人件費率の計算方法と業種別の平均。高いかは粗利で決まる

人件費率の計算方法と業種別の平均。高いかは粗利で決まる

結論から、いきます。人件費率が高いか低いかは、業種の平均ではなく、粗利率と並べて初めて判断できます。

人件費率(%)= 人件費 ÷ 売上高 × 100

中小企業の平均は15.9%(令和6年度決算、法人企業)。ただし業種で6.0%から44.8%まで開きます。

そして、同じ人件費率30%でも、余裕のある会社と、ぎりぎりの会社があります。分かれ目は粗利率です。今日は、式と業種別の平均、そして「高いか低いか」を正しく判断する見方まで置いていきます。

人件費率は、どう計算するのか

人件費を売上高で割って、100を掛けます。

売上高 1億円、人件費 3,000万円
人件費率 = 3,000 ÷ 10,000 × 100 = 30%

難しいのは、式ではなく「人件費に何を入れるか」です。

入れるもの決算書のどこにあるか
給与・賞与販売費及び一般管理費
役員報酬販売費及び一般管理費
法定福利費(社会保険料の会社負担)販売費及び一般管理費
福利厚生費販売費及び一般管理費
労務費(工場・現場の人の給料など)売上原価(製造原価報告書)

製造業と建設業は、売上原価の中の労務費を必ず足してください。販管費の給与だけで出すと、人件費率が半分以下に見えることがあります。下の統計でも、製造業は人件費の6割以上が売上原価側に入っています。

⚠ 派遣料や外注費は、人件費には入れません。ただし外注に切り替えた年は人件費率が下がって見えるので、比べるときは外注費を横に並べてください。

業種別の人件費率の平均は、どれくらいなのか

中小企業庁「中小企業実態基本調査」(令和7年確報、令和6年度決算実績、法人企業)の合計額から計算しました。

業種人件費率
全業種15.9%
卸売業6.0%
不動産・物品賃貸11.7%
小売業12.7%
生活関連・娯楽14.7%
建設業18.0%
製造業19.4%
宿泊・飲食28.8%
運輸・郵便29.0%
情報通信31.2%
専門・技術サービス32.5%
その他のサービス44.8%

⚠ 人件費率は、同調査の「売上原価のうち労務費」と「販売費及び一般管理費のうち人件費」の合計を売上高で割り、小数第2位を四捨五入しました。売上原価の労務費だけで見ると、製造業12.2%、建設業8.5%、運輸・郵便19.6%、その他のサービス24.3%です。この部分を足さずに出すと、人件費率が低く見えます。業種名は短く書いています(「専門・技術サービス」は学術研究,専門・技術サービス業、「その他のサービス」はサービス業(他に分類されないもの))。

製造業は規模でも変わります。常用雇用者5人以下で18.3%、6〜20人で22.7%、21〜50人で20.8%、51人以上で18.6%です(同調査から計算)。

人件費率は、低いほうがいいのか

低いほど良い、とは言えません。

卸売業の6.0%と、サービス業の44.8%は、どちらも普通の数字です。仕入れて売る商売は、仕入れた分まで売上に乗るので率が低く出ます。人の手が中心の商売は、売上のほとんどが人の時間から生まれるので率が高く出ます。

業種の平均と比べて「うちは高い」と判断しても、打つ手は決まりません。判断するには、もう1つの数字が要ります。

同じ人件費率30%で、何が違うのか

粗利率です。人件費率は、次の2つの掛け算に分けられます。

人件費率 = 労働分配率 × 粗利率
(人件費 ÷ 売上)=(人件費 ÷ 粗利)×(粗利 ÷ 売上)

例で出します(説明用の数字です。どちらも売上1億円・人件費3,000万円)。

A社B社
人件費率30%30%
粗利率60%40%
粗利6,000万円4,000万円
労働分配率50%75%
人件費を払ったあと残る粗利3,000万円1,000万円
A社:30% = 50% × 60%
B社:30% = 75% × 40%

人件費率はまったく同じなのに、家賃や利益に回せるお金は3倍違います。

B社がやるべきことは、人を減らすことではありません。粗利率が低いことが原因なので、値決めや原価、売る商品の組み合わせを見直すのが先です。

⚠ 統計でも同じ関係が成り立ちます。全業種で、人件費率15.9%は、労働分配率62.3%(人件費 ÷ 付加価値額、同調査から計算)× 付加価値比率25.6%(同調査の第10-1表)とほぼ一致します。同調査の付加価値額は粗利そのものではないので、ここでは考え方の確認として見てください。

労働分配率の出し方と、「あと1人雇えるか」を粗利から逆算する式は労働分配率の計算方法と目安に書きました。

人件費率が高すぎるとき、何から見ればいいのか

順番があります。人を減らす話は最後です。

見るもの何が分かるか
1粗利率が下がっていないか値上げが追いついていない、原価が上がった
2労働分配率が上がっていないか粗利に対して人が増えた、給料が上がった
31人あたりの粗利が下がっていないか同じ人数で、稼げる仕事に時間を使えていない

1で原因が見つかれば、人件費には触らずに直せます。原価が上がった分を価格に乗せていないだけ、ということもあります。

人件費を削って人件費率を下げても、粗利の額は増えません。残った人の負担が増えて、売上が落ちれば、率はまた上がります。1人あたりの粗利の出し方は一人あたり生産性の出し方と、上げ方にあります。

人件費率を、下げるにはどうすればいいのか

分母の売上と、粗利を増やす方向で考えてください。

人件費率 = 人件費 ÷ 売上高

下げ方は2つしかありません。人件費を減らすか、同じ人件費で売上(と粗利)を増やすかです。

やり方
同じ人数で、粗利の大きい仕事を増やす手間のわりに残らない仕事を断り、残る仕事に時間を回す
1回あたりの時間を減らす毎日くり返す作業を仕組みに置き換え、空いた時間を売上につながる仕事に回す
価格を直す人件費が上がった分を、見積りに入れる

人件費は、会社にとって大きな「売上を生む元手」です。削る対象として見るより、1時間あたりいくらの粗利を生んでいるかで見てください。

今日、やること

決算書を2期ぶん出して、この表を埋めてください。

① 売上高
 前期 ______ 万円/今期 ______ 万円
② 粗利(売上総利益)
 前期 ______ 万円/今期 ______ 万円
③ 人件費(労務費も含む)
 前期 ______ 万円/今期 ______ 万円

人件費率(③ ÷ ① × 100)
 前期 ____%/今期 ____%
粗利率(② ÷ ① × 100)
 前期 ____%/今期 ____%
労働分配率(③ ÷ ② × 100)
 前期 ____%/今期 ____%

人件費率が上がっていたら、粗利率と労働分配率のどちらが動いたかを見てください。それで、直すのが値決めなのか、人の使い方なのかが分かります。

出てきた数字が思ったより高くても、気にしないでください。どちらが動いたかが分かった時点で、人を減らす以外の打ち手が見えてきます。応援しています。

出典

よくある質問

人件費率の計算式は?

人件費率(%)= 人件費 ÷ 売上高 × 100 です。売上1億円で人件費が3,000万円なら30%。人件費には給与だけでなく、賞与・役員報酬・法定福利費(社会保険料の会社負担)・福利厚生費まで入れます。製造業や建設業では、決算書の売上原価の中に工場や現場の人の給料(労務費)が入っているので、その分も足してください。

人件費は売上の何パーセントが平均ですか?

中小企業庁の中小企業実態基本調査(令和6年度決算、法人企業)の合計額から計算すると、全業種で15.9%です。業種で大きく違い、卸売業6.0%、小売業12.7%、建設業18.0%、製造業19.4%、宿泊業・飲食サービス業28.8%、情報通信業31.2%、サービス業(他に分類されないもの)44.8%でした。

人件費率は低い方がいいですか?

低いほど良いとは言えません。仕入れて売る商売は売上が大きく出るので低くなり、人の手が中心の商売は高くなります。判断に使うなら、人件費が粗利の何%を占めるか(労働分配率)を合わせて見てください。人件費率 = 労働分配率 × 粗利率 なので、同じ人件費率30%でも、粗利率60%の会社は粗利の半分、粗利率40%の会社は粗利の75%が人件費に消えています。

人件費率が高い業種は?

同調査から計算すると、サービス業(他に分類されないもの)44.8%、学術研究・専門・技術サービス業32.5%、情報通信業31.2%、運輸業・郵便業29.0%、宿泊業・飲食サービス業28.8%の順に高くなっています。いずれも、仕入より人の時間が売上を生む割合が大きい業種です。

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