生産管理をエクセルで自作。まず作るのは計画表ではない

生産管理をエクセルで自作。まず作るのは計画表ではない

結論から、いきます。生産管理をエクセルで自作するとき、最初に作るものは計画表ではありません。実績の記録です。

多くの場合、最初に作られるのはガントチャートです。色のついた帯が並んで、見た目はいちばん「それっぽい」表です。

でも、納期の遅れを教えてくれるのは、予定ではなく実績のほうです。

今日は、作る順番と、実際に使える表の形を置いていきます。

生産管理システムは、エクセルで自作できるのか?

「全部」をやろうとすると、続きません。

生産管理と呼ばれるものには、受注の管理、工程の進み具合、在庫、原価、購買までが含まれます。これを1つの表でやろうとすると、列が40も50もある表になります。そして誰も入力しなくなります。

1つに絞れば、回ります。最初に絞るなら、ここです。

今どの工程まで終わっていて、納期に間に合うのか。

在庫は別の表に分けてください。作り方は在庫管理システムをエクセルで自作に書きました。

なぜ、ガントチャートから作ると続かないのか?

計画表は、作った瞬間から古くなるからです。

前の工程が1日遅れる。すると、後ろの工程が全部ずれます。直すのは、たいてい一人です。その人が忙しくなった週から、表は止まります。

止まった計画表は、こう見えます。

  • 予定では今日が組立の日。でも実際はまだ加工が終わっていない
  • 表は「予定どおり」の顔をしたまま
  • 気づくのは、納期の3日前

実績の記録は逆です。工程が終わった日を1行ずつ残していくだけなので、更新の手間がほとんどありません。そして、予定日と引き算すれば、遅れはその場で出ます。

⚠ ガントチャートを作るなとは言っていません。実績が続けて入るようになってから作れば、勝手に埋まります。順番の問題です。

自作する前に決める、3つのこと

① 1行を何にするか

ここを決めないと、あとで全部作り直しになります。

おすすめは「受注番号 × 工程」です。受注番号ごとに1行ではありません。1つの受注が4工程を通るなら、4行になります。

1行の単位どうなるか
受注番号ごとに1行途中の工程がどこまで進んだか書けない
受注番号 × 工程で1行どの工程で止まっているかが分かる
日付ごとに1行日報にはなるが、納期は追えない

② 誰が、いつ実績を入れるか

工程が終わった人が、終わったときに入れる。これ以外の形は続きません。

「事務所で夕方まとめて」「翌朝に日報から転記」。この形は、忙しい週から止まります。そして止まった週のぶんは、二度と埋まりません。

③ 遅れが見えたとき、誰が順番を決めるか

表は、遅れを教えてくれるところまでしかやってくれません。

3件が同時に遅れたとき、どれを先に流すか。決める人を先に決めておかないと、「見えるようになっただけ」で終わります。

ここが、いちばん飛ばされます。仕組みを入れても現場が変わらない原因は、たいていこれです。

表は、どう作ればいいのか?

6列だけです。

A:受注番号B:品名C:工程D:予定日E:完了日F:数量
2609-012ブラケット加工9/189/1850
2609-012ブラケット溶接9/2250
2609-013シャフト加工9/1930

完了日が空の行が、まだ終わっていない工程です。

遅れ日数は、G列にこの式を入れます。

=IF(E2="",TODAY()-D2,E2-D2)

完了日が入っていれば「完了日 − 予定日」、空なら「今日 − 予定日」という意味です。プラスなら遅れ、マイナスなら前倒しです。

上の表なら、9/22予定の溶接が終わっていない状態で今日が9/25なら、3日の遅れと出ます。

あとは、G列がプラスの行だけ色を付けます(ホーム → 条件付き書式 → セルの強調表示ルール → 指定の値より大きい → 0)。

これで「遅れている工程の一覧」になります。朝、この表を開いて色の付いた行だけ見れば、その日の段取りが決まります。

列を足したくなります。担当者、設備、ロット、良品数。足すほど入力が止まります。まず6列で1か月続けてから、足りないものだけ足してください。

エクセルの自作は、どこで限界が来るのか?

3つあります。

  • 同時に入力する人が増えたとき … 複数人で同時に編集するには、Microsoft 365と、OneDriveやSharePoint Onlineへの保存が条件です(Microsoft サポート「Excel ブックを共同編集で同時に共同作業する」)
  • 現場でパソコンを開けないとき … 入力が後回しになり、実績が翌日以降になります。半日ずれるだけで、朝の判断には使えません
  • 工程数が多く、差し替えが頻繁なとき … 行が増えるほど、並べ替えと目視の手間が増えます

この3つが見えてきたら、表の作り方ではなく、入力する場所を変える時期です。

AIやスマホを使うと、何が変わるのか?

実績を入れる場所が、事務所から現場に移ります。

スマホで「受注番号・工程・完了」の3つを押すだけで、表に1行積み上がる形です。上で作った6列は、そのまま使えます。

先日、これと同じ形で売上の入力の仕組みを作って納めました。在庫でも工程でもなく売上ですが、分かったことは同じです。項目を削るほど、記録が続きます。

もう1つ、製造業で効くのは紙を減らすことより、探す時間を減らすことです。

  • 図面が探せない → 図面管理システムの自作。決めるのは3つだけです
  • 作業指示書を毎回手で書き起こしている → 過去の指示書を見本に、図面から下書きを作らせる形を納めました。⚠ 判断が要る工程は自動化しません。確認の手間のほうが増えます

既製品を買うか自分で作るかの分かれ目は、AIツールは既製品か、自社で作るかに4つの観点で書きました。

自作をやめたほうがいいのは、どんな場合か?

4つあります。

  • 社内に、表の面倒を見られる人がいない … 作った人が抜けると、式が壊れても誰も直せません
  • 工程の差し替えが毎日起きる … 表の並べ替えだけで時間が溶けます
  • 原価や購買まで、必ず1つにつなげたい … 既製品のほうが確実です
  • 今すぐ必要で、試す時間がない … 既製品のほうが早いです

⚠ 既製の生産管理システムが不要という話ではありません。まずエクセルで1か月回すと、自社に何が要るのかが分かった状態で選べます。何から手をつけるかの判断は中小企業のAI導入、どこから手をつけるかにまとめました。

今日やること

紙に3行、書いてください。

① 1行の単位(受注番号 × 工程でよいか):__________
② 工程が終わったとき、誰がその場で入れるか:__________
③ 3件同時に遅れたとき、順番を決めるのは誰か:__________

この3行が埋まったら、表は半分できています。列も式も、あとから足せます。

逆に、③が埋まらないなら、まだ作らないほうがいいです。遅れが見えるようになるだけで、現場は変わりません。

「うちは毎日変わるから、表なんて追いつかない」と思われたかもしれません。毎日変わる会社ほど、実績の1行が効きます。予定は変わっても、終わった事実は変わらないからです。応援しています!

よくある質問

生産管理システムはエクセルで自作できますか?

受注管理・工程管理・在庫・原価まで全部を1つの表でやろうとすると、まず続きません。ただし「今どの工程まで終わっていて、納期に間に合うか」だけに絞れば、エクセルでも十分に回ります。まず1つの目的に絞って作り、続いてから足すのが順番です。作る前に、1行を何にするか、誰がいつ実績を入れるか、遅れが見えたとき誰が順番を決めるかの3つを決めてください。

ガントチャートから作るのは、なぜうまくいかないのですか?

計画表は作った時点から古くなるからです。前工程が1日遅れるだけで後ろが全部ずれ、直す手間が誰かに集中します。更新が止まった計画表は、遅れを教えてくれません。先に作るべきは実績の記録です。工程が終わった日を1行ずつ残せば、予定日と引き算するだけで遅れが出ます。計画表は、実績が続けて入るようになってから作っても遅くありません。

エクセルの生産管理表は、どう作ればいいですか?

1行を「受注番号 × 工程」にして、受注番号・品名・工程・予定日・完了日・数量の6列で作ります。完了日が空なら未着手か進行中です。遅れ日数はIF関数で、完了日が入っていれば完了日から予定日を引き、空なら今日の日付から予定日を引きます。プラスになった行だけ条件付き書式で色を付ければ、遅れている工程が一目で分かります。列はこれ以上増やさないほうが続きます。

エクセルでの生産管理は、どこで限界が来ますか?

3つあります。同時に入力する人が増えたとき、現場でパソコンを開けず入力が後回しになるとき、そして工程数が多く差し替えが頻繁なときです。特に3つ目は、行数が増えるほど並べ替えと目視の負担が増えます。スマホから工程の完了を送れる形にするか、既製の生産管理システムに移る時期です。まずエクセルで回すと、自社に必要な機能が分かった状態で選べます。

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