利益率はどれくらいあればいい?目安は返済から逆算する
結論から、いきます。利益率がどれくらいあればいいかは、業種の平均では決まりません。
まず、「利益率」には3つあります。
粗利率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
経常利益率 = 経常利益 ÷ 売上高 × 100
中小企業の平均は、粗利率25.2%、営業利益率3.7%、経常利益率4.4%です(令和6年度決算、法人企業)。同じ「利益率」でも、どれを指すかで桁が変わります。
そして本題はここからです。平均を超えていても、借入を返せない会社があります。今日は、業種別の目安と、自社に必要な利益率を返済額から逆算する式まで置いていきます。
利益率は、何パーセントが理想なのか
「何パーセントが理想」という一つの数字は、ありません。理由は2つです。
1つ目は、どの利益率かで桁が違うから。粗利率30%は珍しくありませんが、経常利益率30%は平均の7倍近い水準です。
2つ目は、会社ごとに「払わなければいけないお金」が違うから。借入の返済が年800万円ある会社と、借入のない会社では、同じ売上でも残すべき利益がまったく違います。
だから順番はこうです。
- 業種の平均で、自社がどのあたりにいるかを知る
- 返済額から、自社の最低ラインを出す
- 2を下回っていたら、それが直す理由になる
平均は「位置」を知るための数字で、目標は2で決まります。
業種別の利益率の目安は、どれくらいなのか
中小企業庁の「中小企業実態基本調査」(令和7年確報、令和6年度決算実績)の法人企業の数字です。
| 業種 | 粗利率 | 営業利益率 | 経常利益率 |
|---|---|---|---|
| 全業種 | 25.2% | 3.7% | 4.4% |
| 建設業 | 25.1% | 4.9% | 5.7% |
| 製造業 | 20.9% | 4.0% | 5.0% |
| 情報通信 | 44.9% | 5.4% | 6.3% |
| 運輸・郵便 | 24.1% | 2.9% | 4.1% |
| 卸売業 | 14.4% | 2.3% | 2.7% |
| 小売業 | 29.5% | 1.7% | 2.6% |
| 不動産・物品賃貸 | 40.5% | 8.6% | 9.0% |
| 専門・技術サービス | 54.5% | 11.4% | 13.0% |
| 宿泊・飲食 | 66.0% | 2.9% | 4.3% |
| 生活関連・娯楽 | 34.5% | 2.0% | 2.8% |
| その他のサービス | 43.2% | 4.4% | 5.6% |
⚠ 経常利益率は、同調査の「売上高経常利益率」の表の値です。粗利率と営業利益率は、同調査の売上高・売上総利益・営業利益の合計額から計算しました。小数第2位を四捨五入しています。業種名は短く書いています(「専門・技術サービス」は学術研究,専門・技術サービス業、「その他のサービス」はサービス業(他に分類されないもの))。
この表から読み取ってほしいのは、平均値そのものではなく、次の2つです。
① 粗利率が高い業種ほど、利益が残るわけではない。宿泊業・飲食サービス業は粗利率66.0%でいちばん高いのに、営業利益率は2.9%です。人件費や家賃が販売費及び一般管理費に入るので、粗利の大半がそこで消えます。
② 中小企業の平均では、経常利益率のほうが営業利益率より高い。本業の外の収入(雑収入や受取利息など)が足されるからです。自社の経常利益率が平均並みでも、本業の営業利益率が低いなら、安心はできません。
⚠ 会社の規模でも変わります。製造業の経常利益率は、常用雇用者5人以下で3.0%、6〜20人で4.3%、21〜50人で4.6%、51人以上で5.5%です(同調査)。
利益率30%は、高いのか
どの利益率の30%かで、答えが真逆になります。
| その30%が | 中小企業の平均(全業種) | 判断 |
|---|---|---|
| 粗利率 | 25.2% | 少し高い程度。情報通信業やサービス業の平均より低い |
| 営業利益率 | 3.7% | 平均の約8倍。かなり高い |
| 経常利益率 | 4.4% | 平均の約7倍。かなり高い |
「うちは利益率30%あるから大丈夫」という話を聞いたら、まず粗利率の話かどうかを確かめてください。粗利率30%の会社が、営業利益では赤字ということは普通にあります。
⚠ 粗利率が80%あっても同じです。人の時間が原価の中心になる商売は、その人件費が販管費に入っていると粗利率が高く出ます。残るかどうかは営業利益率まで下りて見ます。
100万円で利益率20%とは、いくら残ることなのか
売上100万円のうち、利益が20万円、原価が80万円です。
ここまでは簡単です。間違えやすいのは、値付けのときです。
| やり方 | 売値 | 利益率 |
|---|---|---|
| 原価に20%を上乗せ | 96万円 | 約16.7% |
| 利益率20%から逆算 | 100万円 | 20% |
上乗せ:売値 80 × 1.2 = 96万円
利益 96 − 80 = 16万円
利益率 16 ÷ 96 × 100 ≒ 16.7%
逆算 :売値 80 ÷ 0.8 = 100万円
利益 100 − 80 = 20万円
利益率 20 ÷ 100 × 100 = 20%
原価に20%乗せても、利益率は20%になりません。乗せる率は売値ではなく原価に対する割合なので、売値に対する割合(利益率)は小さく出ます。
利益率を決めて売値を出す式:売値 = 原価 ÷(1 − 利益率)
⚠ 見積りを「原価の2割増し」で出している会社は、決算書の利益率が思ったより低いはずです。1年分の見積りで積もると、差は小さくありません。値引きがどれだけ利益を削るかは限界利益と値引きの関係に書きました。
自社に必要な利益率は、どう出すのか
借入がある会社は、返済額から逆算してください。これが最低ラインです。
借入の元本は、税金を払ったあとの利益と、減価償却費から返します。減価償却費は費用ですが、お金は出ていかないからです。だから式はこうなります。
必要な経常利益
=(年間の元本返済額 − 減価償却費)÷(1 − 税率)
必要な経常利益率
= 必要な経常利益 ÷ 売上高 × 100
例で出します(説明用の数字です。税率は仮に30%と置きます)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 10,000万円 |
| 年間の元本返済額 | 800万円 |
| 減価償却費 | 300万円 |
税引後に必要な利益
= 800 − 300 = 500万円
必要な経常利益
= 500 ÷ 0.7 ≒ 714万円
必要な経常利益率
= 714 ÷ 10,000 × 100 ≒ 7.1%
この会社が製造業なら、平均の5.0%を超えていても、返済には足りません。逆に、借入の少ない会社なら平均より低くても回ります。平均と比べて一喜一憂しても、判断を誤るのはこのためです。
⚠ 税率は会社の所得や地域で変わります。自社の実際の税額は、決算書の「法人税、住民税及び事業税」を税引前当期純利益で割ると目安が出ます。
⚠ 借入がない会社でも、設備の買い替えや、赤字の年に備えるお金は利益からしか積めません。「次の設備にいくら要るか」を年数で割った額を、この式の返済額の代わりに入れて考えてください。
営業利益率と経常利益率、どちらで見ればいいのか
両方です。見るものが違います。
| 何が分かるか | 使う場面 | |
|---|---|---|
| 営業利益率 | 本業で稼ぐ力 | 値決め・原価・人員の判断 |
| 経常利益率 | 利息を払ったあとに残る力 | 返済に足りるか、金融機関との話 |
営業利益率は平均並みなのに、経常利益率が低いなら、利息の負担が重い合図です。本業を直す前に、借入の条件を見直す話になります。
経常利益率は高いのに、営業利益率が低いなら、本業の外の収入に助けられています。その収入が来年もあるとは限りません。
⚠ 経常利益は、産業廃棄物処理業の許可で見られる経理的基礎の判断にも使われます。3期ぶんの見方は産業廃棄物の経理的基礎に書きました。
粗利率のほうの合格ラインを「固定費と欲しい利益」から出す方法は粗利率の目安を調べる前にに、売上がいくらを超えれば利益が出るかは損益分岐点の計算式にあります。
今日、やること
決算書を1期ぶんと、借入の返済予定表を出して、この5行を埋めてください。
① 売上高 :__________ 万円
② 経常利益率(経常利益 ÷ ① × 100):__________ %
③ 年間の元本返済額 :__________ 万円
④ 減価償却費 :__________ 万円
⑤ 必要な経常利益率 :__________ %
(③ − ④)÷ 0.7 ÷ ① × 100
②が⑤を上回っていれば、返済は利益でまかなえています。下回っていれば、足りない差額が「あといくら利益を増やすか」の答えです。
出てきた数字が思ったより厳しくても、気にしないでください。差額が金額で分かった時点で、値決めを直すのか、固定費を削るのか、打ち手を選べるようになります。応援しています。
出典
- 中小企業庁「中小企業実態基本調査」令和7年確報(令和6年度決算実績) — 第10-1表・第10-3表(経営指標)、3.売上高及び営業費用(産業別・従業者規模別表) — https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00553010&tstat=000001019842
よくある質問
利益率は何パーセントあればいいですか?
どの利益率かで答えが変わります。中小企業庁の中小企業実態基本調査(令和6年度決算、法人企業)では、全業種の平均が粗利率25.2%、営業利益率3.7%、経常利益率4.4%です。ただし平均は目標になりません。借入がある会社は「(年間の返済額 − 減価償却費)÷(1 − 税率)」で必要な経常利益を出し、売上で割った率が自社の最低ラインです。
利益率30%は高いですか?
粗利率なら、全業種の平均25.2%より少し高い程度で、業種によっては低い部類です。営業利益率や経常利益率で30%なら、中小企業の平均(営業利益率3.7%、経常利益率4.4%)の7倍前後で、かなり高い水準です。数字を聞いたら、まずどの利益率の話かを確かめてください。
100万円で利益率20%とは、いくらの利益ですか?
売上100万円のうち、利益が20万円、原価が80万円という意味です。注意したいのは値付けで、原価80万円に20%を上乗せすると売値は96万円になり、利益16万円、利益率は約16.7%にしかなりません。利益率20%にしたいなら、原価 ÷(1 − 0.2)で、80万円 ÷ 0.8 = 100万円と計算します。
営業利益率と経常利益率は、どちらを見ればいいですか?
本業の稼ぐ力は営業利益率、借入の返済に足りるかは経常利益率で見ます。経常利益は、営業利益から支払利息などを引き、雑収入などを足した数字です。借入の多い会社は、営業利益率が平均並みでも経常利益率が低く出ます。返済や金融機関との話は経常利益が基準になるので、両方を並べて見てください。
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