受発注システムの自作。取引先のやり方は変えない

受発注システムの自作。取引先のやり方は変えない

結論から、いきます。受発注の自作で最初にやることは、取引先に注文の出し方を変えてもらうことではありません。社内の受注台帳を1本にすることです。

電話で来る。FAXで来る。メールで来る。担当者のチャットにも来る。だから、今どれだけ注文が入っているのか、誰も正確には言えない。

ここを、取引先を巻き込まずに直します。

取引先に入力してもらう形は、なぜ続かないのか?

注文の出し方は、相手の都合で決まるからです。

東京商工会議所の調査では、受発注の手段は電話・FAXが24.6%、メールやホームページなどのオンラインが48.8%、EDIが13.6%でした(2025年1月調査・有効回答1,002社。⚠ 口頭・電話・帳簿が中心の企業17.7%は、この集計から除かれています)。

つまり、4件に1件は今も電話とFAXです。しかも、その相手ほど付き合いが長いことが多い。

同じ調査の自由記述には、卸売業の会社からこういう声も出ています。

書面でのやり取りが多い業界で、請求書などをデジタルへシフトした途端に他社へ乗り換えられる可能性を拭えない

「フォームから入れてください」と案内した瞬間に、取引が細くなる可能性があります。そこまでのリスクを取る必要はありません。

受注台帳は、どう作ればいいのか?

シート1枚、9列です。

中身
A:受注日受けた日
B:取引先プルダウンで選ぶ
C:受注番号自動で採番する
D:品番プルダウンで選ぶ
E:品名品番から自動で入る
F:数量
G:納期約束した日
H:入手経路電話/FAX/メール/チャット
I:状況受注/手配済/出荷済

受注番号は、年月+連番で自動にします。C2に入れる式はこれです。

=TEXT($A2,"yymm")&"-"&TEXT(COUNTIF($A$2:$A2,">="&DATE(YEAR($A2),MONTH($A2),1)),"000")

2026年9月の3件目なら 2609-003 になります。この番号を、社内の全員が使います。図面にも、指示書にも、請求書にも同じ番号を書く。それだけで「あの件」が通じるようになります。

H列(入手経路)を必ず入れてください。あとで見ると、どの経路の注文でミスが出やすいかが分かります。電話だけ間違いが多いなら、電話のときだけ復唱して台帳に即入力する、と決められます。

誰が、いつ入れるのか?

注文を受けた人が、受けたその場で入れます。

電話を切ってから入れる、ではありません。電話をしながら入れます。復唱しながら打てば、聞き間違いもその場で直ります。

「あとでまとめて」にすると、メモの紙が机に残り、そのうち1枚が消えます。消えた1枚が、納期遅れになります。

AIを使うと、どこが変わるのか?

注文の受け方ではなく、転記のところです。

届いたFAXや紙の注文書を撮って、品番と数量を読み取り、台帳に行を作る。ここは自動化できます。

実際に、手書きの伝票を撮って読み取り、台帳から請求書まで作る仕組みを納めました。分かったことは2つです。

  • 読み取りは100%になりません。古い用紙、かすれ、手書きのクセで必ず外します
  • 大事なのは精度ではなく、違っていたときにその場で直せる形にしておくこと

詳しくは手書き伝票をAIで読み取る町工場の請求書づくりに書きました。

納期を約束できるかどうかの判断は、自動化しないでください。在庫と工程を見て人が決めるほうが、結果的に早いです。工程の見える化は生産管理をエクセルで自作に書いています。

台帳が1本になると、何がつながるのか?

受注番号が、社内の共通言語になります。

つなぐ先やること
生産管理受注番号 × 工程で実績を記録する
在庫出庫の履歴に受注番号を書く
請求受注番号から金額を引く

バラバラの表を1つにまとめる必要はありません。同じ番号で呼べれば、それぞれの表のままつながります。

在庫のほうは在庫管理システムをエクセルで自作に、同じ考え方で書きました。

自作をやめたほうがいいのは、どんな場合か?

4つあります。

  • 取引先からEDIを指定されている … 指定の仕組みに合わせる話になります
  • 1日の受注件数が多く、入力が追いつかない … 台帳への入力が本業を圧迫します
  • 在庫の引き当てを、受注と同時に自動でやりたい … 既製品の領域です
  • 社内に、表の面倒を見られる人がいない … 壊れたときに止まります

今日やること

紙に3行、書いてください。

① 昨日の注文は、どの経路で何件来たか:__________
② 受注番号を付けているか(無いなら何で呼んでいるか):__________
③ 受けた人がその場で入れられるか(無理なら何が邪魔か):__________

②が「無い」なら、そこから始めると、いちばん静かに効きます。番号を決めるだけなら、明日から始められます。

「うちは電話が多いから無理」と思われたかもしれません。電話が多い会社ほど、受注番号が効きます。言った・言わないが、番号1つで消えるからです。応援しています!

よくある質問

受発注システムは自作できますか?

できます。ただし、取引先に注文の出し方を変えてもらう前提で作ると続きません。電話・FAX・メール・チャットは受けたままにして、社内の受注台帳を1本にまとめる形なら、スプレッドシート1枚でも回ります。受注番号を採番して、以降は社内の全員がその番号で呼ぶようにすると、生産の進み具合も請求も同じ番号でつながります。入口ではなく、受けたあとの1本化から始めてください。

取引先にフォームへ入力してもらうのは、なぜ難しいのですか?

注文の出し方は相手の都合で決まるからです。東京商工会議所の調査では、受発注の手段として電話・FAXが24.6%を占めています(2026年時点で公開されている2025年1月調査、有効回答1,002社。口頭・電話・帳簿中心の企業17.7%は集計から除外)。同じ調査の自由記述には、書面のやり取りが多い業界で電子化した途端に他社へ乗り換えられる懸念も挙がっています。相手のやり方を変えさせるより、こちらが受け取り方を整えるほうが確実です。

受注台帳には、どんな列が必要ですか?

受注日・取引先・受注番号・品番・品名・数量・納期・入手経路・状況の9列で足ります。入手経路は電話かFAXかメールかを選ぶだけの列で、どの経路の注文でミスが出やすいかが後で分かります。受注番号は年月と連番の組み合わせで自動採番すると、社内の呼び方がそろいます。列を増やすほど入力されなくなるので、まずこの9列で1か月続けてください。

AIを使うと、受発注のどこが変わりますか?

注文の受け方ではなく、転記のところが変わります。届いたFAXや紙の注文書を撮って、品番と数量を読み取り、台帳に行を作るところまでは自動化できます。ただし読み取りは100%にはならないので、違っていたときにその場で直せる形にしておくことが前提です。判断が入る部分、たとえば納期を約束できるかどうかは、自動化しないほうが結果的に早く回ります。

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