変わるので、他の業種の一覧をそのまま使うとずれます。

どちらか分からない費用は、固定費に入れてください。同じ資料にも「固定費に算入しておけば固めの計算が出来ます」とあります。固定費を多めに見ると損益分岐点が高めに出るので、見込みを甘くせずに済みます。

人件費は、固定費か変動費か

多くの業種で固定費です。上の基準でも、製造業の直接労務費・間接労務費、卸・小売業の販売員給料手当は固定費に入っています。売上が1割減っても、給料は1割減らないからです。

例外は建設業です。基準では、建設業の「労務費」は変動費に入っています。工事の量に応じて増減する費用と見ているためと考えられます。一方で、同じ建設業でも「現場従業員給料手当」は固定費です。

⚠ パートの時間を売上に合わせて毎月調整している会社なら、その分を変動費として扱うこともできます。大事なのは、一度決めた分け方を毎年そろえることです。年によって入れる場所が変わると、損益分岐点の変化が「経営が変わったから」なのか「分け方を変えたから」なのか区別できません。

売上原価は、固定費か変動費か

卸売業・小売業なら変動費です。仕入れた商品が売れた分だけ、原価になるからです。

製造業では、売上原価の中に両方が混ざっています。材料費や外注費は変動費、工場の人の給料(労務費)や機械の減価償却費は固定費です。ここを丸ごと変動費にすると、判断を誤ります。

例で出します(説明用の数字です。単位は万円。販管費はすべて固定費とします)。

項目金額区分
売上高10,000
売上原価:材料費4,000変動費
売上原価:外注費1,000変動費
売上原価:労務費1,500固定費
売上原価:減価償却費500固定費
販管費2,500固定費
営業利益500

売上原価を丸ごと変動費にした場合と、正しく分けた場合を比べます。

丸ごと変動費正しく分けた
変動費7,0005,000
固定費2,5004,500
限界利益率30%50%
損益分岐点売上高約8,3339,000
丸ごと変動費:2,500 ÷ 0.3 ≒ 8,333万円
正しく分けた:4,500 ÷ 0.5 = 9,000万円

今の売上1億円では、どちらでも営業利益は500万円です。違いが出るのは、売上が動いたときです。

売上が1割減って9,000万円になったら
丸ごと変動費:9,000 × 0.3 − 2,500 = 200万円の黒字(に見える)
正しく分けた:9,000 × 0.5 − 4,500 = 0円

「1割減っても200万円残る」と思っていたら、実際は利益ゼロです。固定費を小さく見積もったぶん、売上が減ったときの落ち方を甘く見ています。

損益分岐点の出し方とグラフの読み方は損益分岐点の計算式に、限界利益の考え方は限界利益と値引きの関係に書きました。

実績の数字から分けるには、どうすればいいのか

科目の中に固定と変動が混ざっているときは、月々の実績から計算します。

いちばん簡単なのは、売上が最も多い月と最も少ない月の2点を使う方法です(高低点法)。

例で出します(説明用の数字です)。

売上高費用の合計
売上が最も多い月1,000万円850万円
売上が最も少ない月600万円650万円
変動費率 =(850 − 650)÷(1,000 − 600)= 200 ÷ 400 = 0.5
月の固定費 = 850 − 1,000 × 0.5 = 350万円

売上が400万円増えたとき、費用は200万円増えています。だから費用の半分は売上に比例して動き、残りの350万円は売上に関係なくかかっている、と読みます。

2点だけだと、たまたまの月に引っぱられます。賞与の月や、大きな修繕があった月は外してください。

⚠ Excelがあるなら、12か月分を使うほうが確かです。A列に月々の売上、B列に月々の費用を入れて、次の2つの関数を使います。

変動費率 :=SLOPE(B2:B13, A2:A13)
月の固定費:=INTERCEPT(B2:B13, A2:A13)

製造業で品目ごとの原価を材料費・加工費・段取り費に分けて出す手順は、原価計算をエクセルでにまとめています。

今日、やること

決算書の損益計算書(製造業なら製造原価報告書も)を出して、金額の大きい順に5科目だけ分けてください。

科目 ________:______ 万円
 → 固定費 / 変動費 / 分からない

科目 ________:______ 万円
 → 固定費 / 変動費 / 分からない

(5科目まで)

「分からない」は、いったん固定費に入れてください。それで損益分岐点が高めに出ても、困ることはありません。

分けてみて「思っていたより固定費が大きい」と感じても、気にしないでください。固定費の大きさが金額で見えた時点で、売上がいくらを下回ると危ないかが分かります。応援しています。

よくある質問

固定費と変動費はどうやって分けますか?

方法は2つです。1つは勘定科目ごとに固定費か変動費かを決める方法で、中小企業庁の資料に業種別の基準があります。もう1つは、月々の売上と費用の実績から、売上に比例して増える部分と増えない部分を計算で分ける方法です。Excelなら、12か月分の売上と費用を並べて、SLOPE関数で変動費率、INTERCEPT関数で月の固定費を出せます。

人件費は固定費ですか、変動費ですか?

多くの業種では固定費です。中小企業庁の資料(中小企業の原価指標の費用分解基準)では、製造業の直接労務費・間接労務費も、卸・小売業の販売員給料手当も固定費に入っています。ただし建設業では「労務費」が変動費、「現場従業員給料手当」が固定費に分類されています。同じ人にかかる費用でも、科目によって入る場所が変わります。

売上原価は固定費ですか、変動費ですか?

卸売業・小売業では、売上原価は変動費です。製造業では、売上原価の中に材料費や外注費(変動費)と、労務費や減価償却費(固定費)が混ざっています。製造業で売上原価を丸ごと変動費にすると、固定費が小さく見え、損益分岐点を実際より低く見誤ります。

固定費か変動費か分からない費用はどうすればいいですか?

固定費に入れておくのが安全です。中小企業庁の資料でも、不明な費用は固定費に算入しておけば固めの計算ができると書かれています。固定費を多めに見ると、損益分岐点は高めに出るので、利益が出る見込みを甘く見ることを避けられます。一度決めた分け方は、毎年そろえてください。

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