取引先に価格改定を伝える文書の書き方。そのまま使える5つの型
結論から、いきます。 価格改定の通知文は、気持ちで書くと通りません。型で書くと通ります。
書けないと悩んでいる社長のほとんどは、文章力が足りないのではなく、「何を書くべきか」のリストを持っていないだけです。今日はそのリストと、そのまま差し替えて使える例文を丸ごと渡します。文才は要りません。
そもそも、この文書は誰に読まれるのか?
書き出す前に、これだけ押さえてください。あなたの通知文を読むのは、目の前の担当者だけではありません。
担当者 → 課長 → 部長 → 購買部門。あなたが会ったこともない人たちの机の上を、この紙は歩いていきます。
だから、この文書に求められるのは熱意ではなく、そのまま回せる情報です。担当者が「あそこが値上げしたいと言ってます」ではなく、「この理由でこの金額です」と説明できる紙になっているか。ここだけです。
言い換えると——あなたがいない会議室で、あなたの代わりに戦うのはこの1枚。だからこそ、型で書くんです。(交渉の場に何を持っていくかは価格転嫁の交渉、何を持っていけば通るのかにリストがあります。)
必ず入れる5つの要素とは?
順番も含めて、この5つです。
① 改定の事実と、適用時期
最初に書きます。もったいぶらない。冒頭3行で「いつから・上がる」が分かるようにします。
前置きが長い文書は、それ自体が「言いにくい話です」というサインになります。相手はもう身構えている。だったら、さっと出したほうがお互い楽です。
② 理由(具体的に。抽象語で逃げない)
いちばん差が出るのがここです。
- ❌「昨今の情勢により」「諸般の事情により」
- ⭕「主要原材料である◯◯が、20XX年X月以降、仕入価格ベースで約X割上昇しております」
抽象語は、相手の社内で検証できません。検証できない理由は、そのまま「根拠が弱い」と読まれます。
書くべきは「何が・いつから・どれだけ」。原材料、エネルギー、運賃、人件費——該当するものを、具体的に。仕入先からの値上げ通知や、公的統計の推移を添えられるなら、なお強い。
(なお、価格転嫁をめぐっては国の相談窓口や各種の制度が用意されています。制度の内容や運用は変わりますので、利用を検討する際は必ず最新の情報をご確認ください。)
③ これまでの企業努力
飛ばす会社が本当に多い。でも、相手が真っ先に知りたいのはここです。
「そっちでできることは、もうやり切ったの?」
この問いに、聞かれる前に答えておく。歩留まりの改善、工程の見直し、経費の削減——時期・内容・効果を短く並べます。
「ここまで実施いたしましたが、吸収しきれない状況です」——この一文の有無で、受け止め方はまるで変わります。
④ 新価格
曖昧にしない。「◯%程度」ではなく、品目ごとの新単価まで書き切ります。別紙の一覧でも構いません。
理想は、相手がそのまま社内稟議に添付できる形。ここが曖昧だと、相手は「もう一度出し直してください」と言わざるを得ず、それだけで数週間が消えます。
⑤ 今後も供給を続けたいという意思
最後は必ずここで締めます。この文書の目的は、値上げではなく取引の継続だからです。
相手にとって本当に怖いのは、値上げではなく供給が止まること。「今後も安定してお届けするための改定です」と書けるかどうかで、文書の温度がまるで変わります。
入れてはいけない言葉は?
3つあります。
① 感情語の重ね塗り
「誠に心苦しく」「断腸の思いで」「不本意ながら」。1つならいい。重ねると、**「悪いと思っているなら撤回できるのでは」**という余地を自分で作ってしまいます。
適正な対価を受け取ることは、明日も供給を続けるための条件です。悪いことではありません。丁寧語で、淡々と。
② 撤回の余地を感じさせる言葉
「ご検討いただけますと幸いです」——これ、「断ってもいい」と読まれます。書くなら「ご理解を賜りたく」「ご高配のほどお願い申し上げます」。決定事項として伝えたうえで、協議には応じる。この姿勢が伝わる言い回しにします。
③ 他社批判・業界の愚痴
「どこも上げております」も避けたほうが無難です。あなたの会社の話として書き切ってください。
そのまま使える、価格改定通知の例文
差し替え用に、丸ごと置いておきます。◯◯部分を埋めれば完成します。
20XX年X月X日
株式会社◯◯◯◯
◯◯部 ◯◯様
株式会社△△△△
代表取締役 △△ △△
価格改定のお知らせ
拝啓 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、このたび弊社製品(サービス)につきまして、
20XX年X月X日ご発注分より価格を改定させていただきたく、
ご案内申し上げます。
【改定の理由】
主要原材料である◯◯の仕入価格が20XX年X月以降約X割上昇し、
あわせて電力料金および物流費が継続的に上昇しております。
◯◯社(仕入先)からの改定通知も別紙のとおり受領しております。
【弊社にて実施してまいりました対応】
・20XX年X月 ◯◯工程の見直しにより加工時間を約X%短縮
・20XX年X月 ◯◯の内製化により外注費を年間約◯万円削減
・20XX年X月 ◯◯の運用変更により電力使用量を約X%削減
上記の取り組みを進めてまいりましたが、
現行価格での供給継続が難しい状況となりました。
【改定内容】
別紙「改定価格一覧」のとおりです。
適用開始:20XX年X月X日ご発注分より
弊社といたしましては、現在の品質・納期を維持し、
今後も安定的にご供給を続けてまいりたいと考えております。
何卒ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。
なお、ご不明な点がございましたら、
下記までお気軽にお問い合わせください。
敬具
【お問い合わせ先】
株式会社△△△△ ◯◯部 担当:◯◯
TEL:000-000-0000 MAIL:◯◯◯@◯◯◯
別紙(改定価格一覧)の形も置いておきます。
| 品名 | 品番 | 現行価格 | 改定価格 | 適用開始日 |
|---|---|---|---|---|
| ◯◯◯ | A-001 | 000円 | 000円 | 20XX/X/X |
| ◯◯◯ | A-002 | 000円 | 000円 | 20XX/X/X |
これだけです。長さはA4一枚で十分。短いほど、読まれます。
出す前に確認する、5つのこと
文書ができたら、投函する前にここをチェックしてください。
- □ 主要取引先には、文書より先に口頭で一報を入れたか(金額より「聞いていなかった」が関係を壊します)
- □ 相手の期末直前・繁忙期を避けたか(判断の余裕がない時期は、内容にかかわらず断られます)
- □ 適用まで数ヶ月の猶予があるか(相手にも予算と社内調整の都合があります)
- □ 決裁者に届く形か(担当者止まりだと、伝言ゲームで根拠が減ります)
- □ 改定幅は、粗利率を守れる額か(同額転嫁では率は戻りません。計算は原価が上がった分だけ値上げしても、利益は戻らない理由へ)
最後の1つ、特に大事です。せっかく気合を入れて文書を出すのに、金額が足りていない——これが本当に多い。出す前に、必ず電卓を叩いてください。
また、②の理由をより説得力のあるものにするには、自社の価値が言葉になっている必要があります。その作り方は「付加価値の言語化」を、社長が15分でやる方法にあります。
今日やること
今日は1つだけ。上の例文をコピーして、【弊社にて実施してまいりました対応】の3行だけ埋めてください。
理由も金額もまだでいい。自社がやってきた努力を3つ書き出す。それだけです。
ここが埋まると、不思議なことに残りの項目もするすると書けます。逆に言えば、多くの社長がこの文書を書けないのは、自分たちの頑張りを言葉にしたことがないからなんです。
あなたの会社は、ちゃんとやってきました。それを書くだけ。堂々といきましょう。応援しています!
よくある質問
価格改定の通知文には、何を書けばいいですか?
5つです。①改定する事実と適用時期 ②理由(コスト上昇を具体的に)③これまでの企業努力 ④新価格 ⑤今後も供給を続けたいという意思。この順番で書くと、感情に頼らず筋の通った文書になります。逆に、この5つ以外はほとんど不要です。
価格改定の文書に、お詫びの言葉は入れるべきですか?
「誠に心苦しく」といった感情語は最小限にしてください。謝罪を重ねるほど「悪いと思っているなら撤回できるのでは」という余地が生まれます。適正な対価を受け取ることは供給を続けるための条件なので、事実を淡々と、丁寧語で伝えるのが最も通ります。
価格改定はいつ、どうやって伝えるのが良いですか?
相手の期末直前や繁忙期を避け、来期の予算を組む時期に、適用まで数ヶ月の猶予を持たせて伝えます。主要な取引先には文書を送る前に口頭で一報を入れておくこと。金額そのものより「知らされていなかった」ことのほうが関係を壊します。
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