値上げでお客さんが減る会社と、減らない会社の違い

値上げでお客さんが減る会社と、減らない会社の違い

結論から、いきます。 値上げでお客さんが減るかどうかは、値上げ幅では決まりません。決まるのは、あなたの会社が**「何で選ばれていたか」**です。

価格だけで選ばれていた会社は、少しの値上げでも人が動きます。困りごとを解決していた会社は、値上げしてもびっくりするほど動きません。同じ5%でも、結果はまるで違う。今日は、その分かれ目と、値上げ前に確かめておくべきことを丸ごと渡します。

減る会社と減らない会社、何が違うのか?

分かれ目は、たった1つです。

お客さんが「安いから来ていた」のか、「困りごとが解決するから来ていた」のか。

前者なら、より安い先が現れた瞬間に離れます。値上げは、そのきっかけになっただけ。値上げが原因ではなく、もともと繋がっていなかったんです。

後者なら、値段が上がっても離れません。理由は単純で、探し直すのが面倒だから。乗り換えには手間がかかります。新しい先を探し、仕様を説明し、品質を確かめ、また関係を作り直す。その手間が、値上げ幅より重ければ、人は動きません。

つまり値上げに強い会社とは、「乗り換えのコストが高い会社」です。技術力とか、ブランドとか、そういう大げさな話じゃない。「あなたに説明しなくても分かってくれる」だけで、乗り換えコストは十分高くなります。

あなたの会社は、どっちで選ばれている?

ここが分かっていないまま値上げに突っ込むのが、いちばん危ない。だから確かめます。方法は1つ、聞くことです。

上位のお客さん、3〜5社(3〜5人)。こう聞いてください。

「ずっと使っていただいてますけど、正直、うちを選んでる理由ってなんですか?」

これ、聞くのが怖いですよね。分かります。「安いから」と言われたらどうしよう、って。でも大丈夫。その答えが返ってきたなら、それは値上げ前に知れて本当によかったんです。何も知らずに一律値上げして、後から気づくほうが何倍もつらい。

答えの読み方は、こうです。

返ってきた答え意味値上げ耐性
「安いから」「他より少し安いよね」価格で選ばれている弱い
「近いから」「昔からの付き合いで」惰性で選ばれている中くらい
「急な依頼を断らないから」「説明しなくても分かってくれるから」困りごとで選ばれている強い

3行目が出てきたら、それがあなたの武器です。その言葉をそのまま使って改定の説明を組み立てればいい。言葉の組み立て方は「付加価値の言語化」を、社長が15分でやる方法に手順を置きました。

聞くときの、たった1つのコツ

聞き方を間違えると、答えが全部ウソになります。やってはいけないのがこれ。

❌「うちのサービス、満足していただけてますか?」

日本のお客さんは、まず「ええ、満足してますよ」と言います。気を遣ってくれるからです。これでは何も分かりません。

正しくは、過去の行動を聞くこと。

  • ⭕「最近、他と比べたことってありますか?」
  • ⭕「もしうちが対応できなくなったら、次はどこに頼みますか?」
  • ⭕「うちに頼んで、いちばん助かったのはどの場面でしたか?」

意見ではなく事実と場面を聞く。ここだけ守れば、返ってくる答えの精度が変わります。

そして、聞く相手を間違えないこと。いちばん値切ってくる人ではなく、いちばん利益を落としてくれている人に聞く。 声が大きい人の意見で会社の値段を決めてはいけません。

全員に好かれようとすると、値上げできない

ここが今日いちばん言いたいところです。

値上げが止まる会社には、共通の口ぐせがあります。

「あのお客さんが怒るかもしれない」 「長く付き合ってるし、申し訳ない」

その気持ち、めちゃくちゃ分かります。誠実な人ほどそう考える。でも、この発想には落とし穴があります。

全員に好かれる値段は、必ず「いちばん値切る人」に合わせた値段になるんです。

つまり、いちばん厳しいお客さんに合わせた価格を、他の全員にも適用している。そして、その価格を支えるために、他のお客さんへのサービスが薄くなる。よく尽くしてくれるお客さんが、いちばん要求の強い人のコストを負担している——これ、けっこう残酷な構造ですよね。

だから、値上げには**「離れてもらってもいいお客さん」を決めておく**という工程が要ります。冷たい話に聞こえますか? 逆です。残ってくれる人にちゃんと応えるために、抱えきれない分を手放すという話です。

離れてもいいと考えていいのは、こんな取引です。

  • 作るほど・売るほど赤字になっている
  • 手間の割に金額が小さく、他の仕事の納期を圧迫している
  • 毎回値切られ、それ以外の会話がない
  • 支払いが遅れがちで、督促に時間を取られている

このあたりは値上げする商品はデータで選ぶの考え方で、感覚ではなく数字で仕分けできます。値引きがどれだけ利益を削るかは安売りが利益を”溶かす”仕組みを見てから判断すると、腹が決まります。

減らさないための、値上げの進め方は?

「じゃあ、どう進めればいいの?」に答えます。順番があります。

① 上位客に先に伝える。一斉告知より前に。

いちばんやってはいけないのが、大事なお客さんが告知文で初めて知ること。金額そのものより「聞いていなかった」が人を怒らせます。上位客には、必ず先に、直接。それだけで離脱はかなり減ります。

② 理由を「うちの都合」で終わらせない。

「原価が上がったので」だけだと、相手には自社の事情の話にしか聞こえません。**「この品質と納期を続けるために」**まで言い切る。守られるものが見えると、人は納得します。文書の型は取引先に価格改定を伝える文書の書き方に例文ごと置いてあります。

③ 猶予期間を置く。

「来月から」より「3ヶ月後から」。相手にも予算や社内調整の都合があります。時間を渡すのは、値引きなしでできる最大の配慮です。

④ 上げ幅を「同額転嫁」で満足しない。

コストが上がった分だけ上げても粗利率は戻りません。この算数は原価が上がった分だけ値上げしても、利益は戻らない理由で計算例つきで解説しています。せっかく値上げするなら、正しい額で。

⑤ 値上げ後の3ヶ月を必ず見る。

減ったか減っていないかは、感覚ではなく数字で確認します。何をどう見るかは値上げ後にやるべきフォローにまとめました。

今日やること

今日は1つだけ。いちばん利益を落としてくれているお客さんを1人(1社)思い浮かべて、電話かメールでこう聞いてください。

「今さらなんですが、うちを使い続けてくださっている理由って、どのあたりですか?」

たった1問です。返ってきた言葉は、そのままあなたの値上げの根拠になります。そして——これは本当によくあるんですが——あなたが思っていた理由とは、違うことを言われます。 その「違い」の中に、あなたの会社の本当の強さがあります。

全員に好かれなくて大丈夫。あなたを必要としている人に、ちゃんと応え続けられる値段にしましょう。応援しています!

よくある質問

値上げをすると、お客さんはどれくらい離れますか?

会社によって大きく違い、一律の目安はありません。分かれ目は値上げ幅ではなく「何で選ばれていたか」です。価格だけで選ばれていた会社は少しの値上げでも離れますし、困りごとを解決していた会社は値上げしてもほとんど動きません。まず自社がどちらかを確かめるのが先です。

値上げ前に、何を確認しておけばいいですか?

上位のお客さん数社に「うちを使い続けている理由は何ですか」と直接聞くことです。価格が真っ先に出てくるなら価格で選ばれています。対応の速さ・小回り・安心感などが出てくるなら、値上げしても離れにくい関係が築けています。この差が、値上げの設計を変えます。

値上げでお客さんが減ったら、失敗ということですか?

減った数ではなく、利益がどう変わったかで判断してください。客数が少し減っても利益総額が増えているなら成功です。逆に、上位のお客さんが離れたなら数が少なくても要注意。誰が離れたかを必ず確認し、その層に何が起きたのかを見ることが大切です。

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