見積システムをエクセルで自作。単価表より先に入れる列
結論から、いきます。見積をエクセルで自作するなら、単価表を作る前に入れる列があります。原価と、粗利額です。
見積書の多くは、合計金額しか見えません。だから「5%なら」と言われたときに、その場で判断できません。
5%の値引きは、粗利の5%ではありません。原価が7割の商売なら、粗利の16%以上が消えます。
今日は、その2列を持った見積の作り方を置いていきます。
見積システムは、エクセルで自作できるのか?
単価表から選んで組み立てる商売なら、できます。
品番と単価の一覧を1枚のシートに作り、見積書のシートから引っ張るだけです。金額の打ち間違いは、これでほぼ無くなります。
一方で、図面や現地を見て都度積算する商売は、自作の範囲を超えます。積算は職人の頭の中にある判断そのものなので、エクセルにもAIにも簡単には移せません。
なぜ、単価表より先に原価の列なのか?
あとから足せない列だからです。
単価だけの表で運用を始めると、半年後には見積書が数百枚たまります。そこから「原価も入れよう」となると、過去の見積を1枚ずつ開いて入れ直すことになります。
そして、原価の列が無い見積書では、こういう会話になります。
「5%だけ何とかならない?」 「……(いくら減るのか分からないまま)分かりました」
原価と粗利額が見えていれば、この場で答えが出ます。
| 値引き前 | 5%値引き後 | |
|---|---|---|
| 売価 | 1,000,000円 | 950,000円 |
| 原価 | 700,000円 | 700,000円 |
| 粗利(額) | 300,000円 | 250,000円 |
売価は5%下がっただけですが、粗利額は50,000円、16.7%減っています。原価は1円も下がらないからです。
⚠ 判断するのは率ではなく額です。「50,000円を今回は出す」と決められるなら、値引きしてもかまいません。分からないまま受けるのが、いちばん危ないです。
表は、どう作ればいいのか?
シートは2枚です。
① 単価表シート(単価表)
| A:品番 | B:品名 | C:単価 | D:原価 |
|---|---|---|---|
| K-100 | 取付金具 A | 1,200 | 840 |
| K-200 | 取付金具 B | 1,800 | 1,190 |
② 見積書シート
品番を入れたら、品名・単価・原価が自動で入る形にします。B列(品名)にはこの式を入れます。
=IFERROR(VLOOKUP($A2,単価表!$A:$D,2,FALSE),"")
単価はいちばん右の数字を 3、原価は 4 に変えるだけです。
- 単価(D列):
=IFERROR(VLOOKUP($A2,単価表!$A:$D,3,FALSE),"") - 原価(F列):
=IFERROR(VLOOKUP($A2,単価表!$A:$D,4,FALSE),"")
そして、粗利額の列を1つ足します。
=(D2-F2)*C2 ← (単価 − 原価)× 数量
最後に、粗利額の合計を見積書の隅に出します(=SUM(G2:G50))。ここが、値引きを求められたときに見る数字です。
⚠ 客先に出す印刷範囲からは、原価と粗利額の列を外してください。列を右のほうに置いて、印刷範囲を左側だけに設定します(ページレイアウト → 印刷範囲 → 印刷範囲の設定)。
VLOOKUPとXLOOKUP、どちらを使うのか?
会社のExcelのバージョンで決まります。
XLOOKUPはExcel for Microsoft 365・Excel 2024・Excel 2021などで使えますが、Excel 2016と2019では使えません(Microsoft「XLOOKUP 関数」)。
事務所のパソコンでだけ動いて、現場のパソコンで #NAME? になる。これが起きると、その表はもう信用されません。
⚠ 社内でバージョンがばらついているなら、全員が使えるVLOOKUPで作るのが確実です。
そして、式が壊れる原因のほとんどは関数ではありません。品番の表記ゆれです。「K-100」「K100」「K-100」が混ざると引けません。品番はプルダウンで選ぶ形にしてください(データ → データの入力規則 → リスト)。
値引きを求められたとき、何を見るのか?
残る粗利額と、そこから出ていく固定費です。
「この1件で、いくら残るのか」。それが分かったうえで、今回は取りにいくのか、断るのかを決めます。
⚠ 率で守ろうとしないでください。率を下げてでも額が増える取引はあります。考え方は建設・工務店の見積りで利益を守るに書きました。
値引きの限界を先に決めておきたい場合は、限界利益の考え方が使えます。
AIを使うと、何が変わるのか?
見積そのものより、その手前と後ろが変わります。
- 過去の見積を探す … 「去年の◯◯商事の、あの案件」が出てこない。これは探し方の問題で、図面管理システムの自作と同じ形で解決できます
- 請求書に転記する … 見積の内容を請求書に手で打ち直しているなら、そこは自動化できます。実際に、撮った伝票を読み取って請求書まで作る仕組みを納めました(町工場の請求書づくり)
⚠ 図面から自動で積算する仕組みは、勧めていません。専用の会社が取り組んでいる領域で、暗黙知の言語化も必要です。単価表から組み立てる部分だけを自動化するほうが、確実に効きます。
自作をやめたほうがいいのは、どんな場合か?
4つあります。
- 図面や現地を見て、都度積算している … エクセルの範囲を超えます
- 材料費が日々動く … 単価表の更新が追いつきません
- 営業が複数人いて、同時に見積を作る … 同時編集の条件(Microsoft 365とOneDrive・SharePoint Onlineへの保存)が要ります
- 社内に、表の面倒を見られる人がいない … 式が壊れたとき止まります
今日やること
直近の見積書を1枚開いて、隅に手書きで3つ足してください。
① この見積の原価はいくらか:__________
② 粗利額はいくらか(売価 − 原価):__________
③ 5%値引きを受けたら、粗利額はいくら減るか:__________
③がすぐ出せなかったなら、その2列を入れる価値があります。
「原価なんて、うちはどんぶりだから出せない」と思われたかもしれません。それでも大丈夫です。正確な原価でなくていいので、主要な10品目だけ、仕入値を入れるところから始めてください。そこから見えてきます。応援しています!
よくある質問
見積システムはエクセルで自作できますか?
できます。品目の単価表を1枚のシートに作り、見積書のシートからVLOOKUPやXLOOKUPで引っ張る形にすれば、金額の打ち間違いはほぼ無くなります。ただし単価だけを引っ張る作りにすると、値引きのときに利益がいくら減るのかが見えません。単価表には原価の列も持たせて、見積書の側に粗利額を表示させてください。作る順番を間違えると、後から全部作り直しになります。
見積書のエクセルには、どんな列が必要ですか?
品番・品名・数量・単価・金額に加えて、原価と粗利額の2列です。原価は単価表から引っ張り、粗利額は「(単価−原価)×数量」で計算します。粗利額の合計を見積書の隅に出しておくと、値引きを求められたときに、いくらまでなら受けられるかがその場で分かります。客先に出す印刷範囲からは、原価と粗利額の列を外しておきます。
VLOOKUPとXLOOKUPは、どちらを使えばいいですか?
会社のExcelのバージョンで決まります。XLOOKUPはExcel for Microsoft 365、Excel 2024、Excel 2021などで使えますが、Excel 2016と2019では使えません(Microsoft「XLOOKUP 関数」)。社内でバージョンがばらついているなら、全員が使えるVLOOKUPで作るのが確実です。式が壊れる原因のほとんどは関数の種類ではなく、単価表の品番の表記ゆれです。
見積の自作をやめたほうがいいのは、どんな場合ですか?
図面や仕様書から都度積算が必要な場合、材料費が日々動いて単価表が追いつかない場合、営業が複数人いて同時に見積を作る場合です。特に図面からの積算は、暗黙知の言語化が必要で、エクセルでもAIでも簡単には置き換わりません。単価表から選んで組み立てられる商売なら自作で足ります。それ以外は既製の見積ソフトのほうが確実です。
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