「付加価値の言語化」を、社長が15分でやる方法
結論から、いきます。 値上げが通らない最大の理由は、値段が高いことではありません。あなたの会社の価値が、まだ言葉になっていないことです。
そして朗報。これ、直すのに調査もコンサルも要りません。紙とペンと15分でできます。今日はその手順を、そのまま渡します。
なぜ値上げが通らないのか? 犯人は値段ではない
値上げをお願いして、こう言われたことはありませんか。
「なんで上がるの?」 「他はもっと安いけど」
このとき、多くの社長は「値段が高すぎたのかな」と考えます。でも実際に起きているのは、もっと単純なことです。
相手が、あなたの会社に頼む理由を説明できない。
相手の担当者だって、上司に「値上げを受け入れます」と言わなきゃいけない。そのとき「あそこは対応がいいので」では通りません。**「あそこは○○だから、切ると××が起きます」**と言えて初めて通る。
つまり付加価値の言語化とは、自慢の練習ではなく、相手が社内で使える言葉を用意してあげる作業なんです。そう思うと、急にやる気が出てきませんか。
(そもそも値段を決めているのは誰なのか、という土台の話は“適正価格”は誰が決めるのかにまとめてあります。)
15分でやる、3つの問い
用意するのはA4の紙1枚とペン。パソコンは開かないでください。手で書くほうが、確実に出ます。
紙を横にして3つに区切り、上にこう書きます。
問い① お客さんは、どんな困りごとで うちに来るのか?
「何を買いに来るか」ではありません。どんな困りごとを抱えて来るかです。ここを商品名で答えてしまうと、この作業は失敗します。
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❌「金属部品を買いに来る」
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⭕「他社に断られた小ロットの部品が、どこも作ってくれなくて困っている」
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❌「散髪に来る」
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⭕「伸びてきたのが気になるけど、予約を取るのも面倒で先延ばしにしている」
思い出す相手は、顔が浮かぶ実在のお客さん3人にしてください。「一般的なお客様像」を考え始めた瞬間、言葉が薄くなります。目安5分。
問い② うちに頼むと、何が違うのか?
ここでも、機能を書かないこと。書くのは相手にとっての違いです。
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❌「高精度な加工ができます」
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⭕「図面が固まっていない段階でも相談に乗るので、試作のやり直しが減る」
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❌「24時間対応」
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⭕「夜にトラブルが起きても翌朝には動いているので、ラインを止めずに済む」
コツを1つ。「だから、お客さんは何をしなくて済んでいる?」と自分に聞いてください。探さなくて済む、待たなくて済む、謝らなくて済む、やり直さなくて済む。「〜しなくて済む」は、そのまま価値の言葉になります。 目安5分。
問い③ うちがやめたら、お客さんは何に困るか?
これが本命です。3つの中でいちばん強い問いなので、必ずやってください。
「明日から、うちがこの取引をやめます」と言ったとき、相手の顔に浮かぶ表情を想像する。そして、その人が困る具体的な場面を書く。
- 「同じ品質で作れる先を、また一から探さないといけない」
- 「小ロットを引き受けてくれる先が近所にない」
- 「担当者が変わるたびに、また一から仕様を説明することになる」
ここに何も書けなかったら——それは残念な話ではなく、いちばん大事な発見です。「価格だけで選ばれている」という現在地が分かったということ。現在地が分かれば、手は打てます。目安5分。
出てきた言葉を、どう使うのか?
3つ書けたら、こう組み立てます。テンプレートに当てはめるだけです。
「◯◯(問い①の困りごと)で困っているお客さまに対して、うちは△△(問い②の違い)を提供しています。だから、もしうちが対応できなくなると、□□(問い③)が起きます」
これが、あなたの付加価値の一文です。そして同時に、値上げ交渉のときに相手が社内で使う一文でもあります。
使い方は3つ。
- 価格改定の文書に入れる(改定理由の説明のあと、供給を続けたい意思とセットで。文書の型は取引先に価格改定を伝える文書の書き方に例文があります)
- 交渉の場で、資料として置いてくる(詳しくは価格転嫁の交渉、何を持っていけば通るのかへ)
- ホームページやチラシの最初の一行に使う
特に3番。多くの会社が、この一文を持っているのにどこにも書いていないんです。もったいなさすぎます。
「うちには特別なものがない」と思ったときは?
いちばん多いつまずきが、これ。
「うちなんて、普通のことしかやってないよ」
これ、ほぼ全員が言います。そして、ほぼ全員が間違っています。
理由は簡単で、自社の価値は社内では当たり前すぎて見えないからです。毎日やっていることは「普通」に見える。でもお客さんから見たら、それが選ぶ理由だったりします。
- 電話がすぐつながる
- 急な依頼を断らない
- 不良が出たとき、言い訳より先に代替品が届く
- 何年経っても担当者が変わらない
どれも「技術」ではありません。でも、切られない理由としてはめちゃくちゃ強い。
見つけ方は、たった1つ。お客さんに聞くことです。
「うちに続けて頼んでいただいてますけど、正直、決め手ってなんですか?」
これ、聞くのがちょっと恥ずかしい。分かります。でも、答えは9割の社長にとって予想外です。自分が誇りに思っている部分ではなく、まったく別のところを挙げられる。その予想外こそが、あなたの本当の付加価値です。
(誰に聞くべきか、誰の声を重く見るべきかは値上げでお客さんが減る会社と、減らない会社の違いで詳しく書きました。)
この15分を、いつやるか?
正直に言います。この作業、「時間ができたらやろう」だと一生やりません。
だから、こうしてください。
- 朝いちばんにやる(頭が疲れる前)
- 完璧を目指さない(誤字でもいい、汚い字でいい)
- 1人でやる(会議にすると、きれいごとの言葉になります)
- 書けたら机の上に貼る(引き出しにしまうと消えます)
15分で出た言葉は、たぶん粗いです。それでいいんです。言葉は、使いながら磨かれます。 まず一度、外に出してみることのほうが100倍大事です。
今日やること
今日は1つだけ。紙を1枚とって、問い③だけ書いてください。
「うちが明日やめたら、あのお客さんは何に困るだろう?」
3つ全部やる時間がなくても、これだけなら3分です。そして3つの中で、いちばん効きます。
書けたなら、あなたの会社にはちゃんと価値があります。書けなかったなら、それが分かったことが今日いちばんの収穫です。どちらでも前に進めます。
あなたの会社は、あなたが思っているより選ばれています。それを言葉にするだけ。応援しています!
よくある質問
付加価値の言語化とは、具体的に何をすることですか?
「うちに頼むと、お客さんにとって何がどう良くなるのか」を、機能ではなく相手の変化として書き出す作業です。カタログの仕様ではなく、「困りごとが消える」という結果の言葉にするのがポイント。紙とペンだけで、社長ひとりで15分あればできます。
値上げと付加価値の言語化は、どう関係するのですか?
値上げを断られる理由の多くは「なぜ高くなるのか分からない」です。価値が言葉になっていれば、相手は上げる理由を社内で説明できます。逆に言葉がないと、あなたの商品は価格だけで比べられる“同じようなものの一つ”になり、交渉の土俵が値段だけになります。
うちは特別な技術も何もないのですが、言語化できる価値はありますか?
あります。付加価値は技術だけではありません。急な依頼に応じている、小ロットを断らない、電話がすぐつながる、不良が出たときの対応が早い——お客さんが黙って頼り続けている理由は、たいてい社内では当たり前すぎて見えていないところにあります。
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