事業計画書の書き方と記入例。数字は取引先別に積み上げる
結論から、いきます。事業計画書でいちばん差が出るのは、文章ではなく数値計画です。
書く項目は8つあります。でも、読む人がいちばん時間をかけるのは最後の数字です。そして、通らない計画書の数字は、たいてい「前年比5%増」のような率で作られています。
率で作った数字は、「なぜ5%なのか」と聞かれたときに答えられません。取引先別・商品別に積み上げた数字なら、答えられます。
今日は、8項目の記入例と、すでに営業している会社の3年分の数値計画を積み上げで作る手順まで置いていきます。
事業計画書には、何を書けばいいのか
8項目です。提出先に様式があっても、中身はほぼこの8つに収まります。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| ① 会社と事業の概要 | 何をしている会社か、沿革、従業員数、直近の売上と利益 |
| ② 商品・サービス | 何を売っているか。売上の大きい順に |
| ③ 誰に売るか | 取引先・客層。売上の何割が誰からか |
| ④ 選ばれる理由 | なぜ他ではなく自社に頼むのか |
| ⑤ 市場と競合 | 取引先の業界の動き、競合との違い |
| ⑥ 売り方 | 新しい取引先をどう増やすか、既存をどう伸ばすか |
| ⑦ 体制 | 誰が何を担当するか、足りない人・設備 |
| ⑧ 数値計画 | 3〜5年分の売上・原価・経費・利益・返済 |
①〜⑦は、⑧の数字の根拠です。「⑥で新規を1社増やす」と書いたなら、⑧の売上にその1社が入っていなければいけません。文章と数字がつながっているかが、読む人がいちばん見るところです。
⚠ 誰に出すかで、重みを置く項目が変わります。金融機関は返済、補助金は審査項目、自分用は明日の行動です。読み手ごとの違いは事業計画書は誰のために書くのかに書きました。
事業計画書は、誰が、何で書くのか
書くのは社長です。形を整えるのは人に頼めても、数字の根拠を答えられるのは社長だけだからです。金融機関の面談でも、書いた本人が数字を説明できるかが見られます。
| 部分 | 道具 | 理由 |
|---|---|---|
| ①〜⑦の文章 | Word | 見出しと表を入れやすい |
| ⑧ 数値計画 | Excel | 前提を変えると利益や返済が自動で変わるようにできる |
⚠ 数値計画は、数字を直接打ち込まずに計算式でつないでください。「新規の取引先が1年遅れたら」と前提を1か所変えるだけで、3年分の利益が変わるようにしておくと、面談で聞かれたときにその場で答えられます。
起業する人向けの書式と作成例(飲食・小売・サービス業)は、中小機構のJ-Net21「事業計画書の作成例」で公開されています。
各項目は、どう書けばいいのか(記入例)
説明用の架空の会社で書きます。金属部品の加工会社、従業員12人、年商2億5,000万円です。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| ① 概要 | 自動車・産業機械向けの金属部品の切削加工。創業30年、従業員12人。今期売上2億5,000万円、経常利益700万円 |
| ② 商品 | 小ロット・多品種の切削部品が売上の9割。試作品が1割 |
| ③ 誰に | 上位3社で売上の全額。A社48%、B社32%、C社20% |
| ④ 選ばれる理由 | 図面を受けてから試作品を出すまでが早い。A社の試作の多くを受けている |
| ⑤ 市場と競合 | A社の業界は電動化で部品点数が減る見込み。一方で試作の依頼は増えている |
| ⑥ 売り方 | 試作の実績を使って、量産に移る段階の取引先を増やす。1年目は試作中のD社の量産を受ける |
| ⑦ 体制 | 工場長が試作の窓口を兼務。人は増やさず、段取り時間を短くして窓口の時間を空ける |
| ⑧ 数値計画 | 下の表 |
③と⑤がつながっているのが、この計画の要です。A社に売上の約半分を頼っていて、そのA社の業界が変わる。だから⑥で取引先を増やす。「なぜ売上を増やすのか」の理由が、前の項目に書いてある状態です。
⚠ 「高品質」「丁寧な対応」は、④に書いても理由になりません。数字や事実で書けることを探してください。「試作品を出すまでが早い」なら、実際に何日かを書きます。
数値計画は、どう作ればいいのか
売上は、取引先別に積み上げます。「全体で前年比5%増」とは書きません。
売上の内訳(万円)
| 取引先 | 今期 | 1年目 |
|---|---|---|
| A社 | 12,000 | 12,000 |
| B社 | 8,000 | 8,000 |
| C社 | 5,000 | 5,000 |
| D社 | 0 | 1,000 |
| 新規 | 0 | 0 |
| 合計 | 25,000 | 26,000 |
| 取引先 | 2年目 | 3年目 |
|---|---|---|
| A社 | 12,000 | 12,000 |
| B社 | 8,000 | 8,000 |
| C社 | 5,000 | 5,000 |
| D社 | 1,200 | 1,200 |
| 新規 | 1,300 | 2,800 |
| 合計 | 27,500 | 29,000 |
D社は試作から量産に移る取引先、新規はまだ決まっていない取引先です。
D社 1年目(量産は3か月目から、月4,000個)
250円 × 4,000個 × 10か月 = 1,000万円
D社 2年目以降(月4,000個)
250円 × 4,000個 × 12か月 = 1,200万円
新規
2年目に1社(年1,300万円)
3年目にもう1社(年1,500万円)
「まだ決まっていない」売上を、行を分けて書くのが大事です。読む人は、ここがいちばん不確かだと分かります。隠して合計に混ぜると、全部の数字が疑われます。
損益の計画(万円)
| 項目 | 今期 | 1年目 |
|---|---|---|
| 売上高 | 25,000 | 26,000 |
| 売上原価 | 20,000 | 20,700 |
| 粗利 | 5,000 | 5,300 |
| 販管費 | 4,200 | 4,350 |
| 営業利益 | 800 | 950 |
| 支払利息 | 100 | 95 |
| 経常利益 | 700 | 855 |
| 項目 | 2年目 | 3年目 |
|---|---|---|
| 売上高 | 27,500 | 29,000 |
| 売上原価 | 21,800 | 22,900 |
| 粗利 | 5,700 | 6,100 |
| 販管費 | 4,500 | 4,650 |
| 営業利益 | 1,200 | 1,450 |
| 支払利息 | 90 | 85 |
| 経常利益 | 1,110 | 1,365 |
原価と経費にも、根拠を1行ずつ書きます。
売上原価:売上高 × 80%(今期の原価率)− 段取り時間の短縮分
(1年目100万円、2年目200万円、3年目300万円)
1年目:26,000 × 0.8 − 100 = 20,700
販管費 :今期4,200万円に、賃上げ分として毎年150万円を足す
支払利息:返済で借入の残高が減る分、毎年5万円ずつ減る
営業外収益:見込まない
⚠ 原価率を「なんとなく下げる」のがいちばん疑われます。下げるなら、この例の「段取り時間の短縮」のように、何をして、いくら下がるのかを書いてください。
数値計画が正しいか、どう確かめるのか
書き終えたら、3つだけ確かめてください。
① 返済に足りているか
借入の元本は、税金を払ったあとの利益と減価償却費から返します。この会社の元本返済が年600万円、減価償却費が年400万円、税率を仮に30%と置くと:
必要な経常利益 =(600 − 400)÷(1 − 0.3)≒ 286万円
1年目の経常利益 855万円 > 286万円 → 足りている
式の考え方は利益率はどれくらいあればいい?に書きました。
② 率が急に動いていないか
粗利率
今期 20.0% → 1年目 20.4%
→ 2年目 20.7% → 3年目 21.0%
毎年少しずつなら、根拠と合っていれば説明がつきます。1年で5ポイント上がるような計画は、よほどの理由がないと信じてもらえません。
③ 文章に書いたことが、数字に入っているか
⑦に「2年目に営業担当を1人置く」と書いたなら、2年目の販管費にその人の給料が入っていなければいけません。この例では⑦に「人は増やさず、段取り時間を短くする」と書き、その効果を売上原価の「段取り時間の短縮分」に入れています。文章と数字が食い違っていると、読む人は必ず見つけます。
⚠ 数字の組み合わせを見るときは、人件費が粗利の何割かも確かめてください。見方は人件費率の計算方法と業種別の平均にあります。
事業計画書は、簡単に作れるのか
A4用紙1枚から始めれば、作れます。
■ 誰に:______________
■ 何を:______________
■ どう売る:__________
■ 3年後に残す経常利益:____ 万円
■ 取引先別の売上見込み(万円)
取引先 ________
今期 ____/1年目 ____
2年目 ____/3年目 ____
取引先 ________
今期 ____/1年目 ____
2年目 ____/3年目 ____
新規(まだ決まっていない)
今期 ____/1年目 ____
2年目 ____/3年目 ____
自分の判断に使うなら、これで十分です。金融機関や補助金に出すときは、この1枚をもとに8項目へ広げていけば、ゼロから書くより早く仕上がります。
⚠ 補助金の申請書は、公募要領で決められた様式と審査項目に合わせて書きます。この記事の8項目は土台として使い、項目の並びは様式に従ってください。
今日、やること
取引先を売上の大きい順に3社だけ書き、来年の売上見込みを横に書いてください。
1位 ________
今期 ____ 万円 → 来年 ____ 万円
理由:________________
2位 ________
今期 ____ 万円 → 来年 ____ 万円
理由:________________
3位 ________
今期 ____ 万円 → 来年 ____ 万円
理由:________________
「理由」の欄が埋まらない取引先があっても、気にしないでください。そこが、事業計画書で最初に考える場所だと分かっただけで、半分は書けています。応援しています。
よくある質問
事業計画書には何を書けばいいですか?
基本は8項目です。①会社と事業の概要、②商品・サービス、③誰に売るか、④選ばれる理由、⑤市場と競合、⑥売り方、⑦体制、⑧数値計画(売上・原価・経費・利益・返済)。補助金や融資で様式が決まっている場合はその様式に従いますが、中身はほぼこの8つに収まります。いちばん読まれるのは⑧で、その数字が①〜⑦の内容から出ているかが見られます。
事業計画書は誰が書きますか?
社長自身が書くのが基本です。専門家に手伝ってもらうことはできますが、売上の見込みや、どの取引先に何を売るかは社長にしか分かりません。形を整えるのは人に頼めても、数字の根拠を答えるのは社長です。金融機関の面談でも、書いた本人が数字を説明できるかが見られます。
事業計画書は何で書けばいいですか?
文章の部分はWord、数値計画はExcelが扱いやすいです。数値計画は売上や原価の前提を変えると利益や返済額が自動で変わるように、計算式を入れて作ってください。提出先に様式がある場合はそれを使います。起業向けの書式と作成例は、中小機構のJ-Net21でも公開されています。
事業計画書は簡単に作成できますか?
まずA4用紙1枚で作ることはできます。「誰に・何を・どう売って・3年後にいくら残すか」と、取引先別の売上見込みの表があれば、自分の判断には十分使えます。金融機関や補助金に出すときは、その1枚をもとに項目を増やしていけば、ゼロから書くより早く仕上がります。
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