工事の工程表の作り方。最初に入れるのは作業名ではない

工事の工程表の作り方。最初に入れるのは作業名ではない

結論から、いきます。工事の工程表に最初に入れるのは、作業名でも日付でもありません。「いつまでに手配するか」です。

工程表って、作っても守られへんよなあ。そう感じてませんか? その気持ち、めっちゃ分かります。

でもね、現場が止まる原因の多くは、段取りが下手だからではありません。人と材料を押さえる連絡が、間に合っていないからです。

順番を描くのは、その後で大丈夫。今日は、エクセルで工程表を作る手順を、実際に使える式まで置いていきます。

工事の工程表は、何のために作るのか?

現場の順番を決めるためではなく、人と材料を押さえるためです。

順番なら、たいていの職長さんは頭に入っています。基礎の後に建方、そのあと屋根。何十年もやってきた順番が、紙に書かなくても分かる。

では、何が分からなくて困るのか。「あの職人さん、来週の水曜に来てもらうには、いつ電話したらええんやったかな」。ここなんです。

  • 鉄筋工は、2週間前でないと押さえられない
  • ある材料は、注文から納品まで10日かかる
  • 足場屋は、3日前でも入ってくれることがある

作業ごとに、押さえるのに必要な日数が違う。そして遅れる現場は、たいてい着手日は分かっていたのに、連絡する日を誰も持っていなかった現場です。

工程表は、その「連絡する日」を書いておく紙です。ここを外すと、どれだけきれいなガントチャートを描いても、現場は止まります。

なぜ、細かく作った工程表ほど見られなくなるのか?

1つ遅れただけで、全部ずれるからです。

頑張って100行の工程表を作ったとします。雨で基礎が1日遅れた。すると後ろの99行が1日ずつずれる。直すのは作った人です。

1回目は直します。2回目も直すでしょう。3回目で、たいてい止まります。

そして更新が止まった工程表は、現実と合わなくなる。合わない表を、現場は見ません。見られなくなったのは、現場のせいではなく、表が重すぎたからです。

目安を置きます。

  • 1行は、半日以上かかる作業にまとめる(「配筋」「配筋検査」を分けない)
  • 1つの工事で、20行前後
  • 職人さんの頭に入っている当たり前の順番は、書かない

細かさは、精度ではなく更新の重さを決めます。更新されない精密な表より、更新される粗い表のほうが、現場では役に立ちます。

工程表を作る前に決める、3つのこと

表の形より先に、この3つを決めてください。

① 誰が、いつ、完了を入れるか

ここが決まっていない工程表は、必ず止まります。「現場監督が、その日の帰りに」でいいんです。決めるのは「誰が」よりも「いつ」。帰り際なのか、翌朝なのか。時間が決まっていない作業は、続きません。

② 手配の締切日を、作業ごとに何日前にするか

鉄筋工は14日前、材料Aは10日前、足場は3日前。分からなければ、いま付き合いのある協力会社に1回聞けば済みます。一度聞いておけば、次の現場から使い回せます。

③ 遅れたとき、誰が順番を決めるか

これを先に決めておかないと、遅れた瞬間に全員が止まります。社長なのか、現場監督なのか。「決める人」を1人にしておくだけで、対応が半日早くなります。

この3つは、表の話ではありません。運用の話です。そして工程表が死ぬのは、いつも表ではなく運用のほうです。

表は、どう作ればいいのか?

列は6つで足ります。

作業着手予定押さえ日数手配の締切完了日
基礎10/065(自動)10/06
建方10/1510(自動)
内装10/277(自動)10/30

※ 6列目に「遅れ日数」を置きます(これも自動です)。

A列=作業、B列=着手予定日、C列=押さえに必要な日数(営業日)、D列=手配の締切日、E列=完了日、F列=遅れ日数、とします。

手配の締切日(D2)

=WORKDAY(B2,-C2)

着手予定日から、必要な日数だけ営業日でさかのぼります。土日を自動で飛ばしてくれるので、「14日前のつもりが、間に土日が入って実質10日前だった」という事故が消えます。 ※ 計算結果が「46294」のような数字で出たら、そのセルを右クリック →「セルの書式設定」→「日付」を選んでください。

遅れ日数(F2)

=IF(E2="",IF(TODAY()>B2,TODAY()-B2,0),E2-B2)

完了日が入っていればその差、まだ空欄なら今日との差を出します。着手予定日が先の作業は0になります。

この2つの式だけで、工程表は動きます。どちらも古いエクセルで動く関数だけを使っています(実際に確かめてあります)。FILTERやXLOOKUPは、入っていないパソコンがまだ多いので使いません。

あとは、手配の締切日の列に条件付き書式を1つ。「今日から3日以内」の行に色が付くようにすれば、朝いちばんに見るべき電話が、色で分かります。

条件付き書式 → 新しいルール → 「数式を使用して…」→

=AND($D2<>"",$D2-TODAY()<=3,$D2-TODAY()>=0)

この色が、工程表の主役です。ガントチャートの棒ではありません。

雨で1日遅れたとき、何をやり直すのか?

全部は引き直しません。動かすのは、後ろの作業のうち「手配の締切日をまだ過ぎていない」ものだけです。

ここ、めちゃくちゃ大事なところです。

締切日を過ぎている作業は、もう人や材料を押さえてあります。こちらの都合で勝手にずらすと、相手の段取りを壊します。職人さんは、その日を空けて他の仕事を断っているかもしれません。

だから順番はこうなります。

  1. 遅れた作業の後ろの行だけを見る
  2. 手配の締切日を過ぎている行 → 電話して相談する(表を直すのはその後)
  3. 締切日を過ぎていない行 → 着手予定日を直す。締切日は式が勝手に付いてくる

これなら、直すのは数行です。100行を引き直す必要はありません。

そして2番の電話を、遅れた当日にできるかどうかで、次の1週間が変わります。遅れそうだと分かった時点で連絡すれば、相手も動けます。当日の朝に「今日は来なくていいです」では、相手の1日が丸ごと消えます。

信用は、金額ではなく連絡の早さで積み上がります。

施主への報告に、工程表をそのまま見せていいのか?

そのまま見せないほうが、たいていうまくいきます。

社内の工程表には、押さえに必要な日数や、遅れ日数の計算が入っています。施主が知りたいのは、そこではありません。

施主が知りたいのは3つだけです。

  • 引き渡しの日は変わるのか、変わらないのか
  • いま、どこまで終わっているのか
  • こちらが何かを決める必要はあるのか(色決め、仕様変更など)

この3つに答える1枚を、別に作ります。エクセルなら、工程表と同じファイルの2枚目のシートに、この3行を書くだけで十分です。

「遅れています」と言いにくいのは、よく分かります。でもね、遅れの連絡が早い会社ほど、次の仕事につながります。施主が不安になるのは遅れそのものではなく、何も知らされない時間だからです。

見積りの段階から利益を守る話は、建設・工務店の見積りで利益を守る方法に書いてあります。工程の遅れは、そのまま人件費として利益を削るので、あわせて読んでみてください。

エクセルの工程表は、どこで限界が来るのか?

限界は2か所で来ます。

① 同時に動く現場が5つを超えたとき

1現場1ファイルで作っていると、同じ職人さんがどの日に埋まっているかが、ファイルをまたいで見えません。「今週は空いてるはず」で電話して、実は別の現場に入っていた。これが起きたら、人ごとの空き状況を1枚にまとめる時期です。

② 現場で更新できないとき

事務所のパソコンにしかファイルが無いと、完了の記録が翌日以降になります。1日ずれた記録は、遅れの発見を1日遅らせます。共有フォルダやクラウドに置いて、スマホから完了日だけ入れられる形にすると、ここは解決します。

逆に言うと、現場が数件で、同じ協力会社とやり取りしている間は、エクセルで十分に回ります。製造業の生産管理を同じ考え方で組む手順は、生産管理をエクセルで自作する方法にまとめました。

道具を替えるのは、運用が続いてからです。続いていない表を、高いサービスに引っ越しても、続かないまま金額だけ増えます。

今日やること

紙1枚に、次の現場の作業を10行だけ書いてください。その右に、「この作業、何日前に連絡したら間に合うか」を1つずつ書く。分からない行は、そのまま協力会社に電話して聞く。

それだけで、来週かける電話が決まります。

工程表が守られないのは、あなたの段取りが悪いからではありません。連絡の締切が、どこにも書かれていなかっただけです。書く場所を作れば、現場は動きます。

大丈夫、今日からできます。応援しています!

よくある質問

工事の工程表は、どう作ればいいですか?

作業名と日付を並べる前に、各作業の「手配の締切日」を決めてください。職人や協力会社、材料を押さえるには、着手日の何日前までに連絡が要るかが作業ごとに違います。エクセルなら、作業名・着手予定日・押さえに必要な日数・完了日の4列を作り、WORKDAY関数で締切日を自動で出せます。順番を描くのはその後です。工程表が守られない原因は、段取りの下手さではなく、この連絡の遅れであることが多いからです。

工程表を細かく作ったのに、現場で見てもらえません。なぜですか?

細かい工程表は、1つ遅れただけで全部ずれるからです。ずれた表は現実と合わなくなり、合わない表は見る価値がなくなります。作業を細かく割るほど、直す手間が作成者に集中し、更新が止まります。目安として、1行は半日以上かかる作業にまとめ、行数は1つの工事で20行前後に抑えてください。細かさは、精度ではなく更新の重さを決めます。

工事が1日遅れたら、工程表は全部引き直すのですか?

全部は引き直しません。動かすのは、遅れた作業の後ろで、かつ手配の締切日をまだ過ぎていない作業だけです。締切日を過ぎている作業は、すでに人や材料を押さえてあるので、勝手にずらすと相手の段取りを壊します。まず後ろの作業の締切日を見て、過ぎているものは連絡して相談、過ぎていないものだけ日付を直す。この順番なら、直す範囲は数行で済みます。

エクセルの工程表は、どこで限界が来ますか?

同時に動く現場が5つを超えたあたりと、同じ職人を複数の現場で取り合うようになったときです。1現場1ファイルで作ると、誰がどの日に埋まっているかがファイルをまたいで見えません。この段階になったら、人ごとの空き状況を1枚にまとめるか、専用のサービスを検討してください。逆に、現場が数件で、同じ協力会社とやり取りしている間は、エクセルで十分に回ります。

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